9話 栄えあるゼノリカの幹部を目指すなら……
9話 栄えあるゼノリカの幹部を目指すなら……
ゴーバイはゼンバイの返答に対し、ふっと口元を緩めた。
「はは。冗談ですよ。仮にそんなことしたら、『悪意のある怠慢』という扱いをされて、こっちの責任になるし。……まあ、もし、先輩が僕の最低な提案にノってきたら、そのことを『百済(粛清専用の暗部組織)』に報告するつもりではいましたけど」
「……先輩を試すんじゃねぇよ、ボケ」
吐き捨てるように言いながらも、ゼンバイの声音には本気の怒気まではなかった。
むしろ、面倒な後輩に向ける、半ば呆れたような響きの方が強い。
『百済に報告する』というのは、ゼノリカでは最も怖い脅し文句。
とはいえ、それを本気でやり合うような関係性でもないので、ギリギリ冗談として成立している。
ゴーバイは肩をすくめ、再び観測端末へ視線を戻す。
薄青い光の中で、第75アルファの異常な数値が、静かに明滅していた。
平均存在値は低い。
突出した強者はいない。
存在値100ちょうどの個体だけが、万単位で並んでいる。
まるで、誰かが意図して整えたみたいな奇妙な世界。
ゼンバイは、その不自然さをある意味で正しく認識したうえで、なお判断を変えない。
危険なら危険でいい。
試験の内容が上がるだけ。
(栄えあるゼノリカの幹部を目指すのなら、その程度のハードルはぜひとも、楽々と乗り越えてもらいたいものだ)
異世界探索部署の一室には、観測機材の低い駆動音だけが満ちている。
その静かな部屋の中で、第75アルファへの試験実施は、ほとんど既定事項として固まりつつあった。
この第75アルファに関して、二人とも『妙な世界だ』と思っている。
おそらく、上もそう判断するだろう。
……だが、その『奇妙さ』を理由に試験を止めるほど、ゼノリカは甘くないだろう、とも思った。
★
その日、再連メンバーが収容されている施設の講堂で、盛大な訓練課程修了証書授与式が執り行われていた。
天井は高く、音の反響を抑えるために刻まれた幾何学的な紋様が、淡く光を帯びている。
壁面にはゼノリカの紋章と、これまで制圧してきたアルファの識別符号が、誇示するように整然と並んでいた。
現在『第72アルファ』までは制圧完了しており、
第73、74アルファも攻略間近。
『世界を発見すること』には多少手間取るものの、制圧に関しては、早ければ数分、遅くとも数日で完了している。
――整然と並べられた長椅子には、数えきれないほどの再連メンバーが着席している。
ざわめきはない。ただ、押し殺された気配だけが満ちている。
その誰もが、壇上を見上げていた。
壇上に立つのは、ゼノリカが誇る黒き薔薇――『エキドナール・ドナ』。
ゴールデンウイークの特別イベントとして、
明日から水曜日までの5日間、毎日3話投稿と、
何枚かのイラストを投稿しようと思います(*^^)v
ちょっとでも楽しんでもらえたらいいなぁ(*´▽`*)




