01話 コスモブラッド狩り。
01話 コスモブラッド狩り。
無数のモニターが、虚空に浮かんでいる。
それぞれの画面には、異なる銀河、異なる時間軸、異なる戦場が映し出されていた。
その中心で、ロウドリーナは一枚のモニターを睨みつけたまま、淡々と告げる。
「……天使銀河、完全制圧完了」
映像の中では、戦いの余韻がまだ残っていた。
崩壊した天使軍の陣形。砕け散った光の翼。
そして、その中心に――
超絶イケメン、コスモゾーン・ソンキー・ウルギ。
彼は、『膝をついた究極超熾天使』の顎を指先で軽く持ち上げ、何事もなかったかのように支配権限を奪い取る。
次の瞬間、銀河全体の管理構造が、静かに、しかし不可逆的に書き換わっていった。
「これで、合計三つの異銀河を掌握。キメラ銀河、セイバー銀河、そして天使銀河。……同時に、三名のコスモブラッドを確保」
「あはっ……やっぱソンキー強すぎ。無敵じゃん」
『超天ぱい』は、その場でくるりと回転しながら、楽しそうに笑う。
視線はモニターから離さず、興奮を抑えきれない様子で続ける。
「あの天使ってさ、正直、めっちゃくちゃ強いよね?」
「究極超熾天使コスモゾーン・クスオテンドー……存在値は余裕で1垓を超えている怪物。単体戦闘力も高いが、やつの本質はそこじゃない」
ロウドリーナは、淡々と補足する。
「――信じられないほど高い『軍を指揮する力』。あの熾天使は、軍そのものを一つの生命体のように扱う。数あるコスモブラッドの中でも、統率能力に関しては随一だろう」
「実際、あの熾天使が指揮する天使軍、ヤバかったよね。質も量も全部エグかったし、連携も完璧だった」
『超天ぱい』は、両手を広げて大げさに表現する。
「けど、それを――ソンキーは、単騎でぶっ潰した!! 一騎当千どころか、一騎当垓!! すごすぎ!」
「ソンキーは本当に強いな……欠点は顔だけと言っていい」
「……は? ぃ、いやいや、戦闘力より存在値より、顔が一番飛びぬけているのがソンキーなんだけどぉ……全世界でナンバーワンの超イケメンだよ」
「整いすぎた顔は人形にしか見えない。味のない顔は、あたしにとって、噛んだあとのガムみたいなもの」
「……ブス専」
「ブサイクを偏愛しているなどとは一言も言っていないのだが?」
吐き捨てるように言ってから、ロウドリーナはパチンと指を弾いた。
空間に浮かぶモニターが再構成され、三つの画面が前面に拡大される。
そこに映し出されたのは三体のコスモブラッド。
ソンキーと死闘を演じ、そして敗れた異銀河の神々。
天使銀河の元支配者『コスモゾーン・クスオテンドー』
セイバー銀河の元支配者『コスモゾーン・セイバーリッチ』
キメラ銀河の元支配者『コスモゾーン・キメラコトモリ』
いずれも、かつては『それぞれの銀河の頂点』に立っていた怪物。
みな、とても敗北者とは思えない、異質なオーラに包まれている。
確かに、3名はソンキーに敗北したものの、
しかし、隷属している雰囲気は一切ない。
あくまでも、ソンキーを『強者』と認めて、一時的な敗北を認めているだけ……といった印象。
「コスモブラッドを配下にした分だけ、コスモブラッドの力は上昇するんだよね」
「ああ。そして、配下が強ければ強いほど、支配者も強くなる。この辺は『魂の系譜』と同じだな」
『ロウドリーナ』と『超天ぱい』は、ソンキーと『魂の系譜』で繋がっている。
ヤクザ的な意味合いにおける『親子』関係。
力は一方通行ではなく、相互循環する。
子が強くなれば親も強くなり、親が強くなれば子も強くなる。
センエースも、ゼノリカのメンツとは魂の系譜で繋がっている。
ゆえに、センエースが強くなれば、ゼノリカも強くなり、
ゼノリカが強くなれば、センエースも強くなる。
「クスオもセイバーもキメラも、とてつもない強さを誇っている。そんな3体のコスモブラッドを正式な配下にしたことで……ソンキーの存在値は、さらにグンと底上げされた」
ロウドリーナは、モニターを切り替える。
そこには、戦闘直後の丁寧な精神統一に入っているソンキーの姿。
呼吸一つ、視線一つに無駄がない。
『戦い終えた者』ではなく、『次の戦いに備えている者』の佇まい。
その天衣無縫な立ち居姿を見て、超天ぱいは、
「完璧……強さ、美しさ……全部……」
うっとりとした表情でモニターを見つめ、両手を胸の前で組む。
その横で、ロウドリーナが静かに言う。
「だが……」
モニターが切り替わる。
映し出されたのは、別の異銀河。
――『顔面偏差値48』の羽織姿の男。
どこにでもいそうな……けれど、絶対に、他にはない気配。
「それでも……センエースには勝てない」
その一言で、空気がわずかに張り詰める。
「……またそれ?」
超天ぱいが、露骨に眉をひそめる。
数日前にも同じ話をした。
センエースという異常種について。
「三つも異銀河を落として、コスモブラッドも三人配下にして……超強くなって、まだ強くなろうとしているストイックの化身ソンキーが……それでも、このブサイクには勝てないって言うの?」
「事実だ」
ロウドリーナは、視線を逸らさない。
「……センエースは、『積み上げ方』が違う。『5垓』年を積んだ怪物の中の怪物……信じられない狂気」
ロウドリーナは、『アカシックレコード(コスモゾーンの中にある図書館的なもの)』にアクセスできる技術と知性を持つ。
『センエースが2垓年を積んでコスモゾーン・センエースになった後で、理銀の鍵を使って時を戻し、3垓年かけてもう一度コスモゾーン・センエースとなった』……という経歴を正しく認識している。
「……その5垓年っていうの、マジでピンとこないんだよねぇ」
超天ぱいは肩をすくめる。
「ようは、無駄にダラダラ生きてたか、そのぐらい時間かけないとどうしようもない無能ってことじゃないの?」
頬を膨らませながら、ふと思い出したように続ける。
「てかさ、あれでしょ? センエースって、まだ『原初の扉(いわゆるタイマー付きの扉)』すら開けてないんでしょ? 5垓年もかけて、まだ扉の一つも開けられないとか……無能オブ無能すぎてウケるんですけど。ソンキーなんてコスモゾーン化したあと、秒で開けてましたけどぉ」
「……各銀河によって、『原初の扉』の仕様は異なる」
「仕様?」




