82+話 ミスターZを喰らう者。
82+話 ミスターZを喰らう者。
同時進行で、センは『究極アイテム』の作成に着手する。
・時空ヶ丘市の地下遺跡に眠る古文書を、センエースは先行確保。
・薄暗い遺跡の最奥。封印じみた石室の奥に眠っていたそれは、『正史』だと『別の人物』が発見するはずだった。
・本来の発見者である『田中・イス・星桜』の救世主ルートが、この時点で大きく歪められる。
「ボクが必死になって探しとった古文書を横取りした盗人はあんたっすか?」
5歳の少女が1歳児に詰め寄る図は、一見するとほほえましい。
「盗人とは人聞きが悪い。早いもの勝ちのレースで勝っただけだ。まあ、お前が先に遺跡の謎解きの大部分をやってくれていたから、『美味しいところだけハイエナした』と言われても致し方ない部分がなきにしもあらずなのは事実だが」
「卑怯者」
「卑怯は敗者の戯言だと、角刈りの巡査長が言ってた」
・センは獲得した古文書を、田中連中に解析させる。
・複数の天才たちによる並列処理により、通常ではあり得ない速度で解読が進行。
・分業による高速解析体制が構築される。
・そして、その成果だけを最終的にセンは独占。
――結果、
センエースは『簡易携帯ドラゴン:ルナⅡ改』を獲得する。
『携帯ドラゴン』は、内部に高密度マナを内包した特異装置である。
見た目は、単なる『羽の生えた2頭身のトカゲ』だが、スペックがとにかくすさまじい。
内部にマナを有するゆえ、マナが存在しない第一アルファ環境下においてすら、外部に魔法現象を強制的に顕現させることが可能となる、究極の万能アイテム。
「異次元砲!」
魔法を使うと、センの手からビームが発射された。
射撃訓練用の的が弾け飛ぶ様子を見ながら、センは、
「……使えるのは使えるが……威力がゴミだな……いくらなんでも、急ごしらえ過ぎたか……星桜……悪いけど、携帯ドラゴンのチューンナップに協力してくれ」
「まさか、このボクが、赤子にいいように使われる日がくるとは……人生ってのは、ほんと、思った通りにいかないものっすね」
「本当はトウシに任せたいんだが……今のあいつ、呑気にバブってるからなぁ。聞いた話、高校レベルの数学程度なら秒殺っぽいが、流石に、まだ、携帯ドラゴンの調整ができるレベルじゃないらしい。情けない野郎だ。それでも田中・イス・トウシかよ。銀河の恥さらしめ」
現時点で、言葉も推論も成立しているが、前頭前野の統合と神経回路の刈り込みが未完で、処理の精度と安定性はいまだ発展途上にある。
発達速度は同年齢の数倍、神経回路の最適化も通常より数年単位で前倒しに進行しているので、あと二、三年もすればほぼ完成域に達するだろうが、現段階では、まだ難度の高い数学の問題を即答するのが関の山。
「……マジで、何やってんだよ、あいつは、ったく……ナンバーワンの天才なんだから、1歳児の段階から、そのスペックを遺憾なく発揮しやがれってんだ。俺なんか0歳の時から世界を救ってるってのに。ダメだなぁ、あいつは。ほんと話にならない。もう、クビだクビ。ちょっと、スタッフ~、誰でもいいから、あいつに通告してきて。ちなみに、この場合におけるクビってのは、失業って意味じゃなく斬首の方な」




