81+話 リアルに考えると、未来の知識はエグすぎる。
81+話 リアルに考えると、未来の知識はエグすぎる。
「現行の神経発達モデルでは説明がつかん。少なくとも、歴史上、一度も観測されていない事例だ。それだけでも驚愕に値する。その上で、未来の記憶を過去の自分に送るなど。いったい、理屈はどうなっているんだ? ……なあ、これ、夢じゃないよな?」
隣の内閣官房参事官が無言で頷いた。
審議官は小さく息を吐き、苦笑する。
「驚いたよ……こんな安い漫画みたいな出来事が、現実に起きるとはな」
「未来の記憶を過去の自分に送る。そんな現象は既存の物理法則では定義すらされていない。時間は熱力学的には一方向にしか進まないはずで、エントロピー増大則にも明確に反している」
「仮に相対性理論の枠内で無理やり説明するとしても、光速を超える情報伝達――いわゆる超光速通信を前提にせざるを得ないが、そんなものが成立した時点で因果律は崩壊する。原因より先に結果が存在することになるからな」
「……あるいは、情報そのものが時間を遡ったのではなく、『脳の状態だけが再構成された』可能性も考えられる。量子論的に言えば観測結果の逆流、あるいは量子もつれの拡張解釈といった方向だが、それでもこんなマクロな情報量――記憶一式を過去へ送る手段は想定されていない」
「閉じた時間的曲線、いわゆるタイムループ構造なら、理屈の上では自己矛盾なしに情報が循環する可能性はあるが――」
「理系オタク談義はその辺で結構。仮説の検討は後回しだ。ここは研究室じゃない。そして、これは夢でもフィクションでもない、現実のインシデントだ。国際安全保障に直結する超重要案件だと認識しろ。未来の知識は、扱い方次第で核兵器をゆうに超える。全関係機関に即時共有、情報統制を敷け」
★
・センエースの予言が連続的に的中。担当医師は単発事象ではなく再現性のある異常と判断し、『個別症例の逸脱を超えた世界規模のリスク事象』として院内リスク管理委員会に緊急付議。記録(映像・音声・時系列ログ)は証拠保全手順に従って封印され、病院管理部門を経由して所管保健所、厚生労働省へ緊急報告が上がる。
・厚労省は「原因不明・高影響度事案」として対策本部を立ち上げ、同時に内閣官房(危機管理)へエスカレーション。初動対応として、当該新生児を対象にした特別管理指示(監視・保護・接触制限・記録の一元管理)を発出。関係者には守秘義務の強化通達が出され、院内外の情報流通はログ付きで制御される。
・本件は単なる医療事案の範疇を逸脱していると判断され、安全保障案件として内閣官房主導へと移管される。以後、全省庁横断の統合対応体制が敷かれる。
・病院内に臨時の隔離管理エリアが設置される。名目は感染症対策レベルのゾーニングだが、実態は多層セキュリティ(入退室管理、監視カメラ常時記録、持ち込み機器の制限、外部通信は監視付きの限定回線に集約)。政府関係者(内閣官房・厚労省・警察庁)の常駐ユニットが配置され、病院側は政府の指示のもと医療行為に専念する体制へと移行する。
・同時並行で、警察庁の指示のもと、所轄警察および警備部隊が警備レベルを引き上げ、外部からの接近・接触を厳格に遮断。内閣官房は情報統制と対外説明のシナリオを策定し、報道対応の雛形およびリーク発生時の否認・限定開示ラインを整備する。
・国がパニクっている裏で、センは『赤子の身体で可能な範囲の鍛錬』を開始する。
・一定の呼吸リズムを維持する呼吸制御訓練(自律神経の安定化)
・眼球運動による注意制御・視線固定訓練
・指先・足先への神経伝達の反復(微細運動の立ち上げ)
・寝返り・体幹のひねりによる固有受容感覚の強化
・脱力と緊張の切替による筋制御の最適化
・睡眠中の記憶整理(再生・圧縮・索引化)
・経過観察の結果、通常の発達曲線から明確に逸脱した神経制御能力が確認される。反応潜時の短縮、随意運動の早期発現などの定量的異常が記録され、追加の観測指標(反応時間、眼球追従、心拍変動など)が設定される。
・政府内部では当初、情報の完全独占(国家資産化)方針が検討されるが、リークリスクおよび国際的圧力の増大を考慮し、限定的な国際共有へと方針が修正される。最終的に、信頼できるカウンターパートに対して段階的に情報を開示することが決定され、共有範囲は『事実の一部および検証データ』に限定され、核心情報は国内に留保される。
・外務・情報ラインを通じて、同盟国および主要国の情報機関に対し極秘ブリーフィングが実施される。各国は独自に評価チーム(医学・神経科学・物理学・情報分析)を編成し、同時にアクセス確保、共同研究提案、対象の引き渡し圧力など、複数の外交的・情報的アプローチを開始する。
・ついには『ISA』に情報が伝達される。
※(ISA:世界中の情報機関が秘密裏に連携して運営する、地球最高峰の頭脳が集められた超国家機関。人類の認知限界を超える事象の管理・解析が主目的。その正体は、超高次知的生命体である神話生物『イス人』にDNAレベルで寄生された特殊天才一族『イス田中家』の保護と管理を主眼としている秘密結社)
次話から、盛大に事態が動き出す……予感w




