28話 ミカンのミッション。
28話 ミカンのミッション。
大聖堂の裏手、歩いて10分ぐらいのところに、巨大な霊廟がある。
綺麗に磨き上げられている真っ白な墓石が、病的なほど数学的に等間隔で並べられていた。
巨大霊廟の歴史は大聖堂よりも古く、建立されたのは1万年以上前。
第2アルファで亡くなった英傑の御霊が祀られている。
最高ランクの世界である第二アルファに産まれた者の中には、死者蘇生の秘術『反魂の神聖式』が使える者も、それなりにいるのだが、『死者蘇生は失敗してアンデッドモンスター化するリスクもあるため安易に行ってはいけない』と神法で決まっている。
反魂の神聖式は『とてつもなく難易度が高い』のだが、挑戦するだけなら、そこまで難しくない。
ムリに例えるなら『目隠しでやる心臓バイパス手術』みたいなもの。
絶好調時のブラックジャックでも、流石にしり込みするだろう。
★
――命の歴史が刻まれたこの霊廟の見回りが、本日の『彼女』の任務。
栄えあるゼノリカの天下、再連323班のミカン。
「あの……エンス様……霊廟の見回りミッション……サボって大丈夫なのですか?」
『エンス』は、センの擬態の一つ。
愚連のA級武士として働く時の仮身分。
センエースの仮の身分は無数に存在し、
A級武士の身分だけでも他に三つある。
「サボってねぇよ、グルっと一回、見回ったじゃねぇか」
「けれど、一応、仕事ですから、例えば掃除とかした方が……」
「この霊廟はゼノリカの魔法がかかっているから、常時綺麗なままだ。掃除する必要ねぇ。仮に汚かったとしても、愚連の武士様である俺様が掃除なんかしねぇけど。そんな雑用はセンエースにでも任せておけばいい。あのバカにはお似合いの仕事だ。学級委員や生徒会長なんて役目は荷が重い。ゴミ係あたりが適任」
「民間人や新参者ならともかく、『愚連』の身でありながら、主を呼び捨てとは……下手したら、処刑されますよ?」
『愚連』は、国の治安を支える実働部隊。
犯罪者の取り締まりのような警察的任務も担うが、本来の役割はそれだけではない。
暴漢やテロリストやモンスター、さらには時折異世界から現れる怪物まで、国家に危害を及ぼす存在が現れれば出動し、これを排除する。
上位組織には楽連が存在するが、愚連の戦力があまりにも強大であるため、楽連が実際に出動する機会はほとんどない。
表向き『楽連は指示を出すだけで、実際に動くのは愚連のみ』と認知されているものの、実際のところ『大半の問題は愚連が出れば十分』なだけで、必要とあらば、楽連も当然、ゼノリカの手足として命を張る。
「もちろん、狂信者たちの前じゃ自重するさ。……けど、お前は、別に、センエースを信仰していないだろ?」
「なぜ、私が神帝陛下を信仰していないと思うのですか?」
「イカれているように見えないから」




