百合以外は帰ってくれないか
…私、恋愛小説家の失敗例では?今更ながら気付かされ…いや、分からされてしまいました。あれ、目から汗が…もう、偉そうに恋愛小説家なんて名乗れない気が。
「とりあえず、ですね」
深呼吸。
「私、BL作家になります」
「先生?」
「…男の子同士の恋愛もいいかな、と」
「…せ、先生の作品なら…読んでみたい、かも」
「ちなみにBLを読む男性を『腐男子』と言うそうです」
「腐??」
フフ、と笑いそうになり、口元を抑える。
「先生が書くなら僕、読みますけど…」
「いや…ありがとうございます。でも、こんな風に自分の本の事を話せたのは」
本当に久し振りなんです。ありがとう。
「あの…」
BL書く時は言って下さい。練習、付き合います。ですと。可愛い。って、やめろ嗜好が曲がってしまう。
「すまないが百合以外は帰ってくれないか」
「またですか?って、BL、百合、どっちなんですか??」
「…」
「…」
冷静に考えると選択肢がおかしい。ここは話題を変えよう。
「8時近いですけど、お母さんは大丈夫?」
「RINE来ました」
「良かった…んー、家まで送りますよ」
「隣ですよね!」
ツッコミの早い晶君。こんな可愛い…失礼、綺麗?端正?んん??……今まで、挨拶や、すれ違い程度であまり意識して彼を見てなかったけれど。むしろ意識外だったけれど。ほーん。
…喫茶店を閉めて帰ろう。ずっとクローズの札にしていても大丈夫な、今日は定休日。帰りの人が増えた駅前の通りを並んで歩き始める。手でも繋ぎましょうか?小説のネタ作りに。
「嫌です」
「ですよねー、少し残念です」
フフッ、と笑う君の瞳に映る私。
「晶君…」
彼の顔を軽く覗き込む。
「今日は、ありがとう」
えっ…と口籠る彼の耳が赤いのは、信号が赤のせい。
「晶君?」
私の声とは違う声が彼を呼び止める。




