突っ張り9.親方、出先で活躍する
「お前達、準備はできたか?」
「はい…あ、ちょっと腹が痛くなってきたっす」
「なんで緊張してんだ」
「街の人にお披露目するの楽しみですね!」
「私は見世物ではない」
「やっとお出かけですね!確か、5話からフラグ立ってましたよね?」
「作者の事情があるんだろう。よけいな口を利くな」
「すみません」
「腹痛の奴は大丈夫か?」
「とてもスッキリしました」
「生々しいから言わんでいい」
「失礼しました」
「忘れ物はないか?出発するぞ」
「大丈夫っす!」
こうして私達は呉服屋に出かける事になった。外に出ると近所の人が声をかけてきた。
「こんにちは。皆でお出かけかい?親方は留守番なんだね」
「私はここにいます。事情があって、小さいですが」(甲高い声)
「えー?聞こえないねぇ」
「親方は僕の肩に乗っています」
「どれ、老眼で見えなくてね…このちっこいのが親方かい?どうしちゃったの」
「そうです。俺達も原因が分からず困っています」
「大変だねぇ。親方の面倒をよく見るんだよ」
「はい」
そう言っておばあちゃんは去っていった。いつもはこの何倍も会話が止まらなくて、用事に遅刻しそうになるから、今日は正直助かった。
その後も道行く人からは様々な反応があった。
「ママー、おすもうさんが人形を連れて歩いてる!」
「見ちゃいけません!」
「はーい…」
「ねぇ見て?力士が肩になんか乗せててやばい!」
「かわいい♡写真撮って載せたらバズるんじゃね?」
「なんだあれ!見間違いかと思ったら現実かよ。シュール過ぎww」
見世物になるのは恥ずかしいが、服を仕立てなくては困るから早足で歩いてくれと伝えた。
普段はさほど距離のない呉服屋も遠く感じて疲れた頃、ようやくたどり着いた。
「いらっしゃいま…え?」
「ご無沙汰しております。女将、こんな姿で申し訳ない」
「訳ありのようね。お弟子さんも勢ぞろいで」
「こんにちはー!女将さん、聞いてください」
「服を仕立てて欲しいのでしょう?事情は深くは聞きませんわ」
「さすが女将さんっすね!口下手なもんで、どう説明していいか分からなくて」
「失礼な弟子達ですまない。羽織りを何着か仕立てて欲しい。いつ戻れるか分からないもので」
「かしこまりました。採寸するのでどうぞこちらへ」
「親方をよろしくお願いします!」
「人形の着付けは初めてでワクワクするわ!」
(女将よ、私は人間なんだが)
その後、女将達によって素早く採寸され、余り布で手早く服が作られた。
「小さいサイズで作るのは斬新で楽しいわ!」
「捨てるはずの布が役に立つとは思わなかった」
「親方が小さいんじゃ、お弟子さんも大変ね」
「せっかくだし、写真を撮ってホームページに載せましょうよ!」
「もしよければですが、宣伝用の写真を撮ってもいいかしら?その分、お代は結構ですから」
「無理を承知で頼んでますから、私で役に立てるのならぜひ引き受けさせていただきます」
こうして私はモデルのように、何着も着ては撮影した。ポーズのバリエーションは少なかったが、彼女達は満足そうにしていた。
「お疲れさまです。疲れたでしょうから、お茶でも飲んでって」
「ありがとうございます。体にしみますね」
「お弟子さん達もどうぞ。いいモデルさんをありがとう!新商品として、人形用を販売するのもいいかもしれないわ」
「あざっす!僕達も見ていて楽しかったっす。親方のモデルデビューは新鮮でした」
「おいしいお茶っすね!いつものより濃いっす」
「京都のお茶なの。気に入ってくれて嬉しいわ」
「女将、助かった。今後もよろしく頼みます。私達はそろそろお暇させていただきます」
「どちらのサイズも揃えておくわね!またいらっしゃい」
紙袋いっぱいの服を抱えてて店を後にした。普段の買い物より多く、このサイズであればしばらくもつだろう。
弟子達の空腹が限界の為、目一杯食べさせようと心に決めた…。
突っ張り10へ続く…
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