突っ張り8.親方、朝稽古の指導をする
カレーを食べ終えた私達は洗い物をして、居間へ戻った。
弟子達が風呂に入っている間、明日の事を考えていた。
(呉服屋へはいつ行くべきか…。飯も兼ねて外出すべきか?)
頭を悩ませていると弟子達が帰ってきた。
「ふぅー。さっぱりし…あ、親方を忘れて長風呂してすみません」
「稽古後の風呂並みに長くて待ちくたびれた」
「皆で水鉄砲で撃ち合ったり、水中息止め選手権をしてました」
「子供かよ」
「超絶楽しかったっす!」
「けんかするよりいい事だが、のぼせられては敵わん」
「気をつけます」
私の部屋は少人数制の為、階級ごとの厳しい上下関係がなく和気あいあいとした雰囲気なのが特徴で、他の部屋の力士からも羨ましがられているらしい。結果的に横綱を輩出しているので批判は特にない。
「明日の予定だが、朝稽古を先にするか、呉服屋を先に行くかどっちがいい?」
「朝稽古を先にしたいっす!今日は親方を探していてできなかったので」
「その後、呉服屋に行くがてら食べ歩きしましょうよ!」
「食べ歩きの『ついでに私の服を仕立てる』に聞こえる気がするが、その予定にしよう」
「親方、優しいっすね!」
予定が決まった私達は明日に備えて眠る事にした。私は、弟子達に踏まれぬよう自室に連れて行ってもらい、座布団をしいて、タオルを掛け布団代わりにして寝た。
翌日、目を覚ました私は元の姿に戻れなかった事に落胆しつつも、弟子達が来るのを待っていた。
「おはようございます!親方、小さいままですね。がっかりっす」
「おはよう。私が1番がっかりしてるわ!夢ならどんなによかったか」
「小さくてもいびきはかくのですね!元に戻ったと思いました」
「だから来るのが遅くなったのか。普段私は大いびきなのか?」
「『ゴーッ…ふがっ』って感じっす」
「元に戻ったらいびき外来に行くか」
「それより、朝稽古出れます?」
「体調はいいから連れて行ってくれ」
「了解っす」
稽古場に着いた私は、座布団の上に座って弟子達の様子を見ていた。現在、すり足のトレーニング中だ。
「冬吹雪、腰を落とせ!疲れるのは分かるが、上がってるのはお前だけだ」
「すみません…」
「春桜、冬吹雪に見本を見せてやれ」
「分かりました」
「見てみろ、これが現横綱の動きだ。無駄がないだろう」
「もう1度やらせてください!」
「いい心掛けだ。やってみろ」
「はい!」
「…よし、いいだろう。さっきとは全然違う」
「ありがとうございます!」
その後もぶつかり稽古などをして朝稽古を終えた。
彼らが汗や土を流す為に風呂に入っている間、自室で出かける準備をし始めた…。
突っ張り9へ続く…
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