突っ張り6.親方、料理を教える
「台所に行きたいから全員来てくれないか?」
「了解っす!」
「親方、作ってくれるのですか?」
「材料次第では私にできる事があるかもしれん」
「腹ペコペコっす!早く行きましょう」
食べ物に関してはやはり行動が早い。私を肩に乗せて走るものだから、振り落とされまいと必死にしがみついた。
「春桜、私を肩に乗せて走るのはやめろ。振り落とす気か!」
「あんまりにも軽いものだから、親方乗せてるの忘れてました…」
「全く…お前はこの中では1番強いが、食い意地も1番だからどうしようもない」
「以後、気を付けます」
台所にたどり着いた私達は冷蔵庫の中身や支援者からの箱の中身を確認した。
「鶏肉よし、バターよし、人参、じゃがいも、玉ねぎよし…」
「親方、暑いのにシチュー作るんすか?」
「違う。スパイスやルゥを探してくれ」
「カレーっすね! すぐに見つけます」
「ありました!『秘伝のスパイス』と市販のルゥ!」
「ありがとう。ルゥの期限は切れてないか?」
「大丈夫っす。半年持ちます!」
「よかった…ところで、ピザは何を食べたんだ?」
「マルゲリータ、コーンピザ、照り焼きチキンピザ、クワトロフォルマッジ(4種のチーズピザ・はちみつ別添)(いずれもパーティーサイズ)っす。ちゃんと『鶏』は食べたので安心してください!」
「そうか…緊急事態に備えて、照り焼きチキンピザは買っとくか」
力士において、鶏のない料理は縁起が悪い。ゲン担ぎと共に鶏肉は万能食材でもあるから、決して欠かしてはならないのだ。
「これから、バターチキンカレーを作る。冷蔵庫の鶏肉、バター、野菜、包丁、まな板、大鍋、菜箸、お玉、味見用小皿を用意してくれ。それと電子ばかりの電源は入るな?電池切れでは敵わん」
「了解っす」
「手を洗って始めよう。米の炊き方も教える。そこにある米びつからザルに1升分量って入れてくれ」
「米は電子ばかりで量るのですか?」
「違う!米用のはかりに満タンにしたら1合だ。10回入れれば10合、つまり1升分となる」
「分かりました」
「入れ終わったら、米を洗う」
「洗剤っすね!」
「待て、『水』で洗うんだ!洗剤なんかで洗った米が食えるか!!」
「確かにそうっすねww」
「洗った米を炊飯器に入れる。水を『1升』のメモリまで入れたら『炊飯』ボタンを押して待つだけだ」
「覚えれば簡単っすね!」
「毎日食べるものだから、ぜひ覚えてくれ。次はカレー作りだ。野菜と鶏肉を食べやすい大きさに切ってくれ。野菜の皮はピーラーで剥いた方が安全だ」
「包丁の持ち方が分かりません」
「包丁の柄の部分をしっかり握って、食材は猫の手で押さえる。ゆっくりでいいか…」
「あ!ちょっと指切っちゃいました」
「夏葵はせっかちだからな。水で洗って絆創膏貼って来なさい」
「親方、このくらいですか?」
「それ、ほとんど切ってないじゃないか!」
「自分なら吸い込んで食べるんで」
「もっと小さく切りなさい。火の通りも悪くなるから」
「了解っす」
「やっと切り終わったな。次は大鍋にバターを入れて材料を炒める。バターは電子ばかりで量りなさい」
「多めの方がおいしいですよね」
「味がくどくなるから量りなさい」
「はい…」
「火は中火にしなさい。消し炭にされたら敵わん」
「分かりました」
「そろそろいいだろう。水とルゥを割って入れなさい」
「了解っす」
バキバキバキッ!
「秋茜、力加減を考えろ!粉々じゃないか」
「すみません…」
「全く…仕方ない。全部入れなさい」
「了解っす」
「溶けやすくなったが、味が不安だな…。小皿に汁をつけて渡しなさい」
「どうぞ」
「うん、大丈夫だろう。仕上げに『秘伝のスパイス』を少し入れて煮込めば完成だ」
ドサッ。
「冬吹雪、多い!辛いだろうが!」
「すみません…」
「牛乳もあったから少し入れなさい」
「はい」
そんなこんなでカレーは完成した。最後の味見をしたら、奇跡的に大丈夫だったので、炊きあがったご飯とカレーをつけて食卓へ運んだ。私の分は味見用の小皿につけた。また、普通のスプーンでは大きいので、デザートスプーンを用意した。
「いただきます!」
「自分らで作ったカレーはおいしいっすね!」
「こっちはひやひやしたが、無事にできてよかった」
私はカレーを食べながら、昔を思い出していた…。
突っ張り7へ続く…
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