突っ張り5.親方、入浴する
「親方?顔色が悪いですが、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。心配かけてすまない」
「もしかして、トイレットペーパー足りませんでした?」
「そうではない。仮にそうなら、あの場で言うわ」
「水分取ってます?ブドウだけじゃのど渇きませんか?」
「確かにのどが渇いた。水をくれないか」
「分かりました」
色々あると、のどの渇きすら忘れてしまうようだ。
弟子が飲みやすいようにと、ペットボトルのキャップに水を注いでくれた。湯飲みでは上手く持てなかっただろう。
「おかわりをくれないか」
「了解っす。たくさん飲んでくださいね!」
「いつもと違く感じる」
「支援者から海外産の天然水をいただいたみたいだったのでこれにしました」
「たまには硬水もいいかもしれない」
「キャップを使うにも、ちょうどこれを開けるしかなかったので」
「そうか。次からもこのキャップで飲むから取っといてくれ」
「はい」
のどの渇きはなくなったが、思ったより汗をかいている事に気づいた。外に出た時、日差しが強くて暑かった。そこで、いったん汗を流そうと考えた。
いつもならこの時間に風呂に入る事はまずありえない。
しかし、体が小さくなってしまった以上、夜に移動する事や裸になる事はどうしても避けたかったし、体がひどくベタつく。
「親方、湯加減はいかがですか?」
「ちょうどいい。何をするにも誰かいないとできないのは申し訳ない」
「熱かったり冷めてしまったらいつでも調整しますので、僕達を頼ってください!」
「ありがとう。助かる」
私は湯船に浸かっているのだが、広い湯船ではなく木桶に湯を張っている。和のファンタジー満載だ。
「背中洗いましょうか?」
「手ぬぐいを小さく切って渡してくれたらそれでいい。力いっぱい洗われては敵わん」
「分かりました」
弟子達はとても素直だ。初めは戸惑いを隠せなかったが、この異常事態に私よりも順応しているようだ。
入浴後、いつもならドライヤーで髪を乾かしている。
しかし、小さいので自然乾燥でも良さそうな気がしていたら、あるアイテムをかざされた。
「ハンディーファンで乾きそうっすね」
「お前、そんなの持ってたのか!」
「今の夏舐めたら熱中症で倒れるんで」
「文明の利器だな。サイズもちょうどいい」
「風になびく親方、ツボですw」
「なんでだよ」
「親方、服を手洗いして乾かしておきました」
「助かる。服を着れなくてはどうしようもない」
「服ごと小さくなってよかったっすね!」
「そうだが、1着では困るから明日買いに行くか」
「ぜひお供させてください!」
とりあえず明日も小さいままだと仮定して、いつもの呉服店に行く事にした。服が破けたり燃えるなどしたら替えがないからだ。
弟子達を休ませている間に、夕飯をどうするか考えていた。さっきはチルドピザで済ませたが、食べ尽くされた為もうない。正直言えば、一口食べたかった。私を必死になって探してくれた手前、文句は言えないが。
在庫を確認しようと思い、立ち上がった…。
突っ張り6へ続く…
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