突っ張り4.親方の謎
「聞きそびれたのですが、どうして親方は小さくなったのですか?」
私はこれまでの経緯を弟子達に説明した。小さくなった理由は思いつかないので、謎のままだが。
「いつもの水炊き(おじやバージョン)を食べて寝て起きたら小さくなってたんですね。なるほど、意味分からないですね」
「風邪の症状がまだ残ってるとかですか?」
「体調は良くなった。昨日までの症状はない」
「風邪薬は飲みましたか?」
「めったに風邪は引かないが、以前飲んだ事があるものを服用したはずだ」
「薬の副作用ではないのか…」
「そんな副作用あったら、たまったもんじゃない!」
「なぜ台所にいたのですか?腹、減ります?」
「なぜか腹は減ったんだ。この体では移動するにも大変だからじゃないか」
「それでブドウを食べたんですね!」
「ああ、巨峰1粒で腹が膨れた」
「低燃費過ぎませんかww」
「小さいのに今までと同じ量食う方がおかしいだろう」
「確かにそうっすね」
「俺達腹ペコペコなんすけど、食べていいっすか?」
「私は調理できないから、自分らで何とかしろ」
「分かりました。冷蔵庫確認してみます」
冷蔵庫を開けた彼らは満面の笑みを浮かべていた。
「買い置きしたチルドピザがある!温めるだけで済むぞ」
「レンジとトースターのフル稼働だ!」
「表示見て温めないと消し炭になるから気をつけろよ」
「了解っす!」
私は、肩をなで下ろした。彼らを空腹のまま放置してはいけない。腹の虫の大合唱となり、イライラが止まらなくなるからだ。
「うまい!いくらでも食えるぞ」
「空腹は最高の調味料だからな」
「親方の分も食べていいっすか?」
「好きにしろ。腹空かされては敵わん」
「やったー!」
腹を満たした弟子達は満足したようで、落ち着きを取り戻した。ふと、私は便意を催した。
「厠に連れて行ってくれないか?」
「了解っす。そのサイズで洋式トイレ、大丈夫ですか?」
「確かに、落ちたらまずい。庭の畑に穴を掘ってくれないか?」
「お安い御用です。すぐやります!」
野菜を無農薬栽培している為、畑付きの土地を持っている。部屋を作る時、女将とのこだわりでそうしたが非常事態でも役に立つものだ。
「親方、できました!看板も立てておきました」
「ありがとう。助かった」
急いで畑に向かい、事なきを得た。行く時は必死だったので気付かなかったが、帰り際に例の看板がある事に気づいた。
『親方のトイレ(茶色のマーク)』
「これはいらないだろ。小学生か!」
「親方、知ってます?このマークは世界共通で海外でもウケます」
「ここは日本だし、私しか使わないから消しなさい」
「上手く描けたのに残念っす」
油断も隙もない。例のマークはペンキで消されて見えなくなったが、私は新たな不安を抱えていた…。
突っ張り5へ続く…
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