突っ張り14.親方、巡業へ行く
今日は巡業の日である。私が小さくなってからも弟子達は朝稽古を欠かさず行ってきた。本場所とは違い、相撲を知って楽しんでもらう催しである。力士との距離が近かったりサイン会などが行われ、ファンにはたまらないのだ。
「この姿のまま今日を迎えるとは思わなかった」
「戻りたかったですか?俺だったら、ファンの方々にチヤホヤされたいので小さくなりたいです」
「不便な事ばかりだ。慣れてきたとはいえ、普通の生活が送りたいに決まってる。お前達にもこれ以上、迷惑をかけたくないしな」
「僕は迷惑だなんて思ってませんよ。むしろ毎日が楽しくて仕方ないっすww」
「私も楽しく過ごさせてもらってます。料理もだんだんできるようになって嬉しいです!」
確かに誰でもできない事ができるようになるのは嬉しい。食事は毎日必要なので、飽きないよう色んなメニューを彼らに教えて来たし、腕も上達して私の教えがなくとも上手になった。米の炊き方すらもできなかった頃が懐かしい。
「親方、顔がにやけてますけど何考えてるのですか?」
「料理下手な頃を思い出していただけだ」
「嘘だ!ベッドの下にオトナな本を隠して読んでるんすよね?」
「私は思春期じゃあるまいし、読んでるのはお前だろ」
「ばれたwww」
弟子達が緊張しないように、開場までくだらない話をしつつ、その時を待った。
朝は公開稽古から始まり、2人の力士が禁じ手や珍しい相撲のルールを紹介する初切や唄自慢の力士が手拍子に合わせて名調子を披露する相撲甚句など、賑やかな時間が過ぎていく。午後には力士達の取組も行われ、無事に終了した。
「お疲れさま。お客さんは大盛況だったぞ」
「楽しかったっす。本場所より正直好きです」
「気持ちは分かるが、それでは横綱にはなれない」
「そうっすね…稽古頑張ります」
「年のせいか、はしゃぎ過ぎて疲れましたw」
「全力でやっていたのは皆に伝わった。ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます!」
来月は本場所を控えている為、稽古指導により身を入れなければいけないと私は決意を新たにした…。
最終話へ続く…
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