突っ張り13.親方は小さな花火師
件のバラエティー番組の放送後、様々な番組への出演オファーがあったが全て断った。力士は本場所や巡業で活躍するのが本業であり、私自身バズに関して疲れ切っていた。外に出ずとも野次馬達が部屋まで押しかけ、1日中対応に追われる。そんな日々を塩対応でかわしていたら、彼らは次第に去っていった。
ある夜の事。私達は夏の思い出作りにと手持ち花火を楽しむ事にした。対応に追われる私達を見かねた近所の人達が、気分転換の為に差し入れしてくれたのだ。
「手持ち花火なんて子供の頃以来ですね」
「そうだな。たまには童心に還るのもいいな」
「親方、花火持てます?」
「1本なら両手で持てるだろう」
「じゃあ、僕達は親方の分まで持ちますね」
「普通に楽しむなら好きにしろ」
そんなこんなで始まった小さな花火大会は、大いに盛り上がった。
「二刀流で絵を描くから、動画撮って!」
「了解」
「たくさん持ったらきれいじゃね?」
「俺がやる。秘技・メリケンサック持ち!」
「危ない真似はするな!」
「アチッ!」
「全く。目を離すとこれだから」
「すみません…」
私は両手で持つのが精一杯だったが、きれいな色を出す花火はいつ見ても感動する。そんな姿は弟子達によって、しっかり記録された。
「花火を初めて持った人みたいっすねw」
「震えているからか?力が入らないと重く感じるな」
「一緒に持ちます?」
「これくらい持てなきゃ困るから大丈夫だ」
「分かりました」
たくさん花火をもらっていたはずなのに、いつの間にか線香花火だけになっていた。
「楽しい時間はあっという間だな」
「そうですね。さみしいっす」
「皆で勝負しません?これなら親方も片手で持てますよね?」
「そうだな。さすがに片手で大丈夫だ。火をつけてくれ」
「了解っす」
静かな勝負が幕を開けた。手が震えてすぐに落ちたり、火薬の量が少なくていつの間にか消えたりする中、私の線香花火はパチパチと音を立てて頑張っていた。
「親方、頑張ってください!動画撮るので」
「今ならまだ大きいから大丈夫だ」
「ハ、ハクション!!」
ぽと。
「あっ!間に合わなかった…」
「誰だ、くしゃみした奴!驚いて落としちまった」
「すみません、煙でむずむずしまして…」
「冬吹雪か。そういや、鼻炎持ちだったな」
こうして花火大会は幕を下ろしたのだった…。
突っ張り14へ続く…
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