突っ張り12.親方、バズる
『シュール?かわいい?謎の肩乗り人形現る』
『都市伝説の”小さいおじさん”は本物だった!』
『力士の肩に乗る人形が見えたら10人に回せ』
こんなタイトルで私はSNS上でバズっていた。普段私は親方としてメディアに出演する事があるが、これほどまでに騒がれた経験はなかった。相撲を今の若者達に知ってもらえるのは嬉しいが、誇張や嘘で塗り固められた内容を見るのは辛い。私は好きでこの姿になった訳ではないし、アンチのコメントなんか見たくない。複雑な気分である。
「親方、万バズっすねww」
「こんな形でバズってもな…」
「呉服屋のホームページにも反響がすごいと女将から連絡が来てます」
女将が寄せられた反響の一部を送ってくれた。
『老舗のいい生地だから子供の着せ替え人形に使いたい』
『モデルの人形は買えますか?』
「人形にしてはリアル過ぎて怖いと思うがな。それに、私は売り物ではない」
「量産型親方が出たら本物と並べて飾りたいっすwww」
「やめてくれ」
その後も弟子達は盛り上がっていたようだが、私はフェードアウトしていた。自室に戻りスケジュールを確認していた所、スマホが鳴った。
「もしもし?はい、その件についてですが…」
巷でバズっているから出てくれないかというバラエティー番組からの出演オファーだった。正直、今の姿をこれ以上全国ネットに晒したくなかったが、プロデューサーの圧に負けて渋々了承した。
数日後、収録の日がやってきた。弟子達も一緒に出ていいとの事で、タクシーで現場に向かった。
「おはようございます。本日はよろしくお願いします」
「…よろしくお願いします」
トーク番組の為、MCから小さくなったきっかけや、生活面での苦労などを根掘り葉掘り聞かれたが、私はうまく答えられなかった。代わりに弟子達が面白おかしく語り、収録は終了した。
「台所で初めて親方を手に乗せた時、あまりにも軽すぎて饅頭乗せてるかとw」
「『饅頭』てww」
「その場にあった電子ばかりで、思わず量っちゃいました!」
「『饅頭』はいくらだった?」
「まさかの100gぴったりで、小数点まで0でした!」
「その時、まんじ…いえ、親方はどんな気持ちでしたか?」
「まさか、自分の体重を電子ばかりで知る日が来るとは思いませんでしょ?複雑ですよ」
「私も同じ立場なら、そう思いますね。では、他のエピソードはありますか?」
「親方のトイレ問題なんですけど、畑に穴を掘って看板を立てたら怒られまして」
「なんで?」
「こいつ、看板に絵を描いたんですよ。めっちゃリアルなやつww」
「そりゃ、怒られるわ!」
「恥ずかしい弟子達なもんで困ります」
放送を弟子達と一緒に見ていると、私がしゃべる度に『※親方の声は一切加工しておりません』というテロップが表示されていた。端から見ればバラエティーだから、悪意のある編集だと指摘されるのかと今更ながら気づいた。それくらい私は今の生活に慣れつつあった…。
突っ張り13へ続く…
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