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「学園を休んで療養中だって聞いてたけど。思ったより元気そーだな、⋯シャーロット」
救世主様ことウォルター様は、その細い顎を触りながらアイザック様のお膝に座ったままの私(ロティの身体)の顔をじっと見つめると、優しく笑って下さいました。
「おおお恥ずかしい所をお見せして、申し訳ありません」
「ロティに恥ずかしい所なんて、ないよ?」
アイザック様。慰めて下さるのは有難いですが、私が恥ずかしい思いをしているのは、アイザック様のせいです。
そして、そんな私の心を代弁して下さる救世主ウォルター様。
「そーだな、恥ずかしいのはお前だな。アイザック」
「ロティ?僕の恥ずかしい所はロティにしか見せないから大丈夫。先輩の言う事は聞いちゃダメだよ」
真面目な顔でおかしな事を言い出すアイザック様に、呆れ顔のウォルター様。
「なー、呼び出しておいてその態度はどーかと思うぞ。そろそろ下ろしてやれよ。彼女、嫌がってんぞー」
「ふふ、ロティ。嫌がってるの?」
「嫌がっ⋯てません」
もはや嫌がってるとか嫌がってないとか、そんな事はどうでもいいのです。とにかく恥ずかしいのです。
今はもう、ただただ恥ずかしいの一択です。
「いーから下ろせって。見てるこっちが落ち着かねーよ。分かった訂正する。彼女は嫌がっちゃいない。恥ずかしがってる」
救世主様!!頑張って!!!
「ふふ、ロティ、恥ずかしいの?」
「恥ずかし⋯い、です⋯⋯」
「ふふふ、恥ずかしがってるロティも可愛いなあ」
恥ずかしがってるロティも可愛いのは同意ですが、今じゃないのです。
そう言うのはロティに身体を返したあと、2人きりの時にお願いしたいです。
「いーから。いい加減、彼女を下ろしてやれって」
「うーん、先輩。先刻から彼女彼女って、誰のことです?」
渋々と言った様子で私をお膝から下ろすアイザック様。
やっとです。やっとひと心地つけました。
「⋯⋯シャーロットだよ、それが何だ?」
「そう、可愛い可愛い、僕の婚約者。ロティ、ですよね」
そう言って私(ロティの身体)の髪を撫でると、一掬いしてはクルクルと指に絡めて遊び始めてしまいました。
まあ、お気持ちは分からなくもないです。
ロティの髪を触るのは気持ちがいいですから。
「⋯何を今更。それがどーかしたか?」
どうしたことでしょう。
なんだか寒くなってきました。
まさか、アイザック様のお膝から下りたせいでしょうか。
「いやあ?そう言えば先輩って婚約してませんよね?研究一筋だからですか?」
そうなのです。
ウォルター様は学園に研究室を1つもらっている程、その腕を認められている、それはもう、とてもとても優秀なお方なのです。
既に、卒業後も学園に残って研究を続けることが決まっている程なのです。
2学年の前半頃には学園で学ぶ課程を全て終え、研究に集中出来るようにと、授業に出てくることもほとんどありませんでした。
ですから、私はウォルター様と同じ学年でありながらも、ウォルター様のお姿を学園内で見かけることは、すっかりなくなっていました。
うーん⋯。確かにそんなに優秀な上に、シルバーの髪とアイスブルーの瞳を持つ整ったお顔立ちのウォルター様なら、婚約者が決まっていてもおかしくないと思うのですが。
「⋯別に、そー言う相手がいなかっただけだよ。つか、お前には関係ねーだろ」
「え?ありますよ、可愛いロティが狙われたら嫌ですもん」
なるほどなるほど。
選り取り見取りの選び放題だけど、ウォルター様のお眼鏡にかなうお相手がいらっしゃらなかった、と。
なかなか理想がお高そうですものね。
そうなると、どのようなお方をお選びになるか見てみたかった気も致しますが…。
きっと私がロティの身体を借りている間には、叶いそうもありませんね。残念です。
そしてアイザック様は本当にロティが大好きですね。
姉としては喜ばしい限りです。
「はっ、誰が狙うかよ」
「そうですか。先輩の好みはロティではなくドロシー嬢の方でしたか」
ウォルター様。言い方。
そしてアイザック様は見当違いも甚だしいです。
「⋯お前が何企んでっか知らねーけど。俺は簡単にはのせられねーよ」
「ひどいなあ、企むだなんて」
「まーいい。エリオットに会ってたんだろ。さっき出ていく所を見かけたぞ」




