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事件が解決したら憑依探偵令嬢と呼ばれてしまうのでしょうか  作者: モチダ


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━━━━━ああ、私は。この夢を知って、いる……?


誰かが泣いている⋯

⋯違う⋯?

誰かが、寝ている⋯⋯?


『いやぁああああああ目を開けてお姉様、死んじゃいやぁああ、お姉様ぁぁああああああ』


泣いてるのは、ロティ⋯?


いやよ、泣かないでロティ⋯

そんなに泣いたら、可愛い目が溶けてしまうわ


「⋯⋯っ」


⋯⋯どうして、私の声は、手は、届かないの

どうして、⋯抱きしめてあげることもできないの⋯



誰か、⋯お願い、ロティを⋯


誰か、誰か⋯っ早く、ロティを⋯⋯



⋯⋯誰、か⋯⋯⋯

ロティを⋯⋯


ロティを、抱きしめて、あげて━━━━━








⋯⋯⋯毎日、同じ夢を見る。


私ドロシーが死んで、ロティが泣いている、夢。

夢だけど、夢じゃない、夢。


私が乗り移っているから見る夢なのかしら。

ロティはこんな夢、見ていないといい。


現実で泣いて、夢の中で泣いて、起きてからも泣くような、こんな夢⋯⋯⋯⋯⋯



コンコン

「お嬢様、おはようございます!⋯⋯っ本日もアイザック様とお出掛けですね!!お召し物はどうなさいますか?」


ロティ専属メイドの明るい声が部屋に響く。

一瞬、驚きそして悲しい顔をしたのを、私も気付かないフリをする。


「今日は少し暑いわね、⋯⋯汗をかいてしまったみたい」

「では、すぐに湯あみの準備をしますね!」



ロティが生きるこの現実は、あの夢とは違う。

ロティの周りには、優しくて温かい人達が沢山いる。

抱きしめてくれる腕も、涙を拭ってくれる手も、ちゃんとそばにある。


「だけど」


私、ドロシーが乗り移っている間は、過度なスキンシップは許しませんことよ。アイザック様。

早くロティに身体を返すためにも、共に力を合わせ犯人を見つけましょう!!





そんなこんなで、今日も学園近くのカフェにて、アイザック様とお茶を頂いています。


アイザック様曰く「学園の近く」と言うのが重要らしいです。

そして、人目が沢山ある方が犯人も手出しし辛いだろう、とのこと。


「ウォルター様もエリオット様も、来てくださるでしょうか?」


今日もロティの隣に嬉々として座るアイザック様に尋ねる。

ウォルター様もエリオット様も、ロティとは関わりが少ない事もあり、伝達はアイザック様に任せてしまったのです。

公爵令息を顎で使ってしまった代償です。ロティの手を握るくらいは許しましょう。


「ウォルター()()は公爵家からの呼び出しを断れる立場ではないし、断らない性分だから大丈夫。エリオットは…エサをチラつかせたから、きっと来ると思うよ」

「エサ⋯とは⋯⋯?」


「おい、来てやったぞ」

「!!!」


噂をすれば、エリオット様です。

チラリと盗み見ると、元々細身の方でありましたが、更にひどくやつれたご様子。

男性にしては白い肌もキャメルの髪もツヤをなくし、アンバーの瞳は虚ろで焦点が合っておらず。フラフラして、まぶしいのか具合が悪いのか、顔をしかめています。


「何で僕がお前達に呼び出されないといけないんだ、忌々しい」


「そんな事言わずに座ったらどうだ?久しぶりの外出なんだろう?ゆっくりして行くと良い」


向かいの席を目線だけですすめるアイザック様に、イラつきを隠さないエリオット様。


「断る。さっさと手紙に書いてあったものを見せろ」


「ふふ、せっかちな男はモテないぞ」


「はっ、⋯⋯⋯必要ないな」


自嘲気味に笑うエリオット様に、アイザック様は綺麗な笑顔で容赦なく畳み掛けます。


「そうだね。キミには、()()()()()()、な」


「⋯⋯⋯どういう意味だ?」

エリオット様が身体ごとアイザック様に向き直る。


その瞬間、思わず私はアイザック様と繋いだままの手を強く握りしめてしまいました。

顔を見ないようにしているけれど、エリオット様がこちらを見ていると思うと、それだけで身体がすくんでしまう。


アイザック様は繋いだ手を反対の手で優しくさすりながら、冷たく厳しい目をエリオット様に向ける。


「そのままの意味だよ。キミの愛する女性はもういな⋯」

「うるさい!!!!!!!」


エリオット様が叫ぶ。

私は恐怖で身体が震えるのを必死でこらえる。


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!」


アイザック様が、私の耳を塞ぐように抱きしめて下さっているのにも関わらず、エリオット様の狂気の怒声は、どんどん私の耳に入ってくる。


「何なんだお前!!!彼女の日記があるとかなんとか言って!!!!!僕をだましたのか!!!」


これは本当に彼が発している言葉なのでしょうか。

恐怖からくる私の幻聴ではないでしょうか。

だって、あのやつれた身体の、どこからあんな声が出てくるのでしょう。

わからない。わかりません。

彼は何に怒っているのでしょう。

分からなくて。ただ、ひたすらに。怖いのです。

私は、彼が怖くて、たまらない。


「ああ、お前もグルなのか!!あいつと一緒に邪魔をしようってんだな!なあ教えろよ!!どうしてだ!!!どうして彼女が!!もういないなんて⋯!!!どうして!!お前達が邪魔を⋯⋯!!!どうしてどうしてどうしてどうして彼女が⋯!!僕は認めない!!!!!」


そう言ってお店を出て行ってしまうエリオット様。

アイザック様も追いかける気はなさそうです。


私はと言うと、もう少し彼の怒声が続けばどうにかなっていたのではないかと、そんなギリギリの所で、何とか踏みとどまれた、そんな感じです。



「ロティ、怖い思いをさせてごめんね。もう大丈夫だから」

「⋯⋯⋯⋯⋯っ!!!!!」


はい、出ました。

只今より、アイザック様は安楽椅子となりました。

そうでした、そうでした。

この状況以上に不可解なものなど、この世には存在しないのでした。

はいはい、有難うございます。アイザック様。

お陰で少し落ち着いてきました。


⋯⋯⋯⋯いや、ねえ、待って。

ここ、お店。

私、公衆の面前で、アイザック様のお膝に座っています?

いやもう本当、アイザック様。あなた、何して下さっていますの?


え?私がおかしいの???世の恋人達はこれが普通なの??

それって、私には荷が重すぎません???


ロティ。早く犯人を見つけて、あなたに身体を返したい⋯⋯⋯⋯⋯っ


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