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「日記に告白相手の名前は書かれていなかった。可能性があるのは3人だとロティは言っていたよね」
告白の可能性⋯、⋯3人⋯⋯?
同時に何人も想いを寄せるほど私は器用ではないので、過去を含め私が好意を抱いたことのある男性、と言うことでしょうか。
「もしかして、⋯ウォルター・キンバリー様、と、⋯⋯オスカー⋯バジェット⋯様⋯⋯でしょうか⋯⋯っ」
ウォルター様は私の初恋の相手でございます。
オスカー様は、⋯今、とても、その、⋯⋯お慕い、しているお方、⋯なのでございます⋯⋯⋯
それはさておき!
アイザック様は「3人」と仰られましたが、もうお一方はどなたなのでしょうか?
「そして、エリオット・スタイナー」
「!!」
思いがけない名前に身体が強張りそうになりましたが、前もって分かっていらっしゃったのか、はたまた愛ゆえか、アイザック様が私(ロティの身体)の腕に触れる手に力を込めました。
⋯⋯⋯ところで私はいつまでアイザック様のお膝に座っていれば良いのでしょう。
これはもういっそ、こういう椅子だと思って開き直るべきなのでしょうか。
私、生きてる間も死んでからも合わせて、公爵令息様を椅子呼ばわりするなんて初めての経験です。
などとバカなことを考えたお陰で、少し気持ちが落ち着いてきました。
そうです。この状況を考えると大抵のことはバカバカしく思えてきます。
これはもうアレですね。精神的安楽椅子。アイザック様のことは安楽椅子だと思うことに致しましょう。
「わた⋯、いえ、姉は、エリオット様に告白しないと思います」
「そうだね、告白するとしたらエリオットの方からだ」
エリオット様は以前から、私ドロシーに、その、何度も交際を申し込んでこられていて、少々、その⋯困って⋯いた、相手なのでございます。
エリオット様は公爵令息であらせられる為に、邪険にする訳にもいかず、また、まかり間違ってエリオット様から婚約の打診なんぞあれば、スタイナー公爵家より爵位の低い我がバートン伯爵家がお断りをする事など叶いません。
今のところ、いえ、私が死ぬまでその様な事態には陥りませんでしたので、エリオット様はその、強引でしつこい⋯所がおありでしたが、存外、良識的なお方だったようです。
因みに、先程からエリオット様を呼び捨てにされているアイザック様も、公爵令息でございます。
勿論、ロティとの婚約は2人が想いあってのものでございますよ。
「「告白」と言うキーワードに関係がある人物は容疑から外すわけにいかない、と言っていたのはロティじゃなかった?」
「そ、そうでした。言いました。⋯確かに、ウォルター様も告白の相手とは思えませんけど、数に入っていますものね」
「ロティは、やっぱりお姉さんの告白の相手はオスカー「先生」だと思う?」
気の所為でしょうか。「先生」の部分が強調されていたように感じます。
オスカー先生は学園で第2学年の担任をされています。
因みに私ドロシーとウォルター様は3年生。
ロティとアイザック様、エリオット様は2年生でございます。
確かオスカー先生はエリオット様のクラスの担任を受け持っておられるはずです。
因みにロティとアイザック様は同じクラスです。想像するだけで微笑ましいです。
「ねえロティ?」
「⋯は、はい」
いけません、思考が余所へ飛んでいました。
折角アイザック様が犯人探しに協力して下さっているのです。
集中しなくては。
なので手をモミモミしないで下さいませ、アイザック様。
あと、その質問は答えるのが、とてもとても恥ずかしいです。
「あ、姉が告白するなら⋯、オスカー・バジェット先生に⋯違い、ありません⋯⋯っ」
それは間違いないのですが、そうなると、考えたくない事実が浮かびます。
「それじゃあ、あの日お姉さんが待ち合わせをしていた相手は、オスカー先生だと思って間違いなさそうだね?」
目の前が真っ暗とはこういうことを言うのでしょう。
先生は私のことを殺したいくらい迷惑に思っていたのでしょうか。
いえ、私が死んだと言う事実がある以上、迷惑だったのですね。
「悲しい顔をしないでロティ。ああ、ほら、唇を噛んではいけないよ」
「!!!!!はい、噛みません」
いけません!確かにいけません!!
この距離は許されません!
例えロティの身体でも中身が私ドロシーです!
私が乗り移っている間は、たとえ指でもロティの唇に触らせません!!
そう言うのはロティに身体を返したあと、幾らでも、気が済むまで、思う存分堪能してください。
ロティも!それで良いですね!!!
小姑よろしく決意した私に気付いた訳でもないでしょうに、アイザック様はまるで私をなだめる様に言います。
「よく聞いてロティ。オスカー先生は「待ち合わせの相手」と言うだけだ。犯人と決まったわけじゃない」
「ですが先程は⋯」
「そう。だから、先生に話を聞きに行くべきだと思わないか?」
行きたいです。
先生にもう一度会えるのなら、勿論、会いに行きたいです。




