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事件が解決したら憑依探偵令嬢と呼ばれてしまうのでしょうか  作者: モチダ


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「ロティ?⋯⋯ロティ⋯っ」


ガタガタと身体を震わせるシャーロットをアイザックが抱きしめる。

大丈夫だよと言い聞かせているのは自分になのか、シャーロットになのか。

身体を暖めるように擦っては、ぎゅうっと抱きしめる。それでも震えは止まらない。


「⋯⋯「事件以降閉じこもっていたクセに突然の外出、しかもそれが連日だなんて、何かあると勘繰られるには十分」⋯だったか。いやー、実に興味深い演説だったなー、アイザック?」


ああ⋯、こいつが絡んでくるだろう事はロティから聞いていたな、とぼんやり思いながら目線だけウォルターに向ける。


何が楽しいのか、愉快そうに笑いながら近付いてくるウォルターからシャーロットを守るように、抱きしめる腕に更に力を込める。


「全く同じ言葉が自分に返ってくるなんて、皮肉なもんだな、シャーロット?それも愛しい愛しい婚約者様からの言葉だぜ」


くっくっくっと笑うウォルターは心底嬉しそうだ。

シャーロットが苦しがっているのも知った上で楽しんでいるのだろう。


「⋯どうしました?今日の先輩は、まるでロティに興味がなくなった様に見えますね」


「はっ、元々興味ねーよ、そんな奴。今日はあのイラつく小賢しい真似もやめたみたいで、何よりだ」


「何の話か分かりませんが、ロティに構わないならそれで結構です。どうぞお帰りを」


いつもに増して癪に触るウォルターの態度に、アイザックはそんな事より早くロティを安静にさせてやりたいと我慢を続ける。


「そう言う訳にもいかねーかなー。あんな真似までして、何か成果はあったかよ?センセイの容疑は固まったか?」


「余程、先生に個人的な恨みがある様ですね?襲撃者候補に先輩の名前も加える様、進言しておきます」


「はっ、バカ言うな。あんな三下、誰が相手にするかよ」


苛立ちを隠せなくなってきたアイザックは、どうすればこの邪魔な奴を帰らせることが出来るか考え始めた。

やはり物理的に無理矢理帰らせるのが手っ取り早いか、と好戦的な目をウォルターに向けた、その時⋯⋯


「相手にされない三下はアンタでしょう。舞台に立つ事も出来ない腑抜けは大人しく引っ込んでなさい」


「⋯⋯なんだと?」


まだ震えの止まらないシャーロットが、愉悦を含んだ笑顔で続ける。


「アンタは過去の人間だっつってんのよ、ウォルター()()


「シャーロット、⋯⋯お前⋯っ」


先程まで余裕を見せていたウォルターが怒りを隠そうともせず、シャーロットに詰め寄る。が、それを許すアイザックではない。


「⋯先輩、ロティに触らないでください。あと、見つめるのもダメですよ」


「はっ、⋯本っ当イラつく奴ら。⋯⋯だけどなあ、お前らがナニ企もうと真実は変わんねーよ」


冷静さを取り戻したらしいウォルターは鼻で笑うと、憎々しげに吐き出すように言う。


「真実、ですか?」


「ああ、犯人はセンセイだ。お前も聞ーてんだろ?センセイ、凶器を隠し持ってたらしーじゃねーか」


「ええ、聞きましたよ。発見時、先生が届け出ようとしたのを学園側が止めた、という事も」


それがどうした、と言わんばかりのアイザックを、小馬鹿にしたように笑いながらウォルターが返す。


「学園が醜聞を恐れてセンセイを止めることも見越してた、全ては計算の上、⋯だったとしたら?」


「だとすれば、先生が犯人じゃない証拠にはならないけど、先生が犯人である証拠にもならない、と言った所ですかね?つまり、その情報は何の意味も持ちません」


「意味はあるさ、センセイは怪しいってな。どーせ昨日襲われたってのも狂言だ」



どうあっても先生を犯人に仕立て上げたいウォルターに、いい加減相手をするのもウンザリしてきたアイザックが無視して帰ろうかと思案し始めると、胸元からシャーロットの更にウンザリした声が聞こえてきた。


「あ━━━⋯、先生も大概だけど。アンタはもっと最悪。本っ当、救いがないわー」


震えは止まった様だが顔色が悪い。

こめかみを揉んでいるのは頭が痛いからか、ウォルターに辟易しているからか。


「⋯⋯⋯もう、お前らの企みにはのらねー⋯」


シャーロット相手は分が悪いと踏んだのか、ウォルターは先刻までの勢いをなくして視線を外す。


「今更、何がしたいの?もうさ、今更、なんだってば」

「⋯⋯⋯」


ウォルターからの反応はないが、シャーロットの責め立てる言葉は止まらない。


「もうさ、とっくにお姉様の心にアンタはいなかったのよ?それを今更⋯⋯⋯⋯あ、⋯⋯あーっ⋯?」


ウンザリした顔から一変、何かに気付いたシャーロットは1人納得しては目を瞬かせている。

ウォルターは一瞬たじろいたが、それを悟らせまいと無表情に戻り、アイザックは気にした様子もなく、にこやかにシャーロットを見つめている。もちろん抱きしめている腕はそのままだ。


「あーあー、はいはい。あー⋯そういう事⋯」


シャーロットは相も変わらず1人で納得して頷いている。

いい加減焦れてきたウォルターが口を開きかけると同時に、シャーロットが声を立てて笑い始めた。


「はっ、あははははははっ、はー⋯⋯なるほどね?私はてっきり、先生を罪人に仕立て上げて、お姉様は見る目がなかったと貶めたいんだと思ったわ。自分を選べば良かったのにって」

「⋯⋯っ」


ウォルターの顔色がみるみる変わっていく。

それを見て満足気にシャーロットは続ける。


「でも違ったのね。思いを寄せていたのは先生の方でお姉様に断られた末の犯行だと、事実をねじ曲げてお姉様の恋情を無かったことにしたいんだ?」


ウォルターの歯軋りが聞こえる。

それでも何も発さないのは、何を言ってもドツボにハマると悟ったのか、単純に言い返す言葉が思いつかないのか、とにかく悔しそうに顔が歪んでいく。


「ま、どちらにしてもとんだ愚行だわね、あと、フツーにキモいから。お姉様が想いを寄せていたのはオスカー先生、その事実は変わらないってのに」


ウォルターの顔が引き攣る。

深い溜息とも唸り声とも分からない音が漏れ出ている。


「お姉様が名前を口にする事すら恥じらうのも、姿を一目見たくて学園の用事のない場所まで赴くのも、先生のためだけ」


そこまで言うとシャーロットは、とても素晴らしい発見をした様に晴れやかな顔を見せた。

そして哀れむような笑顔でウォルターに告げる。


「あらやだ本当、全く同じ言葉が自分に返ってくるなんて!ウォルター先輩⋯()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」



黙って聞いていたウォルターがようやく口を開いたが、それは否定の言葉でも肯定の言葉でもなかった。


「シャーロット、⋯お前⋯、本当、気味悪ぃ⋯⋯」


「はっ、何を今更。アンタはずぅーっとそう言う目で私を見てたじゃない」

「⋯⋯」


「恐ろしいんでしょう、私が?」

「⋯⋯っ」


くっくっとシャーロットが笑い、ウォルターは目を逸らすまいと唇を噛む。


「⋯化物が」


吐き捨てるような呟きを残して、ウォルターが店を出ていく。



アイザックが悲しそうな困ったような笑顔でシャーロットの頬に両手を添える。

そしてシャーロットの耳を優しく、けれど執拗に、指で弄る。悪い言葉など取り払ってしまえと言わんばかりに。


嬉しくてこそばゆくてシャーロットは思わず笑いが込み上げてくる。

それを照れ隠すようにアイザックの胸に顔を埋めたシャーロットは、つとめて明るい声を出す。


「うーん、ヘタレ野郎もああ言ってたことだし、あくまでも仮定の話で進めていた「先生が昨日襲われた」と言うのは、もうほぼ確定で良さそうね?」


いつもの笑顔が戻ってきたシャーロットの、頬を髪を背中を愛おしそうに撫でて、アイザックは額に口づけを落とす。


「そうだね、そして今日も襲われるんだろうね」


「角材のような物で?ふふ、⋯先生は何をもってして「確証」としようとしているのかしら?」


「ふふふ、生け捕り⋯、かなあ⋯⋯?無能な護衛が今日もそれを黙って見ているとは思えないけどね?」


シャーロットとアイザックはそれぞれ、先生の襲撃犯を、ある程度の確信を持って、予想しているようだ。

そしてどうやら、思い浮かべているのは同じ人物らしい。


「うーん、⋯⋯フラグ、折り足りなかったかしらね??」




そんな2人の心配を余所に、翌日もオスカーは前日と変わらない姿ではつらつと現れた。

それは大変良い事なのだが、何故か席に着くなり眉間のシワを揉んでいる。


「⋯昨日、襲撃に来たら捕まえてやろうと思っていたんだが、⋯⋯昨日は来なかったんだ」


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