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事件が解決したら憑依探偵令嬢と呼ばれてしまうのでしょうか  作者: モチダ


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「お前達は今すぐ身を引け」


オスカーは姿を現すやいなや、用件のみを簡潔に伝える。

その横暴ともぶっきらぼうとも言える態度を気にした風もなく、シャーロットは挨拶も前置きも省いて用件で返す。


「それは、⋯先刻からかばっているその右肩に関係があったりします?」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。ははっ、本調子が出てきたみたいだな、シャーロット。少しは元気になったみたいで安心だ」


「ふふふっ、先生。襲われるのは今回が初めてじゃないんでしょう?」


「⋯自慢じゃないが、こう言う風貌をしていると絡まれることはしょっちゅうなんだ。ま、教育的指導を兼ねて、キッチリ返り討ちにしてるがな」


ニカッと笑うオスカーの白い歯が覗く。

シャーロットも負けじとニッコリ笑って、質問を繰り返す。


「質問の仕方が悪かったみたいです。この2週間で、襲われたのは何度目ですか?」


「⋯アイザック、シャーロットを止めようって気はないのか?」


埒が明かないと、オスカーは矛先をアイザックに変えたらしい。


「大丈夫ですよ。ロティに何かある前に僕が盾になります」


一瞬、オスカーの顔が強張った。


「シャーロットがそれを喜ぶと思うか?」


険しい顔をしたオスカーが、低い声で苦しげに問う。

アイザックが答える前に、シャーロットが険しい顔と低い声で割り込む。


「ご心配なく。イジーに害をなした瞬間、相手をどんな手を使ってでも再起不能にします。私を庇ったイジーは公爵家の力を使って回復させた後、私自ら罰を与えますから」


薄く笑うシャーロットの背中を、アイザックが宥める様にさする。

そのまま髪を一掬いして口づけると、目線だけオスカーに向けて言う。


「まあ、実際の所はうちの護衛が黙って見ていませんよ。彼らは非常に優秀ですからね。僕だってロティをみすみす危険にさらす気はありません」


他力本願という訳では無いが、自分の力を過信せず、使えるものは全て使ってでもシャーロットを守る。

そうする事で初めて、シャーロットに好きな事をさせる事ができる。シャーロットを自由にさせられる。

アイザックはこれまでそうしてきたし、これからもそうするつもりだ。


「本当に私達の身を案じてくれているのなら、もっと他に話すべきことがあるんじゃないですか?」



シャーロットの言葉にオスカーは眉間のシワを揉むと、溜め息を吐いて、アイザックとシャーロットを交互に見た。


「⋯お前達は「真実が知りたい」、それで合ってるか?」


「はい」「ええ」


「それなら、尚更、今の段階で話すことは何もない。俺も憶測でしかないからな。⋯あと1日、待ってくれないか」


困ったように笑うオスカーに、シャーロットも困った顔で溜め息を吐く。


「⋯⋯先生知ってますか?そう言うの、死亡フラグって言うらしいですよ。⋯先生、死んじゃいますね」


「ああ、そんな風に言うことでお前がフラグを折ってくれたことも含めて、知ってる」


オスカーがニカッと笑い、シャーロットもニッコリと笑う。


「そんな風貌なのに、流行りの小説とか読むんですね」


「生徒からの没収品のチェックも欠かさない、真面目で頼りになる、教師の鑑だろ?」


「どこまでも「先生」過ぎて、哀れにすら思えてきますね。だけど、⋯⋯あくまでも先生という態度を崩さなかったんだから、最後まで、そのまま()()で頑張ってもらいたいところだわ」


途中からはオスカーに向けた言葉なのか、独り言なのかも分からない。シャーロットは表情を消してどこを見るでもなく、ただ、呟いていた。



「とにかく、余計な動きはするな。何なら今すぐ帰れ」

何度もしつこく言い聞かせるオスカーとは、翌日も同じカフェで落ち合うことを約束して別れた。

因みにオスカーの説得むなしく、2人はカフェに居座っている。


「⋯何で今更、先生が襲われたと思う?」


アイザックの肩に顔を埋めてシャーロットが呟く。

その頭を優しく撫でながら、アイザックは尋ねる。


「先生が襲われた事は、確定?」


「⋯そうよね、それじゃあ仮定の話。事件の日に先生の身にも何か起こっていた。仮に襲われたとして。事件から12日間、何もなかったのに、今、襲われた理由は?」


「事件から、12日、何もなかった⋯」


「ああ、これも違うわね。何もなかったとは言い切れない。事件後も襲われていた可能性だってある⋯」


顔を埋めたまま、イヤイヤをする様に頭を振るシャーロットの背中を、あやす様にトントンと叩きながら、アイザックは穏やかな声で続ける。


「でも、それなら2日前に会った時に、もっと真剣に止められていたんじゃないかな?」


深呼吸をして気持ちを落ち着かせたシャーロットは、アイザックの肩に頬ずりをする。


「そうね。一度この方向で進めてみましょう。今日になって改めての警告。しかも昨日は姿を現さなかったのに、今日はわざわざ姿を見せての警告。⋯昨日、何かあったと見て間違いないと思うんだけど?」

「同感だ」


シャーロットの頭を撫でながら、アイザックも思いつくまま口に出してみる。


「事件から12日⋯その間も何かしら動きはあったとして、それでも強く警告する程ではなかった。今更になって、先生が警戒を強めるほどの動きを犯人が見せた理由⋯」


「昨日先生を襲ったのは、事件と同じ人間と見て大丈夫?」


「事件と無関係の、個人的な恨みによる襲撃なら先生も隠さないんじゃないかな?一応可能性は残しておいても、大方、同一人物と見て良いんじゃないかと僕は思うよ」


そんなに簡単に他人を襲おうと考える人間が、ゴロゴロいられてはたまったものじゃない、と言うのがアイザックの本音である。

それではシャーロットを守るのが大変困難になってしまうではないか。


「同感よ。だったら今更犯人が動いた理由⋯⋯⋯事件後ずっと閉じこもっていたのに、最近になって外に出てきた人間、⋯とか?」


事件後シャーロットは部屋から出ようとしなかった。

数日の間アイザックも朝から夜まで一緒にいてくれたが、5日目から午前中は学園に行き、午後からシャーロットのそばにいてくれる様になった。

一度だけ、学園に行った。ドロシーの発見現場を見るためだった。

それ以降ドロシーとなってオスカーと会ったあの日まで、シャーロットは屋敷から出ていない。

そのシャーロットが外に出た事で、犯人を刺激したのだとしたら…?


「先生は、その人間のせいで⋯⋯」

「おい!お前達、まさか僕を疑ってるんじゃないだろうな!!?」


シャーロットが顔をしかめながら、声のする方を向く。

そこには、今日もまぶしいのか具合が悪いのか、しかめっ面のエリオットが立っていた。


「⋯昨日、僕も襲われたんだ!!これを見ろ!」


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