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「うーん、ロティ?僕からすれば3日ぶりのロティだよ?もう少し堪能させてほしいなあ」
抱き支えられアイザックの首に腕を回した体勢から、身体を起こしてシャーロットは半眼になる。
「⋯どうせその間も、軽めのイチャイチャ位してたんでしょう?」
「まさか!あんなにあからさまにロティじゃないのにイチャイチャ出来るわけないよ」
悲壮感漂うアイザックの顎に手を添え自分の方を向かせると、シャーロットは小首をかしげて微笑む。
「あら、イチャイチャしてないの?」
「してない」
「イチャイチャは、してない⋯けど?」
「⋯仲良しアピールは、した」
にんまり、と聞こえてきそうな笑みを浮かべたシャーロットは、アイザックの頬を両手でひとしきり揉むとソファに座り直した。
「はい、3人に会った時の事を教えて?」
「⋯⋯⋯ロティ不足で話す元気が出ない」
「ふふ、ほらイジー、おいで?」
拗ねるアイザックを優しく呼ぶと、シャーロットは自分の膝をポンポンと叩く。
「膝枕したげる。いっぱい頑張ってくれた、ご褒美」
「ふふ、やっぱり僕のロティは天使だ」
「━━━━なるほど、ね。多分、先生が会っていないと答えたのは、一応の警戒と、あとは私達を守るため、でしょうね。まあ、本当に会えなかった可能性もあるけどー⋯」
眉間のシワを揉みながらシャーロットが言う。
「⋯⋯前にやった考察のおさらいを兼ねて、ちょっと考えを整理してみようか」
「んー⋯っ、なんかやだ。イジーに悟られるなんて⋯っ」
「僕だから気付いたんだよ。ほらほら、まだ頭がボンヤリするんだろう?」
膝枕から離れようとするアイザックを無理矢理押さえつけるシャーロット。
「イジーの髪の毛を触らせてくれたら頭が冴える、かも」
「ふふ、良いよ。僕は役得だからね」
宣言通り、膝枕継続中のアイザックの髪を梳きながらシャーロットは続ける。
「待ち合わせをしたけど実際には会えなかった、場合。先生がそのままにするとは思えない。お姉様の安否確認のため屋敷に来るなりしたはずだわ。但し、先生が動けなかった可能性もある」
「拘束されていた、とか、負傷していた、とか?」
気持ちよさそうに目を細めながら、アイザックも補足を入れる。
「そう。そして待ち合わせをして会うことも叶った、場合。会っている最中に襲われたのか、別れたあとに襲われたのか⋯」
「学園でドロシー嬢が発見されている事を考えると、襲われたのは学園か、その付近の可能性が高そうだ」
「ええ。先生と別れた直後に襲われたなら、先生が気付いたと思うんだけど。⋯例えば、お姉様が気持ちを落ち着かせるために1人で学園に残った、と言う可能性も捨てられない」
「ドロシー嬢が1人になって気持ちを落ち着かせる必要があった、と?」
おや、と言う顔をして尋ねるアイザックに対し、肩をすくめる仕草をしてシャーロットは答える。
「⋯先生が、お姉様の告白にいい返事をしたとは思えないからね」
「ただ、そうだとしても。先生ならドロシー嬢が無事に家に帰るところまで見届けると思うな」
「それは私も同感よ。だから、会っている最中に襲われた線が濃厚⋯?」
「因みの因みに、先生が襲った可能性は?」
アイザックの髪を梳いていた手を一旦とめると、今度は指でクルクルと遊びながら、シャーロットは苦笑して言う。
「愚問ね。先生がお姉様を守ることはあっても、危害を加える事はないわ」
「全くの同感だ」
「会えたにしろ会えなかったにしろ、お姉様の待ち合わせ相手が先生であるなら、先生の身にも何か起こったと考えるのが妥当だけど⋯」
「そんな話は聞かないね。ドロシー嬢の事件と同日に何かあれば、それなりに話題にのぼりそうだ」
シャーロットが髪をクルクルしては指をすべらせる。
その度にハラリと落ちてくる髪の毛にくすぐったさを感じながら、アイザックはその先に続けられるであろうシャーロットのセリフを予想していた。
「先生に、話を聞きたいわね」
「昨日は呼び出していないにも関わらずこちらの様子を伺いに来てたから、接触は簡単だと思うよ」
「あらあら、お姉様は愛されているわね。⋯⋯⋯⋯⋯今更と言うべきか、今でもと言うべきか」
アイザックの髪で遊ぶシャーロットの手が完全に止まってしまった。
名残惜しさを感じながら、アイザックは身体を起こす。
「ロティ、怒らないの。先生だって苦しんでる」
「⋯男同士分かり合える何かがあるのかしら?だったら私も女同士、お姉様の代わりに怒る権利があるわ」
アイザックはシャーロットの手を取ると、その指を、手の甲を、掌を、愛おしげに撫でる。
「そうだね、ロティは怒って良いよ。先生を殴る時は僕に教えて、押さえててあげるから」
「⋯⋯先生は大人しく殴られてくれると思うから、そんな生ぬるいのじゃダメね。もっと別の方法を考えないと」
「いいねロティ、満足のいく制裁を思いついたら一番に僕に教えて」
まるで、楽しい悪戯を思いついた子供のように笑うアイザックに、シャーロットは溜息を1つ吐いて、笑う。
「⋯降参だわ、イジー。愛らしいイジーに免じて先生の苦しみとやらを尊重してあげる」
「ロティは優しいなあ」
「イジーは私に甘すぎるわ」
シャーロットはアイザックの手を引き寄せて頬ずりをする。
その温かさをしばらく堪能してから、アイザックを見上げると不敵に笑った。
「そうと決まれば。ランチデートしましょう、イジー!そして午後は今日もそのカフェでまったりデートよ。⋯誰が絡んでくるか楽しみね」
久しぶりのロティからの外出提案に、アイザックは、3日前までのロティを思い出していた。
ドロシー嬢でいた間に、顔色も随分と良くなった。
本当に、ドロシー嬢でいた期間は期待以上に役に立ってくれた⋯と、自然に天を仰ぐ自分がおかしかった。
死後の世界を疑いも信じてもいないと言ったのは、自分なのに。
アイザックとシャーロットはランチデートもそこそこに、カフェに移動した。
いつ、絡みに来られても良いように。
「ロティの予想は?誰が絡んでくる?」
アイザックが無邪気な笑顔で尋ねると、シャーロットは苦虫を潰したような顔で答える。
「んー。あいつは間違いなく来るわね。ウォルター、⋯先、⋯輩」
「僕の前では、無理して先輩呼びしなくて良いよ」
あははと笑うアイザックに、片眉をあげるシャーロット。
「そう?じゃあお言葉に甘えて。あの、プライドだけバカ高いヘタレ野郎」
「ふっ。いい得て妙だね、ふふ⋯っ。流石は僕のロティ」
大変お気に召したらしいアイザックは笑いが止まらないようだ。肩が震えている。
「因みにエリオットは?」
「初恋こじらせモンスター」
「く、ふふ⋯っ、じゃあ、先生は?」
シャーロットは、はて、と悩んで眉間のシワを揉む。
「んー?うーん、⋯先生は先生。良くも悪くもお姉様の憧れの先生。先生として守ってくれて、先生として大切にしてくれて、先生としての距離感を保って、先生として受け入れることをしなかった。⋯先生じゃなくなった時の、お姉様に向ける顔を見てみたかったけどね」
激甘溺愛タイプか、意外と亭主関白タイプか、などと噂をしていれば、例えに漏れず影が差したようだ。
「悪いことは言わない、お前達はすぐに身を引け」




