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「僕が「ロティを裏切る事になっても」と言った件ですけどね。ロティはドロシー嬢になっている間、僕に、普段ロティに接している風な態度を控える様、頼んできたんです」
楽しい話題を望んだ私ドロシーに、例に漏れずロティの話を選ぶアイザック様。大正解です。
「もしくはロティ演じるドロシー嬢に情報だけ与えて、あとは離れているように、と。ドロシー嬢として犯人に揺さぶりをかけるには、ドロシー嬢だと信じてもらう必要がある。それには僕の存在や態度が邪魔になる、と言って」
ロティの言う事はもっともな気がします。
アイザック様はロティの事が大好き過ぎますから。
「だけどそれを僕は了承しなかった。犯人かも知れない相手にロティ1人で会いに行かせるなんて危ないことはさせられないし、ロティがそばにいるのに触れちゃいけないなんて。ねえ⋯?」
まあ、ロティの可愛らしさの前ではついつい触りたくなる気持ちも分かります。
そして、もしかして3人と会っていた時の、イチャイチャスキンシップ改め仲良しアピールは、犯人かも知れない相手から、守ろうとして下さっていたのでしょうか⋯⋯?
「それでもロティは、僕が約束を守ると信じていたから、⋯だからあのセリフは、僕はロティに触るのを我慢するつもりはない、と言う意味で言ったんです」
拗ねるように言うアイザック様。
これだけロティの事が大好きなアイザック様に、お触り禁止令だなんて、それは酷というものです。
いくら可愛いロティの頼みでも、きけないことだってありますよね。
「うふふ、⋯なるほどなるほど、そして実際に⋯」
「ええ、実際には我慢しましたけどね」
「⋯⋯⋯⋯⋯我慢、してましたか⋯?」
「え?我慢してたでしょう、僕?」
「我慢⋯⋯」
「ものすごく、頑張りました」
「⋯⋯⋯⋯⋯はい、してました。我慢。」
ご本人が言うのだから、きっと、そうなのでしょう。
ところでそんな、ご本人が仰るところの多大な我慢を強いてまで決行されたこの「ロティ、ドロシーになっちゃった!?」作戦は、何かしら、少しでも、成果を上げることは出来たのでしょうか⋯?
「⋯⋯アイザック様。⋯私は、犯人探しに少しは⋯お、お役に立てたのでしょうか⋯?」
アイザック様に「かなり不自然なロティ」とダメ出しされてしまった以上、もしかしてお役に立つどころか、お邪魔をしてしまった可能性もあります。
申し訳がなさすぎます⋯⋯っ
「ええ、勿論。期待以上ですよ」
期 待 以 上!
そこまであからさまな嘘を、私が信じると思われているなんて、アイザック様の中の私、チョロすぎじゃありません??
「⋯アイザック様は、嘘がお下手ですね」
「心外だなあ、嘘じゃありませんよ。本当に、ドロシー嬢のお陰で上手く揺さぶりをかけることが出来たと思います。これであなたの大切な人が守れます」
「!??⋯アイザック様、あなた⋯っ、まだ隠し事をなさっていたのですか⋯っ」
「隠していません、聞かれなかっただけです」
「⋯⋯⋯⋯っ」
涼しい顔でのたまうアイザック様を、なんて屁理屈屋さんなのだろうと恨みがましく見ると、降参と言わんばかりに両手をあげるポーズをなさいます。
「⋯⋯ごめんなさい、僕が悪かったです。⋯ロティの顔でそんな悲しい顔をしないでください。⋯大丈夫ですよ、僕が必ず守ってみせますから」
やっぱりロティは何か危険なことをしようとしているのでしょうか。
私は止めるべきではないのでしょうか。
「⋯⋯もしかして、ロティが何か危険な目に⋯?」
「ふふふ、ロティを危険な目に合わせる奴なんてこの世には存在出来ません」
⋯⋯何でしょうか。
いつもならまぶしくて堪らないアイザック様の笑顔が、なんかこう、黒⋯、いえ、ドス黒⋯いえ、私、何も見ておりません。
「ワア、ソレハトテモ安心デス。⋯⋯⋯えっと、それでは、先生が⋯?」
「先生は無関係ではありませんからね、⋯ですから、守ります」
アイザック様は、先生に関する何かをご存知なのですね。
そして、それを私ドロシーに知らせるおつもりはないのでしょう。
お聞きしたところで私に出来ることはありませんし、心配を抱えたまま消えていく事を避ける為のお心遣いですね。⋯感謝して受け入れます。
「⋯私にはもう、アイザック様を信じることしか出来ません。どうか、よろしく頼みますね」
私ドロシーがそう言って頭を下げると、アイザック様は綺麗な笑みでしっかりと頷いて下さいました。
本当は、
「私が、先生を好きになったから、今回のことは起きたのでしょうか」とか、聞きたいことは他にも沢山ありました。
「アイザック様、あなた、ロティと仲の良い私にヤキモチを妬いていらっしゃいましたよね。私が気付いていないとお思いでしたか?」とか、言ってやりたいことも、他にも沢山ありました。
ああ、話し相手はロティじゃないのに、こんなにも時間が足りないと思うなんて。
「ロティはよく言っていました。素直で純粋で泣き虫なのはお姉様の方だって。お姉様の前でだけ、自分もそんな女の子になれるんだ、って」
「アイザック様の前では、⋯ロティは違うのですか?」
「僕から見たロティですか?そうですねえ、…聡明で愛情深くて、照れ屋で頑固で、自分を顧みない所があって、強くて弱い、綺麗な女の子⋯、ですかね」
⋯⋯⋯⋯⋯こちらから聞いておいて何ですが
なんて幸せそうなお顔でお惚気になりやがるのでしょう。アイザック様。
⋯⋯少々、意地悪を言ってやりたくなっても仕方ありませんよね。はい、ありません。
「私と最期に話をしたのがあなただ、と、ロティに一生恨まれてしまうのではなくて?」
「一生分のロティの嫉妬を僕が独り占めできるなんて幸せですね」
ロティなら何でもご褒美になってしまうのですね。
ごちそうさまです。
「⋯⋯でも、泣かれるのはやっぱり堪えますねえ。とは言っても、僕のいない所で泣かせるつもりもありませんけど」
「⋯ロティは、アイザック様の前で泣きますか?」
「ロティは認めないだろうけど、ロティは泣き虫ですからね」
「⋯ロティは、⋯⋯⋯泣いてしまうかしら…」
あんなにも沢山泣かせて、また、泣かせてしまうのかしら
「泣いてしまう、でしょうねえ⋯」
「アイザック様、そこは嘘でも「僕が泣かせない」と仰るべきでは?」
「ドロシー嬢曰く、僕は嘘が下手らしいので。それに、ロティは泣いても可愛いですから」
「ふっ、⋯うふふふふっ」
泣き虫なロティ。
もう抱きしめてあげられないのがとても辛いわ。
だけどもう、ロティには安心して泣ける場所があるのね。
少し寂しいけれど、良かったわ。
本当に本当に、良かった。
「アイザック様」
ロティ
私は死んでも、ずっとロティが大好きよ。
ずっとずっと、大好きよ。
「どうしました?」
だから、ロティの泣き場所を譲ってさしあげたアイザック様に、満足気な笑みで言ってやるの。
「アイザック様は本当に、ロティが大好きですね」
意識を失いソファに倒れ込むシャーロットに、アイザックは慌てて駆け寄る。
アイザックが抱き支えると、どうやら意識を失ったのは一瞬らしい。再び目を開けたシャーロットに安堵し、囁く。
「可愛いロティ、よく顔を見せて」
「⋯あなたの愛らしさには敵わないわよ、イジー。⋯⋯ただいま」
そう言ってシャーロットはアイザックを抱き寄せ、頬に口づけた。
「おかえり⋯っ、僕のロティ」
零れんばかりの笑顔のアイザックに、シャーロットも笑顔を返す。
「それで?あの3人には無事に会えた?」




