29.すごいだろっ
「どうしたものじゃろうか」
国王は困っていた。
自慢の娘は襲われて、そのことにより例の白髪の女性にどやされたからである。
「しかし、娘の嫁入りまではあと十年ほどあるからのぉ」
レイの住むリングランド王国は国王がいて、王子が二人、王女が一人いた。
そして、その娘は数年前に内戦で支援した他国と友好を深めるという目的で政略結婚が組まれていたのだ。
しかし、相手先が少し政情が不安定であったこと、そして後見人となった貴族が悉く問題しか起こさなかったため、立場が非常に危なかったのだ。
今回も祭りに乗じて、暗殺計画が練られるほどである。
力のなく忠誠心のある貴族は守ることができないが、力のある貴族は利用価値がなくため守ることすらしない。
だからと言って、国王自身が全力で守るにも自身に万が一があった時にはどうしようもないので早めに後見をつけたほうがいい。
「どうしたものじゃろうか」
王女、齢4歳にして、政治的な困難が待ち受けていた。
◇◇◇◇
ナレーターは見ていた。
白髪の女性が国王に向かって怒鳴っていたのを。
そして、ナレーターは思った。
もしかして、この人、すごい権力持ってんじゃね、と。
普通、国王に怒鳴ったら、処刑ものだろう。
まあ、この人だったら逃げ出してしまえそうであるが。
白髪の女性はというと、怒鳴りつけた後、近くの廊下の窓から飛び出していた(ナレーターはもう危険だとは思わない)。
そして、屋根を何棟か飛び越えると、そこそこ広い敷地の学園らしい施設に入り、その中の一番高い建物に向かって飛んだ。
そして、最上階の窓に来ると、少し外から窓をいじると、窓を開けた(なぜ外から開けられるのか、ナレーターは疑問に感じない)。
そして、その女性は叫んだ。
「久しぶりだなっ。先生っ」
「わっ。なんなのじゃ?」
それはそうだろう。ナレーターも状況が掴めない。
「フリードリヒ先生!久しぶりだなっ」
「やかましいのじゃ。お主か。アポをとって、正面から来れば良いものを」
「しっかりと手土産も持ってきたぞっ。王城の菓子だっ」
どうやら、ナレーターの知らない間にパクってきていたようだ。
「そうか、それはよくやったのじゃ。して、お主はなぜ王城にいっていたのじゃ?」
「うむっ。用事があったからなっ」
その用事を聞きたいのではとナレーターは思ったが、向かい合っている幼女はその説明で何かを心得たかのように頷くと、話を進めた。
「それでは、なぜわしのところを訪れたのじゃ?四ヶ月前にお主が王都に来た時になぜ訪れなかったのじゃ?」
「いや、あの時は私がいることが秘密だったからなっ。今回はしっかりと来る予定になっているからなっ」
ナレーターは意味がわからなかったが、ふむふむと頷いておいた。
「それじゃあ、私の弟子の自慢話と行こうかっ」
「わしの話は聞かぬのじゃな」
「ちょうどこれくらいの身長で、今魔法や剣術の基礎を叩き込んでいるっ」
女性は腰ほどのところを手で指し示した。
「火魔法以外の初級魔法は全て無詠唱で唱えられるぞっ。あっ、あと師匠が書いた分かりずらい本を読んで自分で魔法を習得していたぞっ」
「人の本を本人の前でけなすでないのじゃ。うむ?弟子はそれぐらいの身長なのじゃな?」
「そうだぞっ」
「それじゃあ、今何歳なのじゃ?」
「確か、4歳か5歳ぐらいだっただと思うぞっ」
「そやつは天才なのじゃ。神童なのじゃ。わしが直接教えてやるのじゃ」
「いや先生っ。あなたは忙しいだろっ」
「こんな学園長のようなお飾りは辞めてやるのじゃ。今すぐ、そやつの場所を吐くのじゃ」
珍しく少し白髪の女性が焦っているようだった。
「さあ、さあ」
「それじゃあ、私は、これくらいでっ」
女性は窓から飛び出すと、一瞬で豆粒ほどの大きさとなってしまった。
「待つのじゃ。場所を吐くのじゃ」
そう幼女が叫びながら、女性めがけて、たくさんの魔法を放った。
とある日の王都の天気
晴れのち、魔法の嵐。
※頭上に魔法が落ちることがあります。注意して過ごしましょう。
簡単に解説(''◇'')ゞ
後見
力のない人物を支援すること、ぐらいのニュアンスで使っています。




