19.ランランラン、ラン?
走る音。
例によって師匠からの夏休みを言い渡されてから一週間。
俺は毎日素振りを一万回、魔法を無詠唱で唱えること千回、村の周りを走り込むこと百回をこなしている。
もちろん、師匠のところにいた時とは違い、魔法を打って気絶していると、少しやばいやつに思われるかもしれないので、五十回唱えたら、素振りは五百回、走り込みは五周をするサイクルを一日に二百回やっている。
最初の数日は、村人も不審がっていたが、今ではあまり気にすることではなくなった。
村長さんと話し合い、少し村から離れたところで魔法を唱えたり、素振りを行っていいということになった。
そして、走り込みでは、妹のクラを背負うようになった。
以前、師匠に修行に行く前に走り込みをした時同様、妹をしっかりとおんぶ紐もどきで縛って、走り込む。
そうして、一週間が過ぎ、ようやく少しだけ例のルーティンに慣れてきた頃。
村の周りを走り込んでいるとき、遠くから、何かが向かってきているような感じがした。
師匠の家に通い出してから、少し森の様子がわかるようになってきたのだ。
少し大型のものが動いていると、ほんの僅かであるが小さな虫がその方向から逃げていたり、逆に小型のものが動いていると、音はあるがあまり小さな虫は動いていないといった感じだ。
だが、小型のものがいるような感じがするが、音があまりしていない。
初めての感じだ。
奇妙に感じた俺はその場からできる限りそれを刺激しないように、そっと村へと戻っていく。
そうするとそれがこっちに気づいたのか、全速力でこちらに向かってきた。
走る、走る、全速力で走る。
妹のクラだっているんだ、絶対に逃げ切ってやると思った瞬間。
俺は、ヒョイっと持ち上げられるような感じがした。
「みぃつけたっ」
少し甲高い、女性の声だった。
聞き馴染みのある声だと思って、声のある方を見ると、
「ただいまっ、レイくん」
サラ姉がいた。
彼女が、やってきた。




