変身しているか元に戻るか、それが問題だ
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
セイランさんの設定のひとつを公開です。マーノ・ネーラ(アメリカ合衆国にかつて実在した脅迫行為)は関係ないです。
お日様の様子からすると、午前中の半分が過ぎたくらいの時刻。
集中しすぎたテイ=スロールは、村にあるスロール家のおうちで仮眠をとることになった。アタシは盛って来てもらった食料をもりもり消費して、体力を回復した。
うつらうつらしてるメバルさんを放置はまずいってんで、カーリといっしょに『祖獣の宮』に連れて行く。
アタシは幻獣姿だから、道を歩いてるひとや、作業してるひとまで、手を挙げたり目礼してくれたり。それぞれに敬意を示してくれて、なんだか落ち着かない。
……だってつい昨日まで、その辺の冒険者だったもん。
カーリお姉さんは落ち着き払って、にこにこしながら顔を向けたり、ちらっと手を振り返したりしてる。それを見ながら、アタシも軽く頷いたり、触腕を振ったりするようにして。こういうのに、追々慣れていくべきだろうなぁ。
皆がにこにこしてるのって、カーリとアタシの触腕に両方から支えられて、ずり落ちないように載せられてるメバルさんのせいもあるかも知れないんだけど……。
二階のベッドに僧侶を降ろして、ようやく、今日これからの予定をカーリと相談することに。
「わたしは今日いちにち、仕事しちゃだめ、って言われてるのだよね。」
「昨夜あんだけパワー使ってたんだからそりゃそうでしょ」
「マーエがここに居るうちに、誰かが呼びにくるかもよ?」
「来るかなぁ」
とか言ってるうちに、ドアをノックする音が響く。ほらね? って感じに微笑むカーリお姉さんを置いて、アタシが応対に出た。
「あら、まだ幻獣姿だったの」
「テイ=スロールのお姉さん?」
という、ちょいと意外な来客だった。
キッチンを借りてお茶を淹れ、テーブルに持って行って一緒に。といってもアタシは立ったまま、セイランさんは座って。一口すすると、
「書類仕事をお願いしようと思ってきたの」
と身を乗り出してきた。
「お茶を淹れられるなら、ペンだって持てそうに見えるわ」
「そこまで手が足りないの?」
「足りないの。報告自体は沢山上がって来てるんだけど、何度言って聞かせても形式守ってないとか、書いた字が読めないのとかいろいろで……」
お茶を手の中に持ったまま、首を振るセイランさん。山のあちこちに調査の手が入ってるのは聞いてたけど、後方の処理も大変みたい。
「なら手伝ってみようか? この(といって触腕を振ってみる)手で書けなくても、書類整理や聞き取りの手伝いくらいはできると思う。」
言ってる間に、横の椅子に腰かけてくる女がひとり。
「それかヒト姿に戻ったら?」
「カーリ姉さん」
できるんならそうしたいけど……というニュアンス込めて呼ぶと。
「できるできる」って言って、首の後ろを指さした。
「この辺にあるもうひとつの体、ヒト形態のほうをね、引っ張り出して上から被るような感じ。」
「……着替え感覚」
「そんな感じでいいんだよ。獣人たちだって、真獣変化できるひとはそう言うよ?」
「聞いたことはあるけど!」
アタシが体験したわけじゃない。
でもカーリお姉さんは真剣だった。
「ヒト形態に戻る時のための『物語』は聞いたことある? ないかな?」
「ない、と思う。」
「そうだろうとは思った。お姉さんが語ってあげよう」
お茶をすすりながらそれを聞いたセイランさんは、「私が横で聞いてもいいものだろうか」と首をかしげている。
カーリ姉さんは平気平気、と頷く。
「ヒト族なら問題ないと思うよ。他所で言いふらさないと約束してくれるなら」
「それなら、約束しよう。」
そう言って、セイランさんは手袋を脱いだ。両方の手のひらをこちらに向けて、
「この≪黒手≫にかけて」
宣言と同時に、手首から指の先まで、ちょっと艶のある真っ黒になった。黒手組、知識にはあったけど、本当に目の前にしたのはこれが初めて。
「……くろてぐみ!」
「そう。スロール家の商いを担う者として、『決して違えぬ契約の護り手』の誓いをたてた。だから、私がこの手にかけて誓ったことは、破られることは無いと思ってくれて結構」
真っ黒なままの手が、また手袋に収まる。
「ありがとうねー」
カーリお姉さんは、咳ばらいを一つすると、語り始めた。
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
本作世界での黒とは『何物にも染まらない』ことから、正義、あるいは厳格な規律を意味します。
逆に白は『簡単に汚れる』ことから、堕落、悪に繋がります。
お読みいただきありがとうございました。




