夢物語のちから
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
お前が女神をやるんだよ!回です。
鼻血がでそうなくらい負荷かかってたのに、実際には身体何ともなくって、すごーくお腹が空いて、胃のあたりが痛い。
「分かってたから用意しておいたわ!」
得意顔のお姉さんが、手押し車一杯の薄焼きチャパティとか、干し魚のスープ、具のいっぱい積み上げられたボウルといった食品を持ってきてくれてた。有難くもっしゃもっしゃ食べていると、カーリお姉さんもにこにこ見つめてきて。
口の中が詰まってたんで、目だけで『ありがとう』ってやると、
「ふふふ。幻獣形態のエネルギー補給はご飯が一番手軽なのよ」
って教えてくれた。
「精神のエネルギーが減ったら、身体のエネルギーから補充することが簡単なの」
「簡単、てことはその逆は?」
「私は簡単にできる、けど、他の幻獣にも同じかどうかは言えない。」
「そうでしょうねー。」
どこに消えてるんだってくらいの大量の食糧が、どうなったかは想像できるけど、アタシが同じことできるんだろうか、というと、うーん。
でも、お腹が空いた感覚はもうなくなってたし、気力も回復してた。
多分大丈夫だと思う!
大丈夫じゃないと思うのは、これからだ!
それというのも、ボリスとヨアクルンヴァル、リクミさんと女シノビさんは、山全体のルートと安全確認に行ってしまった。あんだけ高い魔力にさらされて、一気に成長した樹木だらけなので、既存の伐採ルートは破損して当然。魔獣、モンスターの出現も警戒しなきゃいけない。おいしい(お金的にも、味という意味でも)ものが育っているかも知れないけど早い者勝ち、発見して印をつけ、此処はコレンドリル村の財産ですよ、って主張しておくこと。
といったあれこれが、お祭りの翌日からの大仕事になる。特に戦闘できるひとたちは大忙し。レンジャーもそうで、探索できて戦えるシノビたちもそう。
カーリお姉さんは昨夜頑張りまくったぶん、今日一日はお休み扱いのひと。メバルさんは、山のほうではなく、ウーズマスタリーの秘儀に係る大仕事をしてたので、疲れてる。早い話が、小さい怪我を治すくらいはできても、集中力を欠いているので戦力外。
そしてテイ=スロールはそろそろ限界。日焼けした顔に、疲労が見え隠れしてる。
だから。
……大丈夫じゃなくても遣らなきゃなのだ!
≪よい夢を見よ≫魔術のために頭をひねって、考えだしたのは概ね既存の講談や小説や演劇のそのまんま。あまりそのまますぎると、バレそうなので、程よく(これが難しい!)あり得そうな感じに加工した。
最初は神様的な何かの振りして、
「聞こえますか……聞こえますか……お前の魂は本来この世界に属するべきではない……」
「えっ!?」
「そなたを呼んだのはわたくし、女神ディアフォスアガピ。地球を去りしそなたを見失って幾年、やっと声が届きましたね」
と呼びかけ。ディアフォスアガピというのは、古典演劇に出てきた『光を通しくる無償の愛』みたいな意味の聖女の名前、その辺のひとは知らない。「マニアックな所を持ってきたね」というのはメバルさんのコメント。
「数多くの才と知識を持つ魂よ、そなたの真の名は何という……見失ってしまった際、そなたが別の名を受けて転生した故に時間がかかってしまった……許してたもれ……」
半分は念話みたいな形で意識を観察してるので、カラジの意識が喜び一色になるのもよく見えた。
そうでしょうよ、自分は特別。自分はこんな場所にいるべきじゃなかった。そういう考えを拾い上げてくれるんだから。
その後は、これこれこういう『才』と『強運』を授けましょう、何故なら世界は今、破滅の危機に瀕しており、定命の者たちは誰も太刀打ちできそうにないからです、とこれまた過去の名作からの受け売りで反応を探りつつ。
反応を……うーむ。
相手に絶対悟られちゃダメなのはわかってるけど、無性に苛々するなこれ。
『死ぬほど嫌な出自で、ミスを常に発見され、周囲から軽蔑されるだけの一生』を夢見させてやりたくなるぞ。
魔術のひな型を説明してもらって、それをアタシは自分の持ってる力で作り出し、投射する。
その時『何を見せるか』は術者次第。勝手に内容をひどいものにしちゃうことが、実はできたりする。
悪いし、自分勝手な考えなのはわかってる、なのに、それはとても強い誘惑だった。
だってカラジだよ?
何を持ちかけても対価や何かの譲歩がなければ動かない、そのくせ仕事はミスが多い、指摘されたら周りが悪い環境が悪いと自分の非を認めない。
そーゆー嫌な奴に、ぴったりな人生を歩ませるチャンスですねこれ!
という誘惑を、耐えた。アタシはやっぱり目的を忘れることはできない。それに、隣でちょっと船漕ぎかけては、カーリお姉さんに揺さぶられてるメバルさんを、真っ直ぐ見られなくなるような真似はしたくない。
育て親が言ってた通りだ。嘘をついたら、それを隠すためにもっと嘘をつく羽目になる。家族になろうって相手に、嘘はつきたくない。
だから、相手に絶対悟らせないように、ピンチを挽回し格好良く立ち回り女の子には好意を抱かれ、解らないことは黙っていたら凄いデキるヤツって方向に誤解され、最後は(本人希望通り)死後、女神のもつ一輪の花になる……という。
「マニアックな所を持ってきたね」
ハイ、そういう古典があったので参考にしました。
導入部分で(そういう古典があったの!)
「もし……もしもですが、如何なる知でも武でも歯が立たない危険が迫った時は、わたくしの名を呼びなさい。必ず助けてあげます。……その代わり、生命を全うしたのちは、わたくしを飾る花の一輪になってもらいますよ。」
て言ったら、ニヤニヤ?にんまり?照れてるっていうか、『女神も惚れさす俺?』という自惚れた思念が伝わってきたから。
そのように致しました。
すっごい満足した思念が伝わってきました。
この時点で、でっかいウーズの管理はメバルさんが交代済み。アタシはメバルさんに一つ頷いて合図。僧侶と≪ミズスマシ≫の間に、何かの念話術みたいな『ちからのやりとり』が感じられた。
そうして、強い夢見の中で幸せに包まれて、今度こそ≪異界の魂を持つもの≫は消滅したのでした。
「あーーもーつっかれたーーー!」
「まあまあ、これで応報の神様を刺激せずに、いい人生送った記憶と共に去ってくれたんだから。良いじゃないの、さ、食べて食べて!」
「有難う、お姉さん……」
手押し車に残っていた三分の二も、全部平らげちゃったよ。
手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。
そういう古典の存在、作者は寡聞にして存じませんがメアリー・スーやゲイリー・スーな二次創作でならよく目にしました。
お読みいただきありがとうございました。




