↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残り銀貨500枚からの再スタート  作者: 切身魚/Kirimisakana
183/188

ひと段落ついてお茶の時間

手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。


さーてカラジをどうしようかな、のターンです。

 ゆっくりのったりと進むウーズと一緒に村はずれに戻ってみると、機人の三人組はもういなくなってた。

 代わりに、カーリお姉さんと、メバル(お母さまと呼ぶべきか悩ましい)さんが居た。

 カーリお姉さんは手押し車に籠やら水袋を載せてて、篭からは、焼いた肉をはさんだ薄焼きチャパティやら、甘い乾果いりの菓子やらのいい匂いがする。

 匂いがした途端、アタシのお腹がぐうっと鳴った。

 あはは、と笑うカーリお姉さん。


「お腹すいたでしょー? 幻獣のちから使うのは、本当に体力勝負よ。食べて食べて!」

「錐葉モンマの茶もある。暖かいから皆で飲もう」


 メバルさんの声はちょっと疲れてる風だった。

 ようやく日差しが暖かく感じられるようになった草の上に、皆で並んで座って飲食。集中保ってないといけないテイ=スロール以外はみんな、≪ミズスマシ≫に背を向けてた。だって半透明な中で、内臓とか目玉とかが蠢いてるんだもん。

 といってもテイ=スロールだって昨夜からあまり眠ってない筈。


「そろそろ限界じゃないかなぁ」


 アタシのつぶやきに、カーリお姉さんが反応した。


「そうね。それに目玉がずーっとマーエのこと睨んでるし……」

「気にしないようにはしてるけど、好ましいとは思ってないよ。」


 そうなのだ。半分溶かされつつ(きっとすごく痛いはず)も、カラジの目玉はウーズの中から睨みつけてきていて、それは気配で分かってしまう訳で、あーもう殺して片付く話ならさっさとやっちゃいたい。

 でもぶっ殺したら今度は何に生まれ変わることか。そして、どんなモンスター化することか。そこが不確定要素すぎる。

 うぬぬー、となっていると、メバルさんが横にやってきた。


「マーエ。私は集中力をたくさん使って疲れた。代わりで、君にやって欲しいことがあるの。頼んでいいか?」

「それってどんなこと?」


 背中に刺さる視線を無視しながら聞き返すと、メバルさんは声を小さくした。


「≪深淵に眠る御方≫は水と夢の神様。後ろのウーズの中身に、いい夢を見させてやること。やり方はメバルが教える。」

「うん、やる」


 という話をすると、テイ=スロールは心底からほっとした顔になった。魔術師が言うには、ウーズから来る「消化中の生物」の情報を見ながら、どの程度まで溶かしていいか、一旦消化を止めるべきか、といった指示を細かく念話に似た魔術で指示し続けてるんだって。

 それをずっと集中すんのは大変すぎる……!


 メバルさんから教授されたのは、≪よい夢を見よ≫という魔術。お札にして赤子の夜泣きを止めさせたりするのにも使う。

 実は、アタシの足を奇跡で癒したあの夜、メバルさんはこの魔術を使ってた。

 それと同時に、神様の力をちょっとだけ借りて、アタシの夢が悪いものにならないよう、自分の身体は眠ってはいるんだけど心は起きてて、様子が変だったらすぐ介入できるようにしていたんだって。

 魔術そのものは体験したことがあるから、あとは魔力の構造をみて覚えて、自分のちからでそれを作って出してみる。

 この練習は割とすぐできた。幻獣の姿だと、自分のなかの魔力の流れが、筋肉の調整と同じくらい簡単に把握できて、動かせるから。

 逆に難しかったのは、≪神様の力≫に直に触れながら、少しずつだけ使って他のひとと夢を共有したり、介入したりすること。


「塔のように大きな溶鉱炉から、指で作った輪に収まるカップに中身を注ごうとするようなもの」


 これは、持っている魔力が大きいひとの魔力練りが、苦労する時の言い方なんだけど。

 神様パワーもそれに近いし、しかも自分のじゃない。

 まず、神様は、大きすぎて。アタシたちのような小さな存在が、「小指の爪ぶんだけくれたらいいです」と願っても、「神々のサイズでいう小指」で分け与えてくれようとする。

 それは悪気、じゃなくてむしろ逆で、小さい存在たちのなかでも、とりわけ神様に向かって信仰を向けてくる存在が好ましく思えているからで。……『愛が重い』というか、『好意が大きい』、大きすぎる、凝縮された高エネルギーが神様パワー。

 だから、幻獣姿のときのアタシが神様パワーにほぼ直結してることを説明すると、メバルさんは言葉を無くしたように動きを止めた。


「えっとぉ……マーエ、あのね? もしかしてなのだが、大きなエネルギーの塊を落として、即離脱するというやり方は、その神様のお力を使うのではないか?」

「うん、そう。」

「使わなくて良かった。」


 小石サイズに絞ったエネルギー塊は、アタシ自身の体の中にある魔力を練って放ったものだから、アタシはまだ神様パワーを使ってない。

 メバルさんが言葉を選んで教えてくれた所によると。

 アタシは幻獣姿の『ちから』の使い方に慣れてない。

 慣れていれば、自分の器に見合った、中身の使い方……この場合は魔力の使い方も体得できてる。

 それができていない状態で、いきなり神々の力を多量に出そうとすれば、下手をすると器のほうが壊れることがある、と。


「素焼きのカップを、激流の滝に置いたらカップは割れる、そういう事だね?」


 アタシなりの理解を譬えると、メバルさんは


「そういう事、なのだ。」


 と頷いたあと「死ななくて、良かった」とまで言われて。あの猛烈な嫌な予感に、ちゃんと従ってて良かったよホント。


 そういう訳で、練習だ。

 神様の力(神様からすれば産毛一本にも足りないんだろうけど)に触れた時は、あらかじめ聞いておいたイメージ『倒れてきた巨木を両腕で受け止める』のお陰で、気絶せずに済んだ。

 巨木っていうか大陸を受け止めるような衝撃で、身体は何ともないのに、精神はめちゃくちゃ消耗した。自分の形を全力、全方位に向けて保ってないと、激流に粉々にされそうな感じ。根元から繋がってることを、いま自覚した、『ちから』の激流。

 自分の中にある魔力は、見えやすい。流派ごとの術理が違うから、定義も訓練も違うけど、結論から言うと『魔力は見える』。自分のは特に見やすい。イメージが『血管のなかを流れる血』とかで分かり易いからなんだって。

 でも神々の力は、そこにあると気づいた時、世界丸ごとの存在を受け止めることになるから、イメージが無いと発狂してしまうこともあるんだって。

 そのイメージを強固にすることが、神職の修行でもある。

 アタシは幻獣だから。

 存在がそもそも神様とつながってる以上、修行無しでもイメージさえつかめれば何とかなるんだそうだ。


 何とかなるのかこれ?


「ぐぅ……うううう」


 激流に逆らわないで、立ち泳ぎみたいなふわふわした姿で、意識のなかのメバルさんが『ちから』の渦の中に浮いてるのが『視える』。


「マーエ、頑張って。イメージ。教えた通りにして。」


 ううう。


 何とか、したよ!


手持ち、残り銀で5919(+19000)枚と銅0枚。


本作設定の神学上、応報の神様の神意を『無し』とか『帳消し』にすることはできません。そういうことができるのは同じ神々だけですし、それをやるとしたら、神々同士のいさかいを招きかねないリスクがあります。

でも『別の形で神意が介入(すでに為された神意に反することはしていない)』することはできるというお話でした。


お読みいただきありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。