欲望の火
今回から5章スタートです!!
物語は波乱の展開を迎えます。
カズキはこの波に揉まれながら、自分の感情の答えを見つけることができるのか!?
ご注目ください!
6畳のワンルームに音は少なかった。
テレビはあるが普段点けないし、ノートPCやスマホで動画を再生することも少ない。ここで発生する音は、ご飯を食べる時、カチャカチャと食器が立てる音や自分が食べ物を咀嚼するものくらいだ。
それが終わったらシャワーを浴びて寝るだけなので、それ以外の音は基本的に立たない。
しかし今日はいつになく騒がしく働くヤカンの姿があり、そしてこの部屋の音を独占していた。
それはヒューッと、ひたすらに「火を止めろ」と大きな声で警告を発し続けている。
普段ならその警告を受け取るやいなや、部屋の主たる俺が1つの無駄もない動きでコンロまで移動し火を消すところだが、今日は違った。
しかしそれはヤカンの声が小さかったわけでも、あえて無視をしたわけでもない。
このままだと最悪火事になる、だから今すぐこの火を消さねばならないということは分かっている。
しかし今の俺にとって、その音はどこか遠くでかき鳴らされる少し耳障りな雑音くらいにしか思えないのだ。
例えるなら、平日の朝に母親から起こされる子供の気分。心地よいまどろみを妨げる「起きなさい」という言葉と同程度。強い睡眠への欲求はその程度の音には負けず、二度寝へと誘ったことだろう。
少なくとも俺自身、過去にそういう経験が1度ならずある。
それと同じだ。
いや、それよりももっと大きな、そして未経験の欲求だった。
この硬い胸に当たる柔らかな温もりが、首筋にかかる甘い吐息が、俺をこの体温で温くなった畳の上に縫い留めて離さない。
できそこなったこのあぐらの上に、はだけた服から瑞々しい肩を覗かせて、息を荒くしたニーナちゃんが乗っていた。
その体は接している部分がじっとりと汗ばんでしまいそうなほどに熱く、火照っている。
何故だろう、ニーナちゃんの周りがやけにぼやけて見えるのは。その熱さゆえに生じる陽炎のせいなのだろうか。
いや、違う。そんなあり得ない理由ではなくて、単純に俺のピントがこの娘以外に合わなくなってるんだ。
背景がぼやけるほどに集中してニーナちゃんだけを見ている。
だってこんなにも淫らで美しい。
腰当たりまで下ろされたワンピースはもはや上半身を少しも隠さず、黒いブラジャーに包まれて際立つ白の胸が露わだ。
ニーナちゃんの股間と密着している俺の太ももが濡れている。
1つ1つの感触が初めて感じるもので頭が回らない。
経験もなければそれを補う度胸も無い俺はただただ流れに身を任せる他なかった。
『私にして欲しいこととかありますか』
そう問いかけられた後の記憶がすでに朧気である。恐らく現在脳みそが熱暴走しているからだろう。
今の状況を努めて冷静に分析してみる。
ニーナちゃんの頭は現在俺の左肩に載せられており、背中に回された腕は強く俺に巻き付いていた。
そして俺。
俺の手はニーナちゃんの背中にも肩にもワキにもなかった。
空中で『ちょっと待って』のポーズで固まったままだ。
スルスルと俺の前に這い寄るニーナちゃんに対して、あわあわと慌てて「ちょ、ちょっと……」と控えめに両手を体の前に突き出した状態で時間が止まっていた。
そのハリボテ同然の両手を難なく突破したニーナちゃんは俺の太ももを跨いで座り、そしてゆっくりとワンピースのボタンを外して腕を片方ずつ袖から抜き、その眩しい肌を俺の目に焼き付けるとそのまま抱き着いてきたのだ。
どれくらい時間が経ったのか分からない。
数十秒なのか数分なのか。
あまりの刺激に意識が飛ばされて、俺はずっと呆けたように何も考えられずにいた。
しかし、突然訪れたさらなる刺激に体がビクリと反射し、とうとう覚醒する。
その刺激の元は首元に当てられた湿った感触だった。
生暖かい空気も一緒に感じる。
そしてチュッ、と音が響く。
それは、首筋へのキスだった。
それを理解した瞬間、全身の血が沸騰するかのような感覚に襲われる。
そして、目の前の白く華奢な肩を、力を入れれば折れてしまいそうくらい細い背中を、思いっきり抱きしめたいと本能が疼く。
その欲求を満たす行動に踏み切ってはいけないんだと考えられる理性は残っていた。
しかし自分の中から新たな自分が生まれ、体の主導権を奪われているのではないかというくらい、理性と体の動きがマッチしない。
情動に押し切られたのか、とうとう固まった両腕はぎこちなく動かされ始めた。
けいれんを起こしているのではないか、というくらいに震える両腕をそっとニーナちゃんの後ろ側へと回していく。
ああ、どうやら俺はニーナちゃんを抱きしめて、そのまま押し倒したいようだな。
自分自身の行動をゲームのイベントを見ているように他人ごとに感じる。
操作を失った自分というキャラクターを真上から俯瞰しているような気分だ。
途中、俺の動きがピタリと止まる。
右手の指に、何か想定しない感触のものに触れたようだ。
耳元で甘い声が囁かれた。
「…………それを摘まんで右に引っ張ったら、外れますよ」
『右に引っ張れば、外れる』
ドクンドクンドクンと、内側からの動悸がうるさい。
あと、息遣いがめちゃくちゃ煩い。
その音で世界が埋もれてしまう。それにとても苦しかった。
誰だ、こんなに息を荒くしているのは。
全部、俺だ。
全ての音が俺の中から発せられている。
止まれ止まれ止まれ。
自分の体、自分の呼吸のはずなのに、どうしてこんなに制御が効かない?
ドクンドクンドクン。
まるで内側から鼓膜を直に殴りつけられているような気分だ。
この音は鳴りやむどころか次第に大きくなっていく。
ああ、うるさいうるさいうるさい。
頼むから静かにしていてくれ。
俺は震える指を彼女の背中に這わせた。
その刺激を感じたのか、さらに甘く苦しそうな声が漏れ出るのが聴こえる。
何度も逃れるホック部分をようやく摘まみ、そして右へとーー
ピンポーーーン
ここまでお読みいただきありがとうございます(^^)
迫るニーナに押し切られそうになったカズキでしたがーー!?
ーー続きは次回の更新をお待ちください(`・∀・´)
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それでは!




