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俺が好きなのどっちなの!? 『生ワキ』それとも『あの娘』だけ!?  作者: カプサイシン
4章 ワキが甘い! 女の子のちょっとした変化も見逃すな!
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渇き

4章ラストです!

「ただいまー、です!」


 鍵を開けると、真っ先にそう言ってニーナちゃんが部屋に上がり込んだ。

 なんか、買い物袋を手に提げて女の子を改めて家に入れるって気恥ずかしいな。なんだか同棲でもしてるかのような気分になる。


「た、ただいま」

「おかえりなさい!」


 ボソリと照れたように呟いた言葉に返ってきた元気のいい言葉はさらに俺を照れさせる。

 俺は今、自分の家にいるというのに無性に緊張してしまっていた。

 台所へ向かって手を洗い、その後レジ袋から豆腐とカットわかめ、ゴボウを取り出す。

 そして空になったレジ袋は畳んで、台所の収納スペースへとしまった。


 ーーん?

 これ以外は何もないのかって? 何もないよ? スーパーだけで薬局には立ち寄ってもいないから。

 衛生用品コーナーに置いてる装着系のゴム的な何かなんて買ってません。


「ニーナちゃん、20分くらい待っててくれる?」

「え? はい。全然大丈夫です。私も何か手伝いましょうか?」

「いや、スペースがないから大丈夫。テレビでも見て待ってて」


 お米を高速で研いで早炊きに設定。そして食卓の賑やかし作りに入る。

 まずは水道水を組んだ小鍋を火にかけて放置。沸騰しかけるまでの間に、買ってきたゴボウの皮を薄く剥いて細切りにする。そして水を張ったボウルに切ったゴボウを入れてあく抜きをし、今度はにんじんを細切りに。

 ブクブクしてきた小鍋を弱火にし、カットした豆腐を投入。豆腐に火が通るのを待つまでの間、フライパンを取り出しごま油を敷いて、にんじんとゴボウと輪切り鷹の爪を軽く炒め、醤油とみりんとお酒を入れて煮込む。

 フライパンの方は汁気が無くなるまで放置して、今度は小鍋に味噌を溶き入れてカットわかめも入れる。煮立たせないように熱を加えていく。


 そして時間は経ち、炊飯器が白米が炊けたことを報せる音を鳴らした。


「「いただきまーす!」」


 早速肉じゃがの入った器をつついたニーナちゃんが、どういった反応を示すか興味があった俺は、味噌汁を啜りつつ感想を待つ。


「ん~~!! 美味しいです!!」


 聞けば誰でも嘘・偽りの無い心からの言葉だと分かるような、無邪気な感想が暖かに部屋へと響いた。


「こっちのきんぴらごぼう? っていうのも甘辛ですっごい私好みです!」


 続けて食べた、先ほど急いで作ったきんぴらごぼうも好評なようで、お箸にこれでもかと挟んで口に詰め込んでいる。

 ほっぺたを丸くしてもしゃもしゃと咀嚼するその姿は王女という立場を忘れさせるくらい子供っぽくて可愛く、見ていてとても和む。

 俺はホッとし、緊張でいつの間にか上がっていた肩の力を抜いた。


「お口に合ったようで何よりだよ。しかしこういう味付けが好きなんだな、ニーナちゃんは。憶えておこう」

「はい! 私の国の料理は辛い物は辛い、甘いものは甘いって極端だったのでとても新鮮です」


 そう言うと空になった茶碗を俺に突き出し、「おかわりお願いします!」と元気よく宣言。

 しかし、大分くつろぎすぎではないだろうか……。

 こういった順応性の高さゆえに、アイアや覇太郎ともこちらの世界に来てすぐに仲良くなれたのだろう。

 俺が茶碗を受け取ってご飯をよそっている間も、ニーナちゃんは大きめのジャガイモを頬張りながら喋り続けた。


「カズキさんは私の好みを憶えて、私の世界の専属シェフになってもらうのもいいかもしれませんね。ぜひ渡航してきてください、就労ビザなら発行します」

「そっちにもビザのシステムあるの……? 大体肉じゃがとカレーしか作れないシェフとか頼りなさすぎない?」

「他の料理はおいおい覚えてもらう方向で」


 俺たちは終始そんな異世界ジョーク? から始まった話で盛り上がりつつ食事を楽しんだ。




「だいっっっっっっっっっっ満足ですっ!!! ごちそうさまでした!!!」

「はい、お粗末様でした」


 食事が終わった瞬間、ニーナちゃんは大の字になって畳に寝転がる。

 俺はニーナちゃんの分の食器もまとめて台所に持って行き水に漬け置くと、ヤカンに水を入れて火にかけた。

 食後はどうしても熱いお茶が飲みたくなるのだ。

 そうして湯が沸くまでの間、またニーナちゃんと会話でもして時間を潰そうと、ゴロゴロしているその横に腰を下ろす。


「ニーナちゃんもお茶飲む?」

「ああー、何から何までありがとうございます。いただきます」


 ゴロンとこちらに体を向けてそう答えた。

 その後、特にそれ以上体を動かすことも無く俺のことを見ていたので、ニーナちゃんから何か話題を振ってくれるかなと受け身に待っていたが、一向に口を開かない。

 コォォォォ、といったヤカンの底が火に炙られるような音だけが部屋に響く。

 食べ始める直前にテレビは消していたので、それ以外音が無かった。

 それなら俺から、と思ったけど、こちらとしても当たり障りのない話題がどうにも浮かばない。

 そして時間が経つとともに、つまらない話のネタなんかはより切り出しにくくなり、どうしたものかと頭を悩ませてしまう。

 そんな折、急にニーナちゃんが起き上がり後ろに手をつく体勢になって、何でもないような軽い口調で話し始めた。


「お礼をしなきゃですね。何がいいですか?」


 何の脈絡もない突然の『お礼』という言葉に俺は戸惑う。


「え? お礼? いや、いいよそんな気にしなくて」

「いえ、ぜひ言って下さい」

「いやいや、本当に大したことをしたわけじゃないから」

「そんなことありませんよ」

「気なんて遣わなくても……」

「私がしたいんです」

「えっと…………」


 胸がザワつく。ちょっとした違和感に。


 俺、この子のこと何か怒らせたかな? ちょっと被害妄想かもしれないけど、返ってくる語気を強く感じた。

 でも、だとしたらいつ? いや、でも今日は何も特別なことは言ってないはず。

 あれこれ今日の態度を思い返していると再びニーナちゃんが催促をする。


「お礼、何がいいですか?」


 その短い質問はとても丁寧な語調だった。しかし、何故か冷たさを感じ取れるような、決まりきった台詞をなぞっているかのような、淡々としたものだった。


「い、いや…………、大したことをしたわけじゃないから」


 先程まで『美味しい!』と肉じゃがを頬張っていた明るく可愛い女の子の発する言葉に、何故だか俺は気圧されて蓄音機のように先程と同じ返事しかできない。

 俺の脊髄反射のように芸の無い返しに、しかしニーナちゃんは根強く問い続ける。


「要らないんですか?」

「あ、あぁ…………」

「本当に?」

「うん‥………」


 小首さえ傾げて、本来なら無性に可愛いだろうその姿に、俺は無邪気さを感じられない。

 そしてもうひとつの違和感に気付く。

 ニーナちゃんは俺に視線を向けていなかったのだ。

 いつもなら会話をするときに真っ直ぐと目を見てくる女の子だったが、先ほどから一度も目が合わない。

 何も映していないテレビを見据えながら、言葉だけを紡いでいた。


「そう、なんですか」


 同じ態勢に体が固まったのか、ニーナちゃんは頭の上に腕を組みストレッチの要領で体を後ろに反らしながら話し続ける。


「何か、欲しいものとか…………。もしくはーー」


 そこで言葉を区切り、目を瞑って体をグッと伸ばす。

 海老ぞりになった体は、ワンピースの胸の部分だけがグッと大きく突き出して綺麗な球形を作っていた。

 食事の前にカーディガンを脱いでいたため、少しだけズレた下着の肩紐も、ぱっくりと口を開けた生ワキも無防備に露わとなっていて、俺の目が行ったり来たりと忙しい。

 伸び終わり目を開けたニーナちゃんに悟られないように素早く目線を元に正す。

 しかし言葉は続けられない。

 振動させた空気が平らになるのでも待つかのような切れ間が俺を焦らした。


 ヤカンからクツクツとした音が立ち始める。


 『もしくは』なにか。

 どうしようもなく気になってしまっていた俺は続きを促してしまおうかと考える。

 しかし、それでは何となく負けたような気がする。

 だって先ほどまで「お礼なんて要らないよ」と固辞していたのに、「もしくは何ですか?」なんて聞いたらまるで期待しているみたいじゃないか。

 なんだかそれはどうしようもなく情けないような気がしてならない。まるで男女の駆け引きに哀れにも敗北した惨めな男、とでもいった気分に落ち込むんじゃなかろうか。


 だからニーナちゃんの言葉を待とう、と自分に言い聞かせる。


 それが正しいんだと。




 ーーいや、そう言い聞かせないと、胸の奥底で燻りつつある小さな火が勢いを増してしまいそうだった。


 元々カラカラに渇いていた薪木ぴったりの俺の心は、すでに『もしくは』という言葉1つで煙を上げ始めているのだから。




 自分の心に言い訳のしようなんてない。


 期待しているみたい?

 --本当に期待しているんだ、根っこの部分では。


 何に?

 ーーニーナちゃんの思わせぶりな言動に。


 察しが付かない訳がないだろう、彼女が続けようとする言葉に。俺は決して鈍感ではなく、人並みの共感性・感受性だってあるはずだから。

 でも同時に、全部自分の思い込みで終わってしまえばいいとも思っている。今の生活はとても楽しいから、日常を大きくは動かしたくない。

 熱いお湯で一息に気持ちよくなって後々のぼせるよりも、俺はぬるま湯に浸かっていたい。

 ぬるま湯で、長く、この何事もない生活を続けていきたい。


 だから熱に浮かされるカラカラな『渇き』が『もしくは』に続く言葉を待つ一方、理性が自分の心に広がってしまいそうな熱を必死に抑えつけるという矛盾した心理状態で、俺は無言のニーナちゃんに対峙していた。


 中空へやっていた目線を並行に戻し、とうとうニーナちゃんはこちらに顔を向けた。

 俺の目を覗き込み、俺の欲しがった、そして俺が逃げたがった言葉を口にする。


「私に、して欲しいこととか、ありますか?」


 その瞳は底なし沼のような深い暗色で、俺の心を丸ごと呑み込んでしまう深さがあった。

お読みいただきありがとうございます!


据え膳食わぬは男の恥、とはよく言われますが、カズキはいったいどうするんでしょうか!?

さて、次回から怒涛の展開を見せ始める5章に突入します!

お楽しみに(^^)


少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひブクマ・更新通知設定をお願いします!


それでは!!

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