八十八話 雪だるまがキライになりそうです
同時に襲いかかって来たアイスノウマンをどうするのか決めかねた時、クロノスくんが動きました。
「みんな、はなれるであります!!」
その声にハッとなった私は、慌てて距離を取ります。他の二人もとっさに飛び退いていて、おかげで攻撃が当たらず済みました。クロノスくんが相手の時間を止めてくれたため、避ける時間ができたのです。
「ありがとうございます、クロノスくん」
「でも、まだあいつらおそって来るであります!」
そう、そこなんですよ問題は。どうにかしないと、ジリ貧です。
距離を取ったせいか、アイスノウマンたちはこちらの様子を窺うような素振りを見せています。一定以上近づくと、攻撃して来るタイプとかかもしれません。
「センパイセンパイ、きっと炎タイプの技が効果抜群ッスよ!!」
「それはわかってるんですが……残念ながら、私に炎タイプの技は使えないと思ってください」
「え!? マジッスか!? じゃどうするッスか!?」
「だから悩んでるんですよ!!」
一体だけなら分子を操って温度を上げてどうにかするんですけど、二体同時にあれをやるのは厳しいものがあります。止まっている今……でもちょっとムリっぽいです。絶対に動かない保証があるなら話は別ですが、その間にもう片方に襲いかかられるとまずいですし……
「ウィルちゃん、クロノスくん。どちらか攻撃系の魔法って使えますか?」
「ウィルは光を集めて攻撃できるですの。でも、それであの冷たそうな魔物を倒すには時間がかかりそうですの」
「しょーせーはそもそも、こうげきまほうを使えないであります……」
光は熱を持ってますから、照射を続ければ倒すこと自体は可能ってところですか。でも時間がかかる、と……私が威力をブーストすれば、あるいは……いえ、ムリです。それだと周囲への被害が甚大になってしまいます。この場所のどこにシルフさんがいるのかわからない以上、下手に壊すわけにはいきません。
「センパイ、来るッス!!」
「もうちょっと考えさせてくださいよ!!」
向こうは魔物でこちらを倒しに来ているわけですから、そんな隙はそうそう与えてくれないことはわかってますけど……!!
コーンを被った方のアイスノウマンが、そのコーンの先をこちらへ向けてなにかを飛ばして来ました。とにかく攻撃を喰らうのはマズいので、全員がバラバラの方向へ回避。ダメージを受けた人はいないようです。
アイスノウマンが飛ばしたものはといえば、溶けたアイスのようなものでした。やたらと甘い匂いを振り撒くべたべたの液体が、床にばら撒かれた形になります。
イヤな予感に見舞われた私が牽制ついでに床に攻撃してみますと、見た目以上にべたべたする液体はもはや液体というかトリモチのようでした。たぶん、踏んだりなんてした日には、その場から動けなくなることでしょう。
「あの、センパイ。これほっとくとドンドン移動できる場所減る系のやつな気がするんスけど」
「奇遇ですね。私もそう思ってます」
ゲーマーというかオタクなだけあって、こういう勘は働くようです。こんな感じのイヤらしい戦法をとる敵って、けっこう色んなゲームにいますから。
となると、なるべく早く、この瞬間にでも倒さねばならないのですが……なにか、妙案はないものでしょうか。溶かすだけなら可能かもですが、それがまたトリモチのようになりそうですよねこれ。
再びアイスノウマンが攻撃をしようとして来ましたが、その前に風で吹っ飛ばします。これで距離は取れましたが、気休めにしかすぎません。
「センパイセンパイ!! あたしなんか武器ほしいッス!!」
「突然ですね!? たしかにあった方がいいですけど……!!」
ルナちゃんが武器を持てば、多少は攻撃力は上がるでしょうけど……ルナちゃんが使えそうな武器が、近接系しか思い浮かびません。フィーマさんは弓でしたけど、ルナちゃんが弓を使っているところが想像できないです。
武器の件は後にするとして、先にあの魔物をどうにかしないとです。火はダメで、溶かすことすら難しいとすると、あとは……
「みなさん、ちょっと試したいことがあるので、離れてもらっていいですか?」
全員がうなずき離れたのを見た私は、思いつきのうえ行き当たりばったりな賭けに出ることにしました。
私一人が前へと出ると、それを好機と見たのかアイスノウマンが同時に襲いかかって来ました。左右から挟み撃ちにするような形なので、これでは私の考えた作戦が使えません。
まずはもう一度ダブルの方を縦半分にして、時間を稼ぎます。
『ピッキィー!!』
攻撃をしなかった方のアイスノウマン・トリプルが飛びかかって来ましたが、それはかがんで交わします。私に攻撃が効くはわかりませんが、やはり喰らわないに限りますので。
そのおかげで、アイスノウマン・トリプルがダブルへと突っ込んで行きました。今がチャンスです!!
「溶かせないのであれば、逆に凍らせるまでです!!」
私は両手を前に突き出すと、二体のアイスノウマンへ向かって水の球をぶつけます。二体いっぺんに水の球の中に呑み込まれたのを確認したと同時、今度はその球を全力で凍らせました。
ビシィッと音を立て、水の球は氷の球へとクラスチェンジを遂げます。そのままゴトンッと床にぶつかった球は、大量の破片となって砕け散りました。
「さすがにここから復活は……しないですよね」
念のために、大量の破片はさらに砕いて粉末にしておきました。ここまですれば、さすがに大丈夫でしょう。トリモチも凍ったおかげで、踏んでもくっつかなくなりましたし。
とりあえず、初戦であるアイスノウマン戦は勝利ってことでいいみたいです。




