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八十七話 ダンジョンなのか、ショッピングモールなのか

 他に入口が見当たらなかったので、普通に正面の入口から入ることにしました。


 ウィーンと音を立てて、入口のガラス戸が開きました。


「ふにゃっ!?」


「かかかってに開いたでありますよ!?」


 ウィルちゃんとクロノスくんが全力で驚いてました。そうですよね、魔法でもないのに勝手に開いたらこの世界の人たちは驚きますよね。私は違う意味で驚きですけど。


 これ、どうやってるんでしょう。ここまでの再現性を持つとは、本当にナノさんたちは侮れないです。


 二人にこれは問題ないと太鼓判を押してから、中へ入ります。そこには商品を乗せるためのショッピングカートがズラリと――

「ってこれ手押し車ですよね!?」


 道路工事の現場などで土なんかを運ぶのによく使われる、車輪が一個だけしかないあれです。なぜかあれが、ショッピングカートの代わりに並べられていました。


「センパイ、これに商品乗せるのはかなり難易度高い気がするんスけど……」


「ですよね、私もそう思います」


 おおかた、それっぽいものを用意しようとした結果でしょうが……車輪がついて荷物を乗せる、という点は間違ってなくもないですけど、用途が違いすぎますねこれ。


 ツッコむ相手が不在、というか反応してくれないので、スルーしてさらに中へ。


「ここは……フードコート、ですね」


 入って最初に目に付いたのは、赤い看板のハンバーガーショップらしき場所でした。看板にはひらがなで『まっくすどるるなど』と、ギリギリで元ネタがわかるようなわからないような文字が書かれていました。名前、うろ覚えだったんでしょう。


「センパイセンパイ、向かい側は『しゃーてーわーすくりーん』って書いてあるッス。そしてたぶんアイス屋ッス」


「長い横文字は覚えられないお年寄りですか」


 全体的にズレてるんですよ……まあまったく同じものを出されたらそれはそれで困るので、ある意味ファインプレーと言えなくもないですけど、わかりにくいです。


「それにしても、いったいなんの目的で造ったんでしょうね、こんな巨大施設……ナノさんたちいわく、お祝いだそうですけど、特におめでたいものは見当たりませんし」


「あれじゃないッスか? アイス屋の中で、店員さんたちが、アイス混ぜながらお祝いの歌うたってくれるんス!!」


「それ全然別のアイス屋ですね」


 あとあれって、お祝いの歌でしたっけ? なんか歌ってたのは覚えてるんですけど、店に行ったことはないですし詳しくは知らないんですよね。


 当然と言えば当然のことながら、ここには私たち以外誰も存在しません。つまりは店員さんもいないので、ここでショッピングするのは難しいですね。ハンバーガーショップなんて、店員さんがいなければ形にすらなりません。


 というわけで、ここはスルーして奥へ――

『ピキー!!』


 奥へ行こうとした瞬間、突然アイス屋から大きな影が突っ込んで来ました。


「これは……雪だるま、ですね」


 下が抹茶色で上が濃い茶色のその雪だるまは、頭に三角錐の形をした帽子を被っていました。顔はクッキーのようなもので作られているようですね。そして手足に当たる部分は、クリーム色のスプーンが突き刺さっています。


 この雪だるまのカラーリングには、とても見覚えが。


「……センパイ、この雪だるま超おいしそうなんスけど」


「奇遇ですね。私もそう思っていたところです」


 ダブル……下がキングサイズで、上がキッズサイズのあれですねこれ。間違いないです。被っている帽子はコーンでしょうし。


「え、えとえと、あの雪だるまさん首からなにかぶら下げてるですの」


 ウィルちゃんが指さす方を見てみると、そこには白いプレートがありこんなことが書かれていました。


『あーいすろうまん』


「ムダに親切ですね!? ……きっとおそらく、『アイスノウマン』って書きたかったんでしょうね」


 氷タイプの魔物……ですよねたぶん。魔物の定義はたしか、魂のない生物のはずですから、合っているはずです。まとっている魔力の感じだと、ゴーレムに近いですかね。


 アイスノウマンはフラフラとした足取りで私たちの方へと、徐々に歩みを進めて来ます。


「どんな攻撃が来るかわかりませんし、ここは先制攻撃しときましょう」


 というわけで、適当に風の刃で真っ二つにしてみました。


 攻撃が当たったアイスノウマンはアッサリと分断され、無力化を――

『ピキピキー!』


 縦半分にされたはずのアイスノウマンでしたが、スプーンの手で自分の身体を強引に接着しました。元がアイスなせいか、ダメージを受けた様子は見受けられません。


「物理無効系ですか、これまた厄介な……」


 スライムに近いってことでしょうから、とても面倒です。しかもですよ? あの時のスライムは液体でしたからあんな手段が使えましたが、今回は相手がすでに氷なわけで。あの方法で倒すことはできないんですよ。


「せ、センパイ、なんか増えてるッス!!」


「はい!?」


 ルナちゃんの慌てた声に振り向けば、そこにはもう一体雪だるまが増えていました。今度は同じサイズで、下から黄みがかった白、鮮やかなオレンジ、そして薄い緑という三段重ねのやつです。ただしこいつが被っているのはコーンではなく、透明なカップでした。


「こっちにも名前が……『あーいすろうまん・とりるふ』? 『アイスノウマン・トリプル』ってことですか?」


 どちらもアイスの魔物なのはいいのですが、確実にこの二体は氷タイプなわけで。つまり一番確実に倒す方法は、溶かしてしまうことなのですが……手っ取り早いのは、火を使わなければならないでしょう。それはちょっと……


 二体のアイスノウマンは、私たちが動かないと見るや同時に襲いかかって来ました。なにか、倒す方法は……!!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 大八車は車輪二個の木製のリヤカー時代劇で出てくる奴。一本足は猫車、又は手押し車と、言います。 二人にこれは問題ないと太鼓判を押してから、中へ入ります。そこには商品を乗せるためのショッピ…
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