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八十九話 このタイプは初めてです 1

 アイスノウマンを倒すことに成功した私たちは、先に進む前にルナちゃんの武器をどうにかしようという話になりました。なんにもないよりマシでしょうし。


「ルナちゃんはどんな得物がいいですか?」


「獲物? まさか、まだどっかになんかいるッスか!?」


 そう言って辺りをきょろきょろしだすルナちゃん。またなにか勘違いしてそうですねぇ……


「おそらく、私の言っている得物とルナちゃんの言っているエモノは別物だと思いますよ。簡単に言えば、どんな武器がいいかってことです」


「それならそうと早く言ってほしいッス!!」


 え、これ私が悪いんですか?


「えーっとッスね、あたし的にはなんかカッコイイのがいいッス!!」


「漠然としすぎてて形にするの激ムズなんですが。せめて種類で言ってくれませんか? 剣とか槍とか」


「じゃあ妖怪退治できそうな槍がいいッス!! 封印の赤い布とかあると最高ッス!!」


「あれ魂削られますけど本当にいいんですか? 最終的にあなたも妖怪になりますが」


「すいませんやっぱやめるッス」


 でしょうね。にしても、最初に出て来る武器それですか。てっきりエクスカリバーとか出て来ると思ったんですが。


「ルナちゃんって、なにかスポーツとかやってなかったんですか? 剣道とか弓道とか。それなら話は早いんですが」


「んー……あ、選択授業でフェンシングならやったことあるッス!!」


「これまたコメントに困る競技を……」


 なんでフェンシングなんですか。ていうか道具一式そろってるってすごいですね。さすがはお嬢様学校。


 聞いたところによると、他にも銃剣道とかアーチェリーとか、普通の中学校ではあまりお目にかからない競技が目白押しみたいです。一番人気の部活が華道部らしいですし、本当にすごいですねお嬢様学校。次点はなぜか囲碁将棋部らしいですが。


 結局、一応は使ったことがあるということで武器は剣ということになりました。ただし、本人の希望によりフェンシングで使うような細い剣ではなく、そこそこのサイズの大剣ですけど。経験生かす気ないですねこの子。


「センパイありがとうッス!! 今日から超大事にするッスよ、魔剣ダーインスレイヴ!!」


「待ってください。そんな抜いたが最後、誰かを殺すまで止まらないような物騒な剣の名前をつけるのはやめましょう。不吉すぎます」


「えー……」


 不満げでしたが、その後改名してくれました。ちなみに『退魔剣ホーリーソード』だそうで。そこはかとなくダサいですが、本人がいいならいいでしょう。


 ちなみにこの剣、私の根っこの一部を使用しています。すぐに出せる材料が、これしかなかったんですよ。ちょうど地面を掘ったら出て来たので、これ幸いと採用してみました。本体に痛覚なくてよかったです。


 これでルナちゃんも戦闘に参加する気満々ですが、この子戦えるんですかね……? クロコさんに瞬殺されてましたし、心配です。できれば遠距離系の武器にしてほしかったんですが、聞く耳持ってくれませんでしたし。


 大丈夫かなぁと思いつつ、ここに留まっているわけにも行かないので進みます。


 アイス屋を抜け、ハンバーガーショップにも近寄らないようにガンバって避けた先にあったのは、見覚えのある人形が立つ店でした。


「『えんたーきーふらいんぐちきん』って……惜しいっちゃ惜しいですけど」


 空を飛ぶ鶏肉……想像してみるとかなりシュールですね。しかもなにを決定するんでしょう。エンターキーって。


 このお店、名前は惜しいですが立っている人形は全然惜しくないです。首に『かねえるたいさ』と書いてあるカードがぶら下がってますが、カーネルが大佐という意味なので、大佐が被ってますし。


 見た目は近い方ですが、なぜか白いマントを装備してらっしゃいます。黒かったら魔術師とかがよく着ているようなローブなのですが、真っ白ですし……かと言って白衣でもないみたいです。しかも、メガネがモノクル――片メガネになっています。


 どちらにせよ、下手に店に近づかなければ問題は――


『今、我と目が合ったな?』


「へっ!?」


 な、なんかやたらと渋カッコイイ声が!?


 慌ててバックステップをすると、それまで微動だにせず直立していたカーネル大佐が、滑らかに動き出したではありませんか。


「おおおおじさんが動いたッス!?」


「ミーシャ様、これはいったいなんでありますか!?」


「うわわわ……!? 誰ですのこの人……!?」


 三者三様に慌てる三人に、言葉を返している余裕はありませんでした。その前にカーネル大佐が、いきなりなにかを飛ばして来たのです!


「わわっ!?」


 ジャンプでかわすと、それは石かなにかでできたニワトリでした。


『おお、まさか我の攻撃をかわすとは! 汝、やるではないか!』


 カーネル大佐、なぜかどことなくうれしそうです。


 それにしても、こんな風に流暢しゃべるのは初めて見ました。こんな魔物は、魔物……? あれ、そもそもこの方、方? って、魔物なんでしょうか?


「……一応、お聞きしますが。あなたは魔物なんですか?」


『ふふ、我はそんな枠組みを超越した、新たなる存在なのだ! 汝らの言葉で言えば、ゴーレムに近いだろうか』


「ここまでおしゃべりなゴーレムがいるだなんて、寡聞にして知りませんでしたよ」


『我は特別製だからな!』


 これは困りました……どこにカテゴライズすればいいのかわかりません。本人はゴーレムと言っているので魔物っちゃ魔物なんでしょうが、魔物の定義は魂のない生物のはず。カーネル大佐に魂があった場合、もはや魔物ではありません。


 そもそも魂の定義を訊かれたら困るんですけどね。私の中では、自らの意志を持ち会話が成立したうえで、自主的な行動ができる、としています。そしてこのカーネル大佐、すべて当てはまっちゃってるんですよねぇ……


『さて汝らよ。新しく生まれた我の、肩慣らしに付き合ってもらおうか』


「……イヤだ、と言ったらどうなるんですか?」


『もちろん聞かぬ!!』


 そう言うが早いか、カーネル大佐はどこからともなく取り出した茶色いステッキを私たちへと向けました。そしてニヤリと笑うと、大きく息を吸い込み――

『出でよ雷、我が命に従い彼の者どもを討ち滅ぼせ!!』


「ま、魔法ですか!?」


 ただしゃべるだけに飽き足らず、魔法まで使うんですかカーネル大佐!?


 彼の持つステッキへと向かい、魔力が集まって行くのを感じます。


 いったい何者、っていうかなんなんですかカーネル大佐!?


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