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五十六話 ドラゴンと初めての対面です

 ウィルちゃんの案内で、私たちはドラゴンさんたちの長だという個体に会えることになりました。


「こちらがここの長ですの!」


 そう元気に紹介されたのは、他のドラゴンさんたちよりもひと際大きな体躯の個体でした。全長二十メートルはあるような巨体で、色は美しい瑠璃色をしています。瞳だけが地球の月のような、光り輝く金色でした。


「お初にお目にかかります。(それがし)はこのシャイラーに住むドラゴンを取りまとめる、ジェンツィアーナと申す者であります」

 

 そ、某ですか……種族がドラゴンなのでわかりづらいですが、この方の性別どちらなんでしょう? それもキャラの濃さに関わって来そうです。そのうち、(ちん)は、とかいう自称の子が出て来ても驚きませんよ私は。


 そんな感想は心の中にだけ留め、私はできるだけ演技っぽくならなように笑みを浮かべました。


「はじめまして、私はミーシャと申します。こちらがシルフさんで、クロノスくん。それから――」

「あたしはルナっていうッス! よろしくッス、ジェンさん!」


「ジェンさん……?」


 ああもうほら、ジェンツィアーナさん困ってますよ! 普通初対面の人に、許可なく愛称で呼びかけたりしないですから!


 どうフォローすべきか悩んでいると、ジェンツィアーナさんは器用に肩(つばさ?)をすくめました。


「構いませんよ。確かに某の名前は、人の舌には発音しにくいものでしょうから。ミーシャ様も、呼びやすいように呼んでください」


「なんかすみません。たぶん人間でも、日本人じゃなくてアメリカ人とかイタリア人でしたら難なく発音できたのでしょうが……」


 日本語にないですからね、『ツィ』なんて発音。発音しづらいのは確かですが、外国にはツィとかヴェとか山盛りな発音する国もありますから、日本人の問題だと思われます。


 結局私もジェンさんと呼ぶことになり、そこからやっと話が進みました。


「それで、ミーシャ様たちはなぜ本日このような辺鄙(へんぴ)なところに?」


「こちらにいるクロノスくんはほとんど外に出られなかったのと、ルナちゃんは最近この世界に来たばかりの新神さんなので精霊さんたちに紹介しようかと思いまして」


「そッス、はじめましてッスよ! そしてジェンさんって、やっぱ空飛べるんスか? 高度一万メートルとか行けるッスか!?」


 とことん空気読めませんねこの子……ドラゴンの表情は読みづらいですが、おそらく苦笑いしてますし。


「あのルナちゃん、しょっぱなでその質問はどうかと思いますよ」


「大丈夫ですよ、ミーシャ様。そうですね、某は飛ぶの得意ですが一万メートルは厳しいですね。あまり上空に行くこと自体がありませんから、正確なことは言えませんが……三千メートルくらいが精々ですね」


「三千メートル……どれくらいッスかね? スカイツリーくらいッスか?」


「ルナちゃん……スカイツリーの高さは、六百三十四メートルですよ」


「あれっ!? そんなんでしたっけ!? ならめっちゃすごいじゃないッスかジェンさん! ドラゴンマジスゲーッスね!!」


 なんかもうこの子は……まあ、ただのアホの子レベルなのでまだマシですが。一応、致命的なミスをしないように見張る必要はありますね。できるだけ目を離さないようにしましょう。


 ジェンさんも生温かい目でルナちゃんを見ているようですが、当然と言えば当然なのでそこはしょうがないです。


「えぇと、なんなら背中にお乗りになられますか? 某でしたら全員乗せることが――」

「いいんスか!? お願いするッス!!」


「ちょっとルナちゃん……」


「大丈夫ですよ、ミーシャ様。その辺を一回りする程度ですから」


「なんかもうすみません……」


 実際中学生の子供ですし、しょうがないかなーっと思いつつ振り向くと、ものすごーく目をキラキラと輝かせたクロノスくんと目が合いました。


 ……クロノスくんが見た目と同じような精神年齢だとすると、高くても七歳くらいでしょう。そのクロノスくんと同程度の精神年齢とは、なんというかもう残念な子としか言いようがありません。実年齢十三歳なんですから、もうちょっとだけでいいので大人の振る舞いをしてほしいところです。


 一応とは言え、神をやるわけです。せめて、楽しそうという理由だけで周りを巻き込まないくらいにの冷静さを身につけてくれるとありがたいんですけどね。これからの頑張りに期待ってところです。


「それでは背中にどうぞ。ただ某はドラゴンですので、背中はウロコとなっております。あまり乗り心地がいいとは言い難いですが、そこはご容赦ください」


「大丈夫ですよ。いざとなれば、こちらでどうにかしますから」


「ええ大丈夫です。わたくしが風を操り、誰一人落としはしませんとも!」


「だ、そうですので、問題ありません」


 シルフさんに任せておけば、風圧で落っこちることはないので安心です。ウロコでつかむところがなかったとしても、シルフさんが風を操れば問題はすべて解決ですし。


 というわけで、ちょっと空の旅に出ることになりました。


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