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五十五話 ファンタジーに必要不可欠な存在と言えるでしょう

 ドラゴンと言えば、ファンタジー世界になくてはならない存在だと私は思います。やっぱり剣と魔法の世界には、ドラゴンって必須だと思うんです。たとえそのドラゴンが、基本的になにもしないグータラばかりだとしても。


 シャイラーを一望できる丘の上に行った私だったのですが、ものの見事に全てのドラゴンが寝てました。今、思いきりお昼なんですけどね。夜行性とかでもなく、普通に夜も寝るんですよ、この子たち。


「ドラゴンさんたちは体が大きくてエネルギー消費も多いので、よほど変な子でないかぎり、たいてい寝て過ごしているですの! 人間を襲ったりするような子は本当に稀で、ここ数百年で三匹だけですの!」


 数百年で三匹は、まあ少ないでしょう。ドラゴンのような巨体を持つ生物が、イノシシとかサルとかの頻度で出て来ていたら、この世界が立ち行きません。それを考えると、妥当と言えば妥当な数字かもです。


 ウィルちゃんの説明を聞いたクロノスくんは、律儀に手を挙げてから発言しました。学校で授業を受ける小学生のようで、大変かわいらしいです。


「ではドラゴンたちは、なにを食べてすごしているでありますか? シャイラーはほとんどいわでできているようにみえるでありますが」


 確かにここは荒涼としていて、食料になりそうなものは見当たりません。ドラゴンが鉱物が好物とでも言うのであれば、話は別ですが。……よかったです口に出さなくて。今のはなかったことにする感じで。


 クロノスくんの質問する姿もかわいらしいですが、ウィルちゃんの答える姿もとてもかわいいです。ちびっこがお姉さんぶってるところって、すごくかわいいですよね。


「クロノスくん、いいところに気付いたですの! ドラゴンさんたちが食べるのは、空気中のマナですの。でもその気になれば、生き物はたいてい食べられるですの。生き物はみんな、マナからできているからですの」


 だからこそ生物にはマナが必須で、それを私の本体たる世界樹が循環させている、という次第です。マナがなくなった生物は、たとえ生物学的に問題がなくても死んでしまうみたいなので。


 それさえなければ、私も五十年周期で寝ずに済むんですけどねぇ……


「たまに魔物を食べて過ごすドラゴンさんもいるのですが、人間を襲うようになっちゃう子もいるですの」


 なるほど。生き物をマナに分解して食べるのにハマり、人間にまで手を出してしまうということですね。それで人間に退治されてしまう、と。言ってしまえば自業自得というわけです。


 ウィルちゃんの回答にクロノスくんがうなずいていると、今度は横で聞いていたルナちゃんが勢いよく手を挙げました。


「じゃあじゃあ、あたしからも質問ッス! ドラゴンって見た感じ爬虫類ッスよね? てことは変温動物な気がするんスけど、いくらあったかい植物あっても寒くないんスか?」


「ふへ? はちゅーるい? へんおん……?」


 む、ウィルちゃんには難しい質問のようです。でなければ、まだ生物の分類がさほど進んでいないかですね。


 にしてもルナちゃん、言動からちょっと残念な子なのかと思っていましたが、学力が低いわけではないみたいです。そんな質問がサラッと出て来るわけですから。


 ルナちゃんに直接返答するか、ウィルちゃんにも爬虫類なんかの説明した方がいいかで迷いましたが、クロノスくんも目を輝かせているのが見えたので爬虫類のくだりから説明することにしました。


「要するに、ヘビとかと同じく毛皮ではなくウロコを持った生物のことですよ。ヘビなんかと同じく、寒いのは苦手じゃないのか、という意図の質問ですね」


「な、なるほどですの。えっと、ここは灯草のおかげだけじゃなくて、シャイラーを構成している岩自体もあったかいんですの。元々ここは地面にあって、ミーシャ様の根っこの一部があるためでもあるですの! そのおかげで、オーロラが見えるくらい寒い場所に浮いているのに、ドラゴンさんたちは快適に過ごせるですの!」


「岩あったかいんスか!? え、なに岩ッスか!? 花こう岩とかッスか!? あ、でもあったかいってことはいっそ石炭ッスかね!?」


「ふ、ふえぇ……?」


「ルナちゃんルナちゃん、たぶんこの世界では地球の常識通用しないので、固有名詞出してもウィルちゃん含め精霊さんたちには伝わりません。もっと大枠で訊いた方がいいかと」


 ルナちゃんが矢継ぎ早に訊くせいで、ウィルちゃん完全に困っちゃってます。あと石炭って岩とは違いますし、石炭そのものは別に温かくないと思いますよ。燃やさないと意味がないかと。


 私が言ったことの意味は理解してくれたのか、ルナちゃんはふむふむとうなずいていました。


「わかったッス! じゃあここの岩って、なに岩って言うんスか?」


「えとえと、ウィルは勝手に『湯たんぽ岩』って呼んでますけど、特に誰も名前をつけてないので名前はないですの。ドラゴンさんたち、名前とかあんまり気にしないですの」


「むむむ、ではあたしがさいっこうにカッコイイ名前を!」


「ダメです、確実に厨二ネームつけるでしょうあなた」


「えぇーダメッスか!? なんかこう、『火山岩(マグマストーン)』とか!」


「それただの溶岩では?」


「はっ、そういやそうッス!?」


 いいじゃないですか、湯たんぽ岩で。かわいらしいですし。なんかこう、力が抜ける感じがいいと思うんですけどね。あんまり難しい名前つけたところで、誰も呼べなかったら意味ないですし。


 このままですとルナちゃんがどんな名前付け出すのかわからないので、先に進むことにしました。


 いよいよ、ドラゴンさんたちと初対面ですよ!


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