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四十五話 精霊って、今でも生まれるんですね

 中で眠っていたクロノスくんを起こしたことにより、ウンディーネさんの住む泉で起きた時間停止は解けたのですが。問題は、新しく生まれた精霊であるクロノスくんをどうするかでした。


 とりあえず私とシルフさんでクロノスくんを私本体の元まで連れて行くと、無表情ながらどこか興味深そうに辺りを見回し始めました。ウンディーネさんは泉に異常がないか見るために残ったので、ここにはいません。


「こちらのご立派なたいじゅが、ミーシャさまの本体たる、せかいじゅなのでありますね」


「ええ。いつの間にか、雲突き破るサイズになってるのが驚きですが」


 どれくらいになってるんでしょう? 目測ですが富士山超えレベルですから、四千メートル弱とかですかね……というかてっぺんのところ空気相当薄そうですけど、よく存在してられますよねぇ。まあ、それでこそ世界樹なのでしょうが。


 おかげで高さだけでなく太さもけっこうなことになっており、一軒家くらい余裕で中に入る太さになってます。元々がなにもない場所でしたから空きスペースがあって、本当によかったです。自分が巨大化し過ぎて村呑み込んじゃったとか、笑えないですし。


「ところで、クロノス。お前はこれからどうする気だ?」


「どうする、とは?」


「ここにいる者は自分含め、割と好き勝手に暮らしている。ミーシャ様は懐の深い方であらせられるから、自分らは自由にしていいとおっしゃっている。だが生まれたばかりのお前を、一人で放り出すのもどうかと思ってな……」


 なんと! シルフさんがすっごく先輩っぽいことしてます! いえ元から面倒見はいいのですが、それが発揮される機会ってあんまりないんですよね。ちょっと子供っぽいところがあるせいで、キライな相手多いですから。


 そしてそれとは関係なくシルフさんの心配は、とてももっともです。精霊とはいえ生まれたての幼児であるクロノスくんを、一人で放り出すのは忍びないですから。しばらくは、この辺りに住んでもらった方がいいですかね。


 そう思っていたのですが、クロノスくんの口から出たのはとんでもない言葉でした。


「しょーせーは、ひとりでもだいじょうぶですゆえ。というより、しょーせーは寝たいであります」


「へっ? 寝たい……んですか?」


 ついさっきまで、よくわからない空間で寝ていた子の発言じゃないんですけど……


 戸惑う私とシルフさんを見ても表情を変えず、クロノスくんは淡々としていました。


「はい。しょーせーは、かつどうすることはあまり好みませぬ。まだちからのあつかいがうまくないですゆえ、うごけばひがいが出るやもしれませぬので。ですが、それにあたりもんだいがあるであります」


「問題ですか?」


「しょーせーがねむっていると、周囲のときがとまってしまうのであります」


 なるほど……クロノスくんは時の止まった空間にいたナノさんたちの一部が、ずれた時の影響を受けて生まれたんですよね。なら逆に、クロノスくん自身が時へ影響を与えることもできる、というわけですか……これは、思っていた以上に厄介そうです。


 しかもクロノスくんの場合、動けば周りに被害が。だからと言って眠っていれば、今度は周りの時間も止めてしまう。言うなれば、八方塞がりなわけです。


「困りましたね……ちなみに、動くと出るおそれがある被害とは具体的にはどんな?」


「しょーせーのまわりにいるそんざいのじかんが、不規則になるであります。とつぜん巻き戻ったり、すすんだりするかもしれぬのであります。さいわい今までねむっておりましたゆえ、まだひがいはありませぬ」


 これは本当に厄介な……下手に時間が進んでしまうと、死人が出てもおかしくないですし、逆に時間が巻き戻って死人が生き返るような事態になるかもしれないってことです。


 そして最大の問題は、もし仮に時間が止まっても大丈夫なところで眠ってもらったとしても、時間が止まっているせいで永久に力の制御を覚えられないというところですね……


 こんな時、なにかいいアイディアは……探せばマンガとかラノベの知識でどうにかなるのでは……


「……結界を張ってみましょう」


「「結界?」」



◇ ◇ ◇ ◇



 それから数日後。私とシルフさんは、とある小さな洞窟へとやって来ていました。


「結界に問題はなさそうですね」


「さすがミーシャ様です!! クロノスの力を完全に封じるような結界を作るとは!!」


「これはこれで対症療法なんですけどね……少なくともこの中にいる間は、動いていようが眠っていようが周囲に影響がない、ってだけですから」


 人間には簡単に来ることができないような森の奥深くにあるこの洞窟の奥には、修行に励むクロノスくんがいます。


 動くことも眠ることも得策ではないと判断した私は、洞窟の奥に強力な結界を張ったのです。ここでクロノスくんに、力の扱いを覚えてもらうために。


「しゅぎょうがおわるのはいつになるかわかりませぬが、かならずちからをつかいこなせるようになり、会いにくるであります」


 洞窟の力を説明した際、クロノスくんは初めて笑ってこう言ったのです。


「きっと割とすぐに会えますよ。時間はいくらでもありますから」


 今度会う時には、イケメンになっていたら面白いんですけどねと思いながら、私たちは私の本体の元へ帰ったのでした。


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