↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/471

四十四話 時間の間へ突入です

 一歩入ったとたん、私は速攻で帰りたくなりました。もしこれが必須任務でなければ、回れ右をしていたことでしょう。なぜなら、目の前にでーんとゴールの見えないらせん階段だけがぽつんと存在していたからです。


 らせん階段の周りにはスペースがないこともないのですが、かなり狭いです。階段から半径三メートルくらいの円筒状の空間が、延々と続いてる形になりますね。


 いくら肉体がないおかげで身体的な疲労がないとはいえ、普通に精神的には疲れるんですよ。いったい何階分登ればいいのかも見当つかないですし……


 さっそくげんなりして来ましたが、投げ出すわけにはいきません。一年時間が止まったままというのは、あとで色々な齟齬が起きそうでイヤですし。


 そんなわけで、仕方なく螺旋階段を登ります。


 どうやら登る前からメンタルブレイクを起こしかけているのは私だけのようで、シルフさんもウンディーネさんも平気そうな顔でスイスイ登っています。ウンディーネさんの場合、泉の止まった動植物の心配に忙しくてげんなりしているヒマがないのかもしれません。


 そのまま無言で階段を登ること、軽く一時間。螺旋階段なのでどこまで登ったかわかりにくいですが、おそらく五十階は行ってるかと。体は疲れないので、けっこうハイペースで登っています。ですが終わりも見えなければ、登り口も見えなくなっていました。


「これ、どこまで続いてるんでしょうね……」


 一時間登ったということは、一時間下らないといけないんですよねぇと思いながらつぶやくと、シルフさんも同じことを思ったようで難しい顔で頷いていました。


「泉の下にあったことから、地下につながっていると思っていたのですが……階段は登りですし、空間がどうなっているのかサッパリわかりません」


「そういえばそうですね」


 終わらない階段のせいで忘れていましたが、冷静考えれば泉の中にあるのに登り階段っておかしいですね。


「もしかすると、他に道があるのかもしれませんね……」


 ふと思いついた私は、周りに圧縮した空気の弾をいくつか放ってみました。


 するとどうでしょう。なにもないはずのらせん階段の中心部で、弾が不自然な軌道を描いたのです。まるで、中心になにかあるかのような。


 なにかあるとわかれば話は早いです。走査魔法……あれ、探査魔法でしたっけ。まあどっちでも大差はないのでいいです。とにかく見えないものがわかる魔法を使ったところ、案の定そこに別の道があったのです。


「道、と言うよりもエレベーターっぽいですねこれ」


 魔法を使わないとわからないような、透過率百パーセント素材が使われてる模様です。


 シルフさんとウンディーネさんに気を付けるように促しながら、三人でエレベーターに乗り込みます。


 チンッ


「って早いですね!?」


 まさかの一瞬で着きましたよ。エレベーターじゃなくて、テレポート装置だったんでしょうか。ていうか、エレベーターの到着音がすっごく電子レンジみたいなんですけど……


 とてもツッコミたい衝動に駆られましたが、ツッコんだところで誰も正しいリアクションはしてくれません。この世界に電子レンジもエレベーターもないですから。


 そんなわけで無言のままエレベーターを降りますと、そこにはぽつんと時計がひとつ。横長で背の低い、どことなく棺桶のような黒い台の上に乗っているではありませんか。針は長短どちらも、真上を向いたまま固まっています。


「ナノさんたちの言っていた時計ってこれなんでしょうけど、なんでこんなあからさまに安物の百均にでもありそうな時計をチョイスしたんでしょうねぇ」


 半ば呆れながら、そばに転がっていた『たんさんでんち』とひらがなで書かれた電池を時計に押し込みます。


 次の瞬間でした。電池を入れられた時計が、けたたましいベルの音を鳴り響かせ始めたのです。ただの時計ではなく、どうも目覚まし時計だったのでしょう。


 時計を乗せていた黒い台が、ぶるりと身震いをしたのです。


「な、なんです!?」


「ミーシャ様、危ないですのでお下がりください!」


「なんや、やる気かいな!」


 シルフさんとウンディーネさんの二人が黒棺桶に対して構えるのと、そのフタが無造作に跳ね飛ばされたのは同時でした。


 フタの開いた棺桶からむくりと起き上がって来たのは、小さな子供でした。寝癖だらけでぼさぼさの髪と、ちゃんと開いてない目がこれでもかと言うくらいに寝起きだということを主張していました。


「……おはよーございます」


「え、あ、おはようございます……?」


 つい反射的にあいさつを返してしまいましたが、いったいこの子はなんなのでしょう?


 幼稚園児くらいに見えるその子供は、幼いせいか性別がはっきりしません。銀髪銀眼でかわいらしい顔立ちなのですが、男とも女とも断言しづらいのです。髪の毛も半端に長いですし。


「ええと、あなたは誰ですか?」


「しょーせーは、時間を司るせーれーであります」


 しょーせーが、小生に変換されるのに若干の時間を要しました。


「お二人とも、この子に心当たりは?」


「すみません、初対面です」


「うちもありません」


 と、いうことは新しく生まれた精霊ということになりますね。おそらくここの時間が止まったことにより、ナノさんたちの一部が影響を受けたのでしょう。そういえば時を止める魔法も作ったような気がしますし……


「なら、新人精霊ってことで受け入れましょうか。あなた、お名前は?」


「しょーせーに名前はないです。うまれたばかりでありますがゆえ」


「なるほど。では……クロノス、でどうでしょう?」


 たしか、時間を司る神だか精霊だったはずです。他の方との兼ね合いを考えると、この辺が妥当な名前かと。


 寝起きのせいなのか、それとも素なのか。どちらかは不明ですが、無表情のまま時の精霊っ子は頭を下げました。


「よろしくおねがいするのであります」


 ちなみにこの子は男の子だそうで、呼び名はクロノスくんとなったのでした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。