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四十一話 ドワーフの村に到着です!

 黒いデカブツ以外は露払いが必要なくらい強い魔物が出ることもなく、平和に目的地までたどり着くことができました。多少魔物は出ましたが、フィーマさん一人でも余裕で倒せるでしょう。


 道中なぜだかずっと怯えた様子の二人でしたが、ドワーフの住むディルガー村に到着するとそれもなくなりました。おそらく、目の前の光景に目を奪われたからでしょう。かくいう私も、驚きで動きを止めてしまいましたから。


 ディルガー村があるのは洞窟をずいぶん下った先の、地下だったのですが。なんとそこには、地上にある王都フォストと瓜二つの外見をしていたのです。ただし、

城だけはありませんでしたが。


 地下三百メートルは先にあるはずなのに、ディルガー村には空も太陽も空気も普通に存在していました。わずかに太陽の輝きが弱いことを除けば、実は地上と地続きだと言われても信じることでしょう。


 こういう場所って、私のイメージではヒカリゴケ的なのを光源にしていたのですが。まさか太陽があるとは思ってませんでしたよ。さすがに本当に太陽を造ったわけではないでしょうが……核融合だのなんだの、ややこしくめんどくさいことてんこ盛りですし。


 それにしても、ドワーフの方々が王都フォストに来たという話はまったく聞いていません。にも関わらず、どうしてここはこんなにもあの場所そっくりなのでしょう? あとで時間があった時は、調べてみるのも面白そうです。


 さてここからどうしましょうかと考えていると、私たちに気が付いたのかこちらに駆け寄って来る影が一つありました。


 百三十センチほどしかない背丈に、がっしりした体躯。土色の伸ばしっぱなしの髪と、同じ色の瞳とヒゲ。なぜか茶系の迷彩柄ツナギを身にまとっている彼は、服装を以外は私の中のドワーフのイメージそのままでした。


「こんにちは。あなたはここの村の責任者の方ですか?」


 私たちに気づいて真っ先に駆け寄って来たところからそう訊いてみると、無愛想に目を細めた彼はこくりと頷きました。


「ワシはここの長、マディル・ディルガーです」


 村と同じ家名を名乗っているということは、この方の家系が代々村長をやっていると思われます。


「初めまして。私は、ええと……世界樹のミーシャと申します」


 なんて名乗ればいいのか悩んだ挙句、そうなりました。自分から神とか名乗りづらいですからね……


 私が名乗りをあげたので、シルフさんたちもそれにならって名乗りました。


「自分は世界樹の女神ミーシャ様を守護する風の精霊。シルフ」


「うちは水の精霊、ウンディーネいう者です。以後お見知りおきを」


 シルフさんの名乗りに余計な情報がくっついていたような気がしますが、そこはスルーしましょう。


 自己紹介を終えた私たちを、マディルさんはうさんくさそうな目で見つめました。まあ、いきなり神とか精霊とか名乗る人たちがアポも取らずに来たら、こういうリアクションを取ってもムリはないです。


 マディルさんの態度にシルフさんが怒らないか心配でしたが、いくらなんでもここで初対面の相手にケンカを売るほど短気ではなかったみたいです。それとも、ここに来る前に全力でおとなしくしていてくださいと頼んだのですが、それが効いたんでしょうか。


 マディルさんはしばらく黙り込んでいましたが、突然ぽつりと言いました。


「神様方、ようこそおいでくださいました。今日は、どういったご用で?」


 話をする気はあるみたいですね。よかったです。いきなり襲われたりしなくて。悪いこともしていない人間相手に攻撃魔法を使うのは、良心がとがめるので。


「明日、私の友達の方々がここを見学したいと思っているんです。大丈夫ですか?」


「その方たちも精霊で?」


「いえ、エルフの方が二名です」


 ここに至って、私は今さらあることに気が付きました。ドワーフとエルフって、たいていの作品で仲が悪かったような……!?


 デート先の選定をミスったのではとドキドキする私に、マディルさんはとても鋭い目つきを向けました。後ろでは、シルフさんが魔力を練り始めています。ここで怒って攻撃をして来るようであれば、なんとかして逃げるべきですよね――


「……酒はいりますか?」


「……ふへ?」


 今なんて言いました?


 口には出していなかったはずなのですが、その疑問はマディルさんに伝わったようです。ていねいに言い直してくれました。


「その方々を客人として迎えたいのですが、酒を出しても大丈夫ですか」


 無愛想でつっけんどんではありますが、内容は宴会のお誘いでした。ということは、エルフ相手でも敵対する気はないんですね……安心しましたよ。というかよく考えればそもそもの話、まだエルフの方と会ったことないんですもんね。理由もなく敵対はしないでしょう。


「お酒に関しては、本人たちが欲しいと言わなければそちらの裁量に任せます。食の好みも違うかもしれませんから、あまりムリをする必要はないですよ」


「……そうですか」


 微妙に残念そうなのは、目の錯覚でしょうか。不器用なだけで、悪い人ではないみたいです。


 とりあえずこれで、明日のことは大丈夫でしょう。まだ時間ありますし……ちょっとくらい観光して帰っても、バチは当たらないですよね。


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