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四十二話 ドワーフの方々にとっての神さまって……

 マディルさんのご厚意で、私たちは案内係をつけて村を回れることになりました。


 案内係として連れて来られたのは、立派なヒゲの男性です。ドワーフの方たちにとっての民族衣裳のようなものなのか、この方もツナギを着ていました。ただし、なぜか黒地に白のドットという妙な柄のものです。センスが斜め上なのか、なにか理由があるのかまでは不明ですが。


 ちなみにこの方はマディルさんの甥っ子に当たる方だそうで、言われてみればそっくり……ごめんなさいドワーフの顔の違いがわからないので、たぶん誰を見てもそっくりだって思う気がします。なので参考になりません。


 私の内心など知らない案内係の方は、ごていねいにも深々と頭を下げていました。


「はじめまして。ドギスっていいます!」


 見た目はマディルさんとそう変わらない年齢なのですが、雰囲気がどことなく子供っぽいです。自己紹介ついでに年齢を訊いてみると、なんと十五歳でした。ドワーフという種族はたしか、成長が早かったですもんね。納得です。


 ただドワーフも作品によって、差異が大きいんですよ。女が存在せず石から生まれたり、私の天敵である脚部が多めな有機物が神の決定によってドワーフになったとか。もしくは女性がいたとしても同じく成長が早くすぐにおばさんのような見た目になる系統と、ずっとロリな感じの見た目の方がいたり……


 どちらにせよ、あまり決め付けないでおきましょう。


「ではドギスさん、よろしくお願いしますね」


「任せてください! どこが見たいですか!?」


 嬉しそうに破顔するドギスさんは、しっぽを振る子犬のようでした。私の知り合いの方、犬系の方多いですね……シルフさんもフィーマさんも、どっちかと言うと犬系ですし。ウンディーネさんが辛うじて猫系ですかね?


 そんなすごくどうでもいいことを思いつつ、案内についてはドギスさんに一任することにして、後ろを私、シルフさん、ウンディーネさんの順でついて行きます。


「それにしても、どうしてこの場所は王都フォストと瓜二つの外見をしてるのですか?」


 ずっと気になっていたことを訊いてみると、なぜか首を傾げられました。


「おうと……? それは、どこの話でしょうか」


「え? 知らないんですか? 地上にある、エルフの都市のことなのですが……」


「すみません、知らないです。不勉強で申し訳ありません……」


 どうもとぼけているようには見えません。でもだとするなら、なぜこんなにもそっくりな外見をしているのでしょう。


「ではここは、どういう経緯でこの外見になったかは知っていますか?」


「それは叔父さん――マディルさんが、夢で見た都市を再現したくなったからだそうです。およそ一年で、完全再現したとか」


「夢で……」


 となると、犯人はナノさんたちですかね?


 ふと近くにいるナノさんたちの一部に目を向けてみましたが、キョトンとした顔で否定されました。


『わたしたちはなにもしてないのですー』


 じゃあ、いったいなぜでしょう?


 後ろを歩くシルフさんとウンディーネさんにも視線を向けてみましたが、お二人とも首を振っていました。


 ますます不思議です。ならどうしてここの方たちは、王都フォストの外観を知っているのでしょうね?


 ドギスさんまで首をかしげて考えましたが、誰も有力な可能性を思いつけませんでした。


 ここからフォストまで、普通の人間の足で約半日ほど。行けない距離ではありませんから誰かが来たと考えるのが妥当なのでしょうが、エルフの村にドワーフがくれば確実に目立ちます。現在王の立場であるフィーマさんが、まったく知らないはずがありません。そしてフィーマさんが知っているのであれば、私のところに話が来ないはずもないです。


 全員で首を傾げながら進んでいますと、異様なものが目に飛び込んで来ました。異様と言うか、ある意味見慣れてはいると言うか……


「……あの、ドギスさん。あの像は、いったいなんですか?」


 王都フォストが再現された人の住む部分を抜けた、その先に小さな広場がありました。縦横百メートルあるかないかのその広場には、巨大な彫像が鎮座していたのです。


 日本人形のような雰囲気の少女が、ひだの付いたスカートを履いてブラウスを着て首元にリボンを付けていました。


 嫌な予感がしつつも尋ねてみますと、とても嬉しそう顔で返事がありました。


「あれは我々ドワーフの女神、『マツキ』様です!!」


「ですよねー……」


 ええわかってました。わかってましたとも。見た瞬間、あれが人間だった頃の合法ロリバージョンの姿だってことくらいお見通しですよ……!!


 なぜドワーフの村に私の生前フォルムの銅像が?


「あの、この像の女神とやらは、いったいどこから出て来たんですか?」


 名前からしても、他人の空似では片付けられません。確実に私本人ですよコレ。


「マツキ様のお姿も、叔父さんが夢で見たのです。あの像の材料にもなっている、不思議な岩を持ち帰ってから頻繁に夢を視るらしくて」


「不思議な岩、ですか」


「ええ。なんでも、崩れた岩山のような場所から拾って来たとか。あの岩には、並みはずれた魔力も宿っているようですし」


「崩れた、岩山……?」


 まさかとは思いますけど。いえもうここまで来ると、答えは一つです。


「壊したダンジョンの一部ですかコレ……!」


 しかもおそらく、私の姿が一時的に戻ってしまったスライム戦をやった辺りの。


 あの時スライムを通して、私の魔力がばらまかれたのでしょう。そしてその魔力を通じてこの岩に知らず知らずのうちに私とのパスがつながり、私が見たものの一部がマディルさんの夢として現れたわけです。


 要するに。私はドワーフの方たちから、知らないうちにめっちゃ崇められていたわけです。どうしましょうこれ。撤去とかしてくれないですよね……


 今度は明日、この銅像をどうやってフィーマさんの目に触れさせないかに頭を悩ませるハメになったのでした……


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