三十九話 フィーマさんの恋路、応援しちゃいましょう!
お茶会からしばらく経った頃のこと。空から突然飛んでくる影があったかと思うと、私とシルフさんの前にぽとりとなにかを落として行きました。
「今のはいったい……」
こういう時は伝書鳩的なのを使うと思うのですが、今のは羽根が生えていませんでした。なんと言えばいいのでしょう、自立行動が可能な風船というか……とにかく丸いなにかが空を飛んで来たかと思うと、なにかを落として行ったのです。
私の疑問に答えてくれたのは、シルフさんでした。
「あれは使い魔の一種でしょう。この間、フィーマに方法を教えたので」
「使い魔の魔法……そんなのもいつか作ったような作らなかったような……」
ものすごく大量に思いつくままに作ってしまいましたから、内容まで詳しく覚えてないんですよね。黒歴史な呪文は覚えてたんですけどね……
さておき。使い魔の魔法なんてのも修得しているとは、フィーマさんには魔法の才能があるんですね。あの方にも得意と言うか、人に誇れる点ができたことがとても喜ばしいです。これで少しは卑屈なところが治ってくれるといいのですが。
「それでフィーマさんは、いったいなんでこんなものを送って来たのでしょう。これ、手紙ですよね?」
風船使い魔が落として行ったものは、うっすら茶色い紙のようなものでした。紙にしては厚くゴワゴワしていますし、おそらく紙の前身、パピルスの仲間だと思われます。
さてなにが書いてあるんでしょうと、その手紙を読んでみました。
『親愛なるミーシャ様
木々の緑が目にしみる今日この頃、いかがお過ごしで~』
……時候のあいさつが長いですので、パッと用件まで流し読みスキップです。というか、言語日本語なんですね? いつどうやって覚えて……って、そういや昔、まだ私とナノさんたちだけだった時にナノさんたちに教えましたよ。そりゃナノさんたちと話せるフィーマさんから広まってもおかしくないです。
フィーマさんやたら字キレイですねぇ、とか思いつつ、続きを読みます。が、その続きも長いです。時候のあいさつの次は忙し過ぎて直接来れないことのお詫び、それと近況報告。これだけで紙三枚分ですよ。
なので斜め読みして、要約するとこうなりました。
『今度ガノとでかけることになったのですが、どうすればいいのでしょう?』
「なんですって!?」
まさか、フィーマさんについに春ですか!? 時候のあいさつ的にこの世界の季節は初夏っぽいですけど!
「み、ミーシャ様!? いったいなにが書かれているのです!?」
私の驚いたせいでなにかあったのではと思ったらしいシルフさんが、慌てた様子で首を伸ばして来ました。なので要約した内容を伝えますと、同じようなリアクションが。
「なんと! あのフィーマが、ついに……!」
ええ、あの引っ込み思案……とはちょっと違いますけど、私たち以外とは上手く話せなかったフィーマさんが! なんとデートの約束をしているんですよ!
「場所はまだ未定のようで、そこも含めての相談みたいです」
「ううむ……ここはやはり、わたくしたちが出向いた方がいいのでしょうか。手紙を返すよりも、そちらの方が早そうですし」
「どうでしょう……ここに来るヒマもないほど忙しいなら、こちらから出向くのも……でもガノさんの人となりを聞かないと、アドバイスのしようもないですよねぇ」
私が知っている情報は、フィーマさんの秘書をしていて、少々子供っぽい性格の方、ということくらいです。まあ、男子なんていくつになっても子供っぽいものでしょうが。
それにしても、デートスポットの相談も含まれてるんですよねこれ……私、デートとかしたことないんですけど。
「シルフさんって、デートとかしたことあります?」
「デートと言いますと、異性と二人きりで出かけることですよね? ないですね。ノームを異性にカウントしてもよいのであればなくはないですが……」
「ノームちゃんは……あら? あの子性別どっちなんでしょう?」
よく考えてみると、ノームちゃんの性別がどっちか気にした記憶はないです。ノームちゃんはノームちゃんですし、体が人間準拠じゃないですし。
まあどちらにせよ、ノーカンですね。それにそもそも話ですが、精霊って女性体の方が多いですからデートは難しいです。少なくとも見た目も中身も男性体なのは……シェイドさんとヴォルトさんだけですね。そりゃデートとかムリでしょう。人間相手なら別ですが。
ん? ということは、ここである情けない結論が出てしまうんですけど……
「もしや私たち、相談相手として不適格なのでは……」
「はっ!?」
シルフさんも今気が付いたようで、目を見開いてで黙り込んでしまいました。アニメとかならピシャーンと背景に雷落ちてるとこです。
「ど、どうしましょう。ここはなんて返すのが妥当なのですか!?」
「えーと……どうなんでしょう。私にもちょっと……」
厳密に言えば、アニメやマンガをルーツにした知識はあります。ですが、その知識は現代のもの。あっても異世界ファンタジーの中世時代デートくらいで、石器時代卒業し立て、みたいなこんな時代でのデートだなんてサッパリわかりません。
「せめてもっと豊かな、こう……ショッピングモールとまでは言いませんが、商店街のような場所があれば話は別なのですけど……」
買い食いしようにも店がないですし、ショッピングなんて夢のまた夢。なぜなら王都フォスト、まだ通貨ができていません。物々交換で成り立ってます。他の村はわかりませんが……他の村?
「シルフさん、他の村って近くにどれくらいありますか?」
「え? ええと、獣人族が暮らす村が一つと普通の人間が暮らす村が二つ、それと
少々遠くなりますがドワーフの住む村が洞窟の地下に一つです」
やっぱりもういるんですねドワーフ……ふむ、ですが今回はちょうどいいかもしれません。
「フィーマさんとガノさん、お二人のデート先。ドワーフの住む村なんてのはどう思います?」




