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三十八話 人ならざる者たちのお茶会です

 王城、正式名称『ミーシリアナ城』。『神にもっとも近い場所』という意味らしいこのお城に私たちが今日招待されたのは、完成披露式典以外にも理由がありました。


 できたばかりのこの王城の庭園、わかりやすくロイヤルガーデンと呼ばれるこの場所で、お茶会を開くためでもありました。ロイヤルは確か王族がどうたらという意味だったはずなので、まさにそのまんまなネーミングですね。


 さて、なんでそんなことになったかと言うと、一つはフィーマさんがナノさんたちと約束を交わしたからです。


『魔法を教える代わりに、お城が完成したらそこで楽しくお話をすること』


 それがナノさんたちが人間……ややこしいのでここから先はエルフで統一しますか。エルフたちとした約束だそうです。エルフたちと言うよりも、主にフィーマさんとですが。


 ナノさんたちが主賓とまでは知りませんでしたが、私たちもよければぜひに、と呼ばれてここにいるわけです。


「それにしても、いい場所ですねここ」


 土地だけはムダに広い森のそばに建つこのお城は、建物自体はさほど大きくありませんが庭園は立派なものでした。まず洋風のかわいらしい屋根付きの東屋があるのですが、学校の教室一つ分はありそうです。しかも話によると、お城から続く廊下にもここにも魔法がかけられているので、雨が降っても濡れないのだとか。


 そして東屋の周りには、美しい植物が下品ではないくらいに飾り立てられ植えられていました。


 バラに似た植物やサクラに似た植物が今は旬のようで、一面が淡いピンク色に輝いています。バラのような植物だけでなく、サクラに似た植物も生け垣のツタに咲いているのが面白いですね。あっちに咲いているのは、アジサイでしょうか? 地球人が来たら間違いなく驚きですよ、季節めちゃくちゃですから。


「ここの庭は、わたしが主に担当したところなので……そう言っていただけると嬉しいです」


「え、フィーマさんがここ造ったんですか!?」


「ええ、シルフ様にも手伝っていただきまして」


 い、いつの間に!? 最近出かけることが増えたなーとは思っていましたけど、まさかそんな理由だったとは……


『わたしたちはお花をつんできて咲かせたですー!』


「ナノさんたちまで……え、じゃあなにもしてないのは私だけですか?」


 な、なんでしょうこの仲間はずれ感……いえフィーマさんが自立というかこんな風に立派になってくれたことはとても嬉しいんです。嬉しいんですけど、なんでしょう、少し寂しいです……


「さすがにミーシャ様に庭いじりをさせるのは気が咎めまして……すみません、止めたのはわたくしです」


 私がよほどショックを受けているように見えたのか、シルフさんがオロオロとした様子でそう言いました。こういう時思うんですけど、やっぱり私とみなさんの間に距離というか溝がある気がするんですよね……


「いえこちらこそ、気を使わせてしまったみたいで……すみません、気にしないでください」


 できれば今度は呼んでほしいですけど、たぶんそう言うと気を使いまくって次は絶対呼ばなければ! ってなっちゃう人たちですからね……


 もう少しフランクに付き合えたらいいんですけどねーと考えながら、とりあえず今は微妙に重くなってしまった空気の方をどうにかしましょう。


 用意された席に着くと、いかにもメイド! な方たちがお茶を淹れに来ました。シルフさんは実体化すれば飲めるそうなのでお菓子込みで普通に。私はそもそもカップが持てませんから、なにもなしです。ただそれではバランスが悪いと思ったのか、私の前にもティーカップは置かれました。中身はマナの濃い水だそうです。


「ところでここのメイドさんたちはどうしたんですか?」


「そちらの方々は給仕役に立候補してくださった方たちで……他にもこの王城を中心に、新しい仕事に就く者たちが増えております」


「そういえば、ガノさんはなにをしていらっしゃんるんです?」


「ごふぅっ!?」


 飲んでいたお茶が気管に入ったのか、盛大にむせていました。でも気になるじゃないですか。フィーマさんの片恋相手。


 むせてしまった以外の理由で顔を真っ赤に染めるフィーマさんは、助けを求めるように視線をさまよわせていました。もちろん、助け舟を出す人はいません。ついでに言えば、シルフさんもナノさんたちまで興味津々ですから、完全に四面楚歌です。


 しばらくうーあー言っていたフィーマさんでしたが、観念したのか蚊の泣くような細い声で答えました。


「わ、わたしの秘書です……」

『「「秘書!?」」』


 ナノさんたちまで合唱するほどの驚きでした。まさか秘書とは……


「フィーマさん、意外とやりますね……!」


「ああ、侮れないな」


『フィーちゃんヒューヒューなのですー!!』


「ううぅ……」


 恥ずかしいのか、机につっぷしてしまいました。でも普通驚きますって。フィーマさんと一番近くにいる時間が長いような役職じゃないですか。この分だと、本当にくっついてもおかしくないです。


「ガノという男は、今どこに?」


「が、ガノはその、新しい城の中をいち早く把握するんだと、はりきって探検、いえ視察に行きました!」


 探検……ええと、中身が少々子供っぽい方なのは伝わって来ました。でもまあこんな立派な建物見たら、ちょっとくらい探検したくなっても仕方ないですね。私も今度機会があれば中を見せてもらいましょう。


『ミーシャ様にはヒューヒューな人はいないのですー?』

「ふあっ!?」


 と、とんでもない方向から飛び火がっ!? ていうかナノさんたち、ガールズトーク的なのもいけるんですねそれとも面白がってるだけですかねぇ!?


 私の答えが気になるようで、二人ともキラキラした目でこっちを見て来ましたよ……二人の期待するような回答はできないのですがね……


「残念ながらいませんよ。大昔ならいざ知らず、今の私に男性の知り合い自体――」

『大昔ならいたですー?』

「ナノさんたち!?」


 そこ答える必要あります!?


「今も昔もいませんよ! 男子にあまり興味ないですし……」


「でも少しくらいはあるのでは……」


「珍しいですねフィーマさんが食いつくんですか!?」


「わたくしもそこ興味あります!!」


「シルフさんまで!?」


 そのまま根掘り葉掘り昔のことを訊かれ、どうにか解放されたのは陽が暮れる頃になりましたよ……まあ、楽しかったからいいんですけどね。


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