三十七話 ブラックな感じの歴史が…… 2
私がまだ世界で一人ぼっちで、魔法の開発をしていた頃。あの頃は世界に一人しかいないせいで変なテンションになっていたのです。だからその、ノリで厨二チックな詠唱の魔法考えちゃうのも仕方ないと思うんですよ……!
昔々なんとなくで作った呪文が詠唱されて取り乱した私は、けっこう長いことしゃがみこんでいました。そのせいで気づくのが遅れたのですが、今の魔法には妙なところがあったのです。
「あ、あの、フィーマさん」
「どうなさったのですかミーシャ様!? 突然取り乱して、なにかわたしの魔法に不備でも……!?」
「わたくしもいきなりでしたので、何事かと……」
「すみません、二人とも。ちょーっとブラックなヒストリーがハートにダイレクトアタックをかましまして……」
「「???」」
動揺し過ぎてどこかの英語混じりに話すおじさんみたいな口調になっていましたよ。そりゃ通じないですよね。周りにいたエルフな方々も、こっちを心配そうな顔でこちらを見てます。
周りの方々にはフィーマさんに大丈夫だと伝えてもらい、私はたった今できた放置するのは精神衛生上よろしくない質問をしました。
「ええと、とにかくフィーマさん。少々お聞きしたいことが」
「は、はい!!」
「今さっき使ったあの魔法、どこで覚えたんですか?」
少なくとも、私じゃないです。そもそも私、誰かに教えられるほど魔法の細かいこと知らないんですよ。理論がうんぬんを考えて魔法を作ったわけではないので、私と同じことをしたところで他の方に再現性があるかは不明なのです。
けれどフィーマさんが昔私の作った魔法を使っているということは、再現性あったんですね。うーん、これはナノさんたちに本格的に話聞かなきゃダメですかねぇ……たいてい魔法絡みの事件は、あの子たちに原因ありますし。
私の質問に、フィーマさんはサラリと答えました。
「ナノ様たちからです」
「な、なるほどそれで……」
納得です。というか、最初に思いつくべき可能性でした。あの子たちなら私が昔に作った魔法を知っていたとしても、なんら不思議ではありません。というか、ナノさんたちは私が作った魔法から生まれてるわけですし。
「ちなみにですがフィーマさん。魔法の使い方って、どういう風に聞きました?」
「え、ええと、ナノ様たちに教えていただいたのは、体内にあるマナと自然の中に存在するマナとを練り上げ、呪文を正確に唱えれば発動すると」
「ふむ……」
魔法の使い方そのものは、簡単でよく聞くタイプのものですね。私がどういう原理で魔法を発動させているのかは不明でしたが、案外大差はないのかもしれません。
ついでに言うと、フィーマさん方人間はナノさんたちのことを様付けで呼ぶんですね。
「フィーマさんの他に、魔法が使える方は?」
「わたしの他、ですか……だいたいの者は使えるのですが、そんちょ、いえあの、ドゥンガさ、んだけはその、ほぼ使えず……」
ドゥンガのことをなんて呼んだらいいのかわからなかったらしく、大混乱してました。まあ、少し前まで敬称というか役職で呼んでましたからね。仕方ないでしょう。村長じゃなくなりましたし、自分の方が立場上になったわけですから様付けもおかしいですから。
それにしても、ドゥンガのアホだけ使えないのはどういう理由なんでしょうね? 考えられるとすると、ナノさんたちに嫌われたとかでしょうか。それ以前に、魔法の得意不得意はどういう基準なのかがわからないですから判断のしようがないんですが。
そんなことを考えていると、にわかに辺りが騒がしくなり始めました。どこからか響いて来るその声は、どこか久しぶりな気がするものです。
『おめでとなのですー! フィーちゃんすごいのですー!!』
とても楽しげなその声は、間違いなくナノさんたちのものでした。
「ナノさん方、ずいぶんと久しぶりな気がしますね」
私がナノさんたちに声をかけると、どことなく寂しそうな返事がありました。
『さいきんミーシャ様、お忙しかったですからー。お話してくれなくてさびしかったのですー』
しゅーんとした様子でしゃべるナノさんたちは、本当に落ち込んでいるようでした。
「ごめんなさい……そういえば最近、私の方から話しかけることってほとんどありませんでしたね」
こう言うのは申し訳ないのですが、ナノさんたちに空気が読めるとは思ってもみませんでした。だからこそ、私から話しかけようとは思ってなかったわけです。今度から暇がある時は、なるべく話しかけるようにしましょう。
『だいじょぶなのですー! でもこんどの時はすごくお話するですー!!』
「ええ、約束です」
サイズ的に指切りは出来ませんが、それくらいの気持ちで約束です。なんなら、針千本は飲みますよ!
『ではでは、たのしーたのしーおいわいなのですー!!』
とてもとても楽しそうなその声が響くとともに、空でなにかが弾けたではありませんか。
「これは……花びら?」
ひらひらと虚空から降り注ぐのは、色とりどりに輝く花びらでした。たくさんの色があるのはもちろん、途中で色や形が変わったり、お祝いのメッセージに化けたりもします。
ナノさんたちは楽しいことが大好きですから、パーティーと聞いてわざわざお祝いをしに来てくれたのでしょう。それに今では私や精霊のみなさんだけではなく、エルフ化したフィーマさんたちとも話ができるようになったわけです。話し相手が増えたのが、本当に嬉しいのでしょう。
「ありがとうございます、ナノさま方」
『いえいえなのですー、またお話しようなのですー!!』
元気にキャッキャッとはしゃいで言ったナノさんたちは、そのままパーティーが終わるまでずっとフィーマさんの周囲を回り続けたのでした。




