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三十六話 ブラックな感じの歴史が…… 1

 フィーマさんが王さまになってから、早一か月が経ちました。


 エルフ化したフォスト村のみなさんも体の変化に慣れ、ずいぶんと余裕が出て来たみたいです。フィーマさんから聞くかぎり、扱いがまったく変わったようで戸惑っていました。まあ、百八十度変わりましたから、仕方ないですね。


 今日はフィーマさんが王に就任して、初の式典だそうです。なんでも、つい昨日王城が完成したとかで。


「一か月未満でお城って建てられるものなんですかね……?」


 かなり疑問でしたが、建ったのは本当みたいです。最近はフィーマさんが忙しいので会いに行くのを控えていたので、あの村の事情に疎くなってしまいました。連日お仕事のフィーマさんに会いに来させるなんて、もってのほかですし。


 そんなこんなで呼ばれるまで行くのを遠慮していたわけなのですが、まさか城が建てた記念パーティーするから来てくれ、なんて言われるとは思ってもみませんでした。


 使者の方から受け取った招待状を手に、私とシルフさんはフォスト村へと向かいました。ちなみに、本日からフォスト村から王都フォストに名称を改めるのだとか。王都もなにも、他の村とかと交流はあまりないので名乗っても意味ないんですけどね。そもそも、ほとんど認識されてませんから。


「あ、あの、ミーシャ様」


「どうしました?」


 王都フォストへ向かう道中、脳内で色々ツッコミを入れていた私に声をかけて来たのは、隣を歩くなぜか不安そうなシルフさんです。


「ええと、なぜわたくしはこのような格好をしているのでしょう……?」


 困った顔をするシルフさんが着ているのは、深緑色のドレスでした。本当は肩が出るデザインにしたかったのですが、その、体型的にあまりに似合わなかったのでケープつきのロングドレスにしたのです。


 ちなみに私はデザイン画を見せただけで、シルフさん自身がそう見えるように魔法を使っています。


「どうしてもなにも、これから出るのはパーティーですからね。ドレスコードくらいあるかと」


 いつもの服でもさほど問題ないでしょうが、こっちの方がキレイなので押し通しました。私は普段と変わりませんが、元がドレスなのでセーフです。


 ヒラヒラで透ける素材なのが気になるのか、シルフさんはずっと困惑顔でした。それでも服を元に戻そうとしないところが、シルフさんの好きなところです。


 道中そんなことがありながらも、私達は王都フォストに到着しました。


『女神ミーシャ様、風の精霊シルフ様、ようこそおいでくださいました!!』


 パンパンと、あちこちからクラッカーを鳴らしたような音が響き渡り、次いで万雷の拍手が鳴り響きました。


「本日はお招きいただき、ありがとうございます」


「いえいえそんな、来ていただいているのはこちらの都合ですから!!」


 一番近くにいた名も知らない女性が、ぶんぶんと手と首を振っていました。


 とりあえず一人一人と話していると大変なことになるので、フィーマさんの元へと向かいました。


「こんにちは、フィーマさん」


「息災だったか?」


「ミーシャ様、シルフ様!!」


 私達に気づいたフィーマさんは、うれしそうな顔でこっちまで歩いて来ました。


「お二人とも、お久しぶりです」


「久しぶり……になりますね、たしかに」


 そうですよね、一か月ってまあまあ久しぶりな類ですよね。私の感覚ですと、半日経ったかどうかくらいですが。


「それにしても、すごいな。こんな建物、本当にお前達人間だけで建てられたのか?」


 シルフさんがそう言って見上げたのは、こぢんまりとはしていますが造りは立派なお城でした。サイズ的にはお城と言うよりも、砦の方が近いでしょうか。高さ的にはせいぜい三階建て程度ですし。


 それでもこの時代の人間が造ったにしては、過度に立派な部類です。


「私も同じことを思っていました。これには、なにか秘密でも?」


 そう訊いてみると、フィーマさんは胸を張ってこう答えました。


「実はわたし達、神の御業――魔法を扱えるようになったのです! と言っても、ミーシャ様の使うものの劣化品もいいところですが」


「ホントですか? すごいですね……」


 なるほど、魔法を扱えるようになったおかげで一気に技術が進歩したわけですね。だとしても、ひと月もせず魔法を使えるようになるとは……


「あ、よかったら見て行ってください! わたし達人間――今はエルフですが、エルフの現時点での最高威力の魔法を!!」


 ふむ、今の人間の限界値を知っておくのは、いいことですね。あとでなにか会った時に、行動の指針にもなりますし。


「では、お願いします。あ、でも周りに被害が出ないように――」


 私は適当な強度で結界を編み、空に展開しました。あの中でしたら、多少やばい魔法でも対処のしようがあるので。


 私が結界を張ったのを確認したフィーマさんは、どこから出したのか三十センチ弱くらいの細い杖を結界の中へと向けました。杖の件も気になりますが、どうやらちゃんと結界が見えているようです。ということは、普通にナノさん達とも交流できるようになっているかもですね。


 そんなことを考えていると、フィーマさんの口から静かな詠唱が――


「『風よ。数多の世界を吹き荒ぶ、汝の力を我が手に。』」


 ん? んんっ!?


「『踊り狂うは罪深き木っ端どもの亡骸。』」


 ちょ、ちょっと待ってください、これって……!?


「『出でよ!美しき旋風の調べ(ウィンド・ハーモニー)』」


 きゃー!? きゃあああ!?


 バシュンと大きな音が聞こえたかと思うと、結界内で風が弾けたのがわかりました。わかりましたけど、これって……


「どうですかミーシャ様、どうやらわたし風属性の魔法が得意なようで――って、いかがなさいました!?」


「いえあの、少々黒歴史がですね……」


 うぅ、いまさらあんな昔にテキトーな感じで考えた魔法の詠唱出して来なくてもいいじゃないですかぁ……!!


 しばらくボール状態で丸くなるしかない私の周りで、フィーマさんもシルフさんもオロオロとしていたのでした。



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