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三倍段  作者: 海星
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4/7

初勝利の余韻

 団体戦で僕が1勝しても、他の仲間達が1勝もしなかったから、普通に一回戦負けだ。

 別にどうという事はない。

 試合後、顧問に集められる。

 まあ、僕は関係ないよね。

 だって唯一の勝利あげたもん。

 なのに顧問は僕に名指しで言う。

 「おい、太一。

 一勝した後の次鋒戦、アレはなんだ?

 もう、面倒臭くなってただろう?」

 中々の洞察力だ。

 ぶっちゃけ五連勝しなきゃチームとしての勝ちはない。

 何でか?

 今まで散々五タコ喰らってきたからだよ。

 僕が負けた後の4人は4連敗を喰らう。

 僕が4連勝したって負けは負けだ。

 だったら、次鋒戦で負けとくのが、体力温存だろ?

 「すいません。

 もう、腕が上がらなかったんです」僕はそれらしい事を言った。

 それより僕は顧問に聞きたい事がある。

 『何で僕が先鋒なのか?』

 実はそれに答えはない。

 僕が異世界に飛ばされている間、僕の存在はこの世界から消えている。

 顧問は僕の存在を忘れているから、当然団体戦メンバーには入っていない。

 顧問が団体戦のメンバーを組んだところで僕が異世界から帰還した。

 「そういや、太一がいたんだった。

 でも、もうメンバー表提出しちゃった。

 いまから変更効くかな?

 よかった。じゃあ、先鋒のヤツと入れ換えて太一をメンバーに入れよう」と。

 「それはだな・・・」

 僕が顧問の苦しい言い訳を聞こうとした瞬間に目線が変わる。

 ここはどこだ?

 またトイレだ。

 だが、さっきまでのトイレじゃない。

 キチンと屋根もついてる。

 『多目的トイレ』だ。

 『30分経ちました。

 再び異世界へ戻ります』

 ふざけんな。

 戻るべきは日本であって、異世界になんで僕が行かなきゃいけないんだよ?

 『今回のセーブポイントはキチンと屋根がついていて雨露を凌げます。

 密閉性も高く、並のモンスターは攻め入れません。

 それに水だけは飲み放題です!』

 何でトイレの水を飲まなきゃいけないんだよ!?

 『多目的トイレの蛇口から出る水は、飲料水です。

 飲んでも問題ありません』

 あぁ、そりゃよかった。

 ・・・じゃないよ!

 どういう仕組みなんだよ!?

 『それは天界の禁則事項です。

 教える事は出来ません』

 つーか、僕の心を読んでないか?

 『読んでますよ?

 それが何か?

 女神ですもん。

 それぐらいはしますよ。

 諦めて下さい』

 わかったよ。

 今、僕はどういう状態なのか教えてよ。

 『神は定期的に異世界に地球から人々を連れて行きます。

 選考基準は先ず第一に「善良であること」

 第二に「凡庸であること」

 地球で必要な人財を異世界に連れていく事は出来ません。

 「いてもいなくてもどうでも良い」人物を異世界に拉致・・・いや、連れて行くのです。

 あなたは異世界行きの人物に選ばれました。

 おめでとうございます』

 嬉しくない!

 僕を神奈川に帰してくれ!

 『大丈夫!

 貴方は地球に、日本に、神奈川に必要ありません!

 そんな人物が異世界行きに選ばれています!』

 無礼な事を言うな!

 日本に僕を必要としてくれている人ぐらいいるわ!

 『当然です。

 誰かに全く必要とされない人物なんて、異世界だっていりません。

 貴方を必要とする人々はいます。

 ですがそれは「代わりの利く必要さ」です。

 貴方の代わりなんてどこにでも、いくらでもいます!

 それに日本の貴方の知り合いは貴方が異世界に行ってる間、貴方の存在は忘れています』

 この女神おかしいんじゃないか?

 それを聞いて僕が異世界でやる気を出すと思うか?

 異世界で忘れられたまま命を落とす可能性もあるんだぞ?

 『だから貴方には異世界で生き抜く力を与えたではないですか?

 貴方は既に異世界でゴブリンに2回殺されているはずです。

 貴方は簡単に死にます。

 ですが簡単に生き返ります』

 そうだよ。

 生き返るって何だよ?

 『良く聞いてくれました!

 貴方は「悔しい」「納得いかない」と思う限り死にません』

 どういうメカニズムなんだよ!

 『それは禁則事項で語れません』

 でも反対に"もう納得した。死んでも良い"と思えば死んでしまうの?

 『そうです。

 貴方がゴブリンを倒して満足してしまうなら、次に貴方が死んだ時、貴方は生き返りません。

 貴方が「悔しい」「もっと強くなりたい」と考えるなら、貴方は次に死んだ時も必ずセープ地点のトイレに死に戻ります』

 何でトイレなんだよ!

 『それはこちらが聞きたい。

 貴方を異世界に招待しようとした時、貴方はトイレから出て来なかった。

 もうタイムオーバーが近くて、しょうがなく私はトイレごと貴方を異世界に連れて行くしかなかったのです』

 僕がトイレにこもってなかったら、トイレがセーブポイントじゃなかった可能性もあるの!?

 『トイレがセーブポイントになるのはレアケースです』

 そうか、ある意味、僕がトイレを本拠地に選んだのか。

 『貴方はモンスターを倒すたびに"日本で過ごせる時間"が加算されます。

 ゴブリンであれば、最初は30分。

 だから貴方は30分日本に戻れていました。

 本来なら日本に戻る時間タイミングは貴方が自由に選べますが、最初はこちらで日本に戻るタイミングを選ばせてもらいました。

 で、死ぬたびにトイレに戻る、と。

 気を付ける事は、貴方が死ぬと"貴方が日本で過ごせる時間"はリセットされます。

 あまり日本で過ごす時間を貯めようとすると、折角貯めた時間がリセットされます』

 でもある程度貯めないと、さっきみたいに『いきなりトイレに』連れて行かれるんだよな?

 必ず敵が強くなるタイミングはあるし、どれだけ慎重だとしても負ける時は訪れるでしょう。

 程度が必要だという事です』

 そんなアドバイスは余計なんだよ!

 僕は日本と異世界を行ったり来たりしたくないんだよ!

 異世界の勇者にだってなりたくないし!

 『だから言ってるでしょう?

 これから先、地球にもピンチはあります。

 その時に地球の救世主を異世界に連れて行く訳にはいかないんです。

 連れて行くのは「善人性」がある程度ある「役立たず」な訳です』

 自分で言うのも情けないけど、そんな役立たず異世界に連れて行ってもしょうがないじゃん!

 『かつて有能な者を他の世界から連れてきていました。

 すると、有能な者を連れてこられた元の世界が滅んでしまったのです。

 それだけではありません。

 『魔なる者』を退けた連れてこられた者が寝ている間に殺される、というクーデターが起きました。

 結局、他の世界から連れてこられた者を心から信じる事は出来ません。

 だから他の世界から連れて来られた者に何より優先して絶対必要とされるのは「善人性」なのです。

 貴方は他のパラメーターはともかく「善人性』だけは飛び抜けて高い。

 異世界に連れて来られるのも納得な訳です』

 『善人性』が高くても、闘う能力が低かったらどうにもならないだろう!

 僕はゴブリンに1勝2敗で負け越してるぞ?

 『最後に勝てば良いんです』

 何でだよ?

 『勝てば経験値が入ります。

 その分強くなります』

 経験値なんて誰でもモンスターを倒せば入るんじゃないの?

 異世界の人間は経験値が入ります。

 ですが、地球の人間は経験値が入りません。

 その代わり地球の人間は身体を鍛えられるのです。

 どちらが良い、という事はありません。

 経験を積む方法が違う、という話です。

 しかし貴方は二重に経験を積む方法を得ています。

 経験値も得られるし、身体も鍛えられます。

 私が貴方の経験獲得方法をいじりましたので。

 そして貴方は"悔しい"と感じる限りは死にません。死んでも生き返ります。

 どうですか!?』

 どうですか、じゃない!

 日本に帰らせてー!

 別に英雄願望とかないんだよー!


 とりあえず異世界(トイレ)で過ごすことになった。

 女神と過ごせるなら、と思ってたら、女神は声だけだし『それじゃあ私はこれで』って、おしゃべりに付き合ってくれるのは一日二時間ぐらいらしい。

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