パクチー
〜妹視点〜
まさかお姉ちゃんが正喜お兄ちゃんと私が走るのについてくるとは思わなかった。
序盤でヘトヘトになったお姉ちゃんを正喜お兄ちゃんがおぶって何とか校門をくぐる・・・そして、遅刻を免れる。
それがいつものパターンだった。
なのにお姉ちゃんは校門まで文句を言わないで走り抜けた。
本当の事を言えば、私は正喜お兄ちゃんに何食わぬ顔でついていくお姉ちゃんに、走ってついていくだけで精一杯だった。
いや、ついていけてなかった。
お姉ちゃんがバテるのが折り込み済みの時間設定だったから、結果的にかなり遅刻まで余裕が出来てしまった。
私は遥か前を行くお兄ちゃんとお姉ちゃんが辛うじて見えていただけだが、
お姉ちゃん、いつからこんなに体力がついたのかな?
そして気のせいじゃなければ、お姉ちゃん、お兄ちゃんの事を煽ってたよね?
―――――……―…………
〜正喜視点〜
ライチに追い抜かれそうだった。
意地で何とか先頭を走った。
アイツ、いつの間に体力をつけたんだ?
しかし負けられない。
ライチに勝てる状態じゃないと告白出来ない。
『告白相手よりも優れているべし』
これは日本人が持っているおかしな考え方らしい。
別に好きな相手より優れている必要はない。
相手に惚れてもらう程度に自分を磨けばそれで良い。
しかしそうは考えられないのが人だ。
好きな女の前じゃ格好つけたい。
だから苦手のピーマンも食べれるフリをしてしまう。
当然男だった太一は正喜がピーマンを見るのすら、イヤな事を知っているのだが。
それが女神の描いたシナリオと若干矛盾している。
因みに太一もピーマンは大の苦手だ。
太一の記憶では正喜と二人でギャーギャー言いながら、給食にピーマンが出たら押し付けあっていた。
しかし正喜の記憶ではライチのピーマンは正喜が王子さまのように食べていた。
余談ではあるが、ライチはパクチーが大嫌いだ。
冗談抜きで、『あんなもんを食ったら死ぬ』と思っている。
異世界は冷蔵技術が発展していない。
機械文明は未発達ではあるが、その代わりに魔法文明が発達している。
だから冷蔵、冷凍技術に発展の余地がない訳じゃないが、今は発展していない。
だから、香草をやたら料理に入れる。
料理が古くなってきた時の臭いを隠すためだ。
地球でも、インドなど暑いところで料理が傷みやすいところではスパイスが発展する。
だから異世界ではとにかく、ほとんどの料理が『パクチー』みたいな味がするのだ。
そこで、ライチは異世界の人々から『冷蔵技術の母』と呼ばれるようになる。
しかし真実は『パクチーが食えない』
それだけの話だ。




