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三倍段  作者: 海星
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ゴリラ

 アルバイトは見つけられなかったが『当面の食い物がない』という緊急の問題だけは何とかなった。

 といっても半グレのアジトに大量にあった。

 オーソドックスなシーフードのカップ麺なのだが。

 どれだけ盗み放題でも、持って帰れる段ボールは三個が限界だった。

 段ボール一個ずつ、種類を分ける事も考えたが、同じ種類のカップ麺は一ヵ所に大量につんであるようだし、盗む種類のカップ麺が一種類の方が早く逃げ帰れるような気がして後ろ髪を引かれながらも決断した。

 カレーヌードルも本当は捨てがたかった。


 マジか。

 コイツら、僕らが逃げないように靴を隠してやがる!

 ・・・でもバカだ。

 隠しといた靴、みんな同じところに隠しておけば、見つかった時も瞬間で全員分が見つかっちゃうだろ。

 それにカップ麺を探して、段ボール箱の中を僕が物色してる時に、同じように段ボール箱の中に靴を隠しておくのは悪手だ。


 結局アジトから逃げ出したのは僕を含めて、5人。


 5人の中に裏切り者がいる可能性が高い。

 桜木は元プロボクサーだった。

 でも闇バイトを申し込んで来るヤツにも、格闘技経験者もいれば、相当悪いヤツもいるだろう。

 そんなヤツらをたった3人で制圧出来ると考えてるのか?

 『味方の中に半グレ達と通じているヤツがいるかも知れない』

 その疑心暗鬼は一緒に監禁されている連中に「一緒に逃げよう」「反旗を翻そう」と言いにくい雰囲気を作る。

 でも勝手に僕が桜木を倒しちゃった。

 「おい、勝手に何してるんだよ!」

 「でもこのタイミングを逃すわけにはいかんよな」

 「えーい、逃げちゃえ!」

 監禁されている人々はとりあえず僕についてきた。

 5人の内訳は男が2人、女が3人。

 3人の女を見ればすぐにわかる。

 この3人は色街か、売春窟に売り払われる予定だったらしい。

 見てくれも悪くないし、僕を除いてプロポーションも悪くない。

 ・・・となれば、2人の男のどちらかかが半グレ一味の可能性が高い。


 しかし僕の観察眼をなめないで欲しい。

 逃げた男のうちの一人『赤木』が半グレのリーダーだ。

 理由は簡単、赤木はゴリラみたいな顔をしていたからだ。


 「この中に半グレと通じているヤツが一人いる!」僕の気分はコナン君だ。

 「なぜバレたんだー!?」とメガネをかけたもう一人の男。

 偽名は『木暮』

 符丁は『メガネくん』

 『ゴリ』じゃねーのか。

 つーか、簡単に白状しすぎだよ。


 しかし油断は禁物だ。

 こういう一見、弱そうなヤツが無茶苦茶強かったりする。

 ・・・と思っていたら『メガネくん』が何もないところでコケた。

 そんなん監禁されてる5人で『メガネくん』を取り押さえるよね。

 結局『メガネくん』が半グレグループのリーダーだった理由がわからないまま『メガネくん』は猿轡している。

 もう、しゃべろうたって無理な話だ。


 『メガネくん』を後ろ手に縛り上げている時に僕が『ゴリ』だと思い込んでいたヤツに 話を聞く。

 「『ゴリ』じゃないの?」と。

 「もう『ゴリ』って言われ飽きてる」との事。

 なんかごめん。

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