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三倍段  作者: 海星
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半グレ

 「名前を教えろ」と桜木花道。

 何て呼べば良いか、わからないからだろう。

 「『勅使河原(てしがはら)だ。』

 『勅使河原真依(てしがはらまい)』だ。

 『三児の母、シングルマザー、求職中、32歳』だ」

 「・・・人を見た目で判断するものじゃないな。

 まさか経産婦だとは思わなかった」少し冷静になったのか、反省したように『桜木花道』が言う。

 「言われ慣れてる。

 気にするな」と僕。

 だってデタラメなんだから。

 だって自分の事を『桜木花道』だとか言う嘘つきに自分だけ本当の名前を教える義務なんてなくない?

 普通に考えなよ。

 『ドラゴンボール』大好きな犯罪者が自分の事を『オッス!オラ悟空!』とか言う?

 一昔前、詐偽集団のサブリーダーが『ルフィ』とか名乗ってた事あったじゃん?

 何でそれにマスコミが乗ってやる義理があんのさ?

 んなもんシカトしときゃ良いのに、やたらとニュースじゃ『ルフィと名乗る男』とか報道してさ。

 同じように勝手に『桜木花道』とか名乗ってるんだから「はいはい、わかったわかった」てこっちも偽名伝えるだけの話だよ。


 「で、その真依(まい)さんが、桜木(おれ)に勝てると?

 一対一だから?

 その根拠はどこから来る?

 桜木(おれ)は元々プロボクサーだぞ?

 やめとけ、お前が勝てる可能性は万に一つもない」

 「教えてもらってありがたい。

 でも知ったことか。

 僕はアンタなんて大して強くない、と思ってるよ」

 僕はわざと『桜木』を煽るような事を言う。

 最悪なのが『殺されずに制圧されること』。

 『死に戻り』が発動しないで『桜木』に負けた事実だけが残る事。

 だから僕は『桜木』を怒らせて、確実に僕の命を狙ってくるように仕向ける。

 本来、半グレなんて煽りたくなんてない。

 日本で敵を倒しても経験値は入らない。

 それに人間同士で殺し合いとか、本当なら一番避けたい。

 『百害あって一利なし』の行動だ。

 だいたい過剰防衛の犯罪行為だろうし。

 でもどうしても今、闇バイトのアジトに監禁されている事実を打開したい。


 とにかく僕は『考えが足りない』んだ。

 妹は最初から『闇バイトには気をつけろ』と言ってた。

 深く考えてたら、今回のトラブルは避けられたはずだ。

 そんなこと今さら言っても仕方がない。

 桜木がオーソドックスなボクサースタイルで構える。

 仮眠室じゃ桜木の仲間達が寝ている。

 ソイツらが起きてきたら勝ち目はない。

 勝負を早くつけないと。


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