ライチ
棒は確かに小さかった。
それは認める。
だけど『玉』は2つキチンとライチみたいなモノがあったはずだ。
それがない。
「ライチ!」と嶺花様が叫ぶ。
「誰が『ライチ』やねん!
下品だな!」思わず僕は嶺花様にツッコんでしまう。
「え?
貴女の名前って下品なの?」と嶺花様。
「別に下品じゃないよ。
何なら『太一』って呼んでも良いですよ?」
同級生なのに僕は思わず敬語になってしまう。
「だから呼んでるじゃない。
『ライチ』って!」と嶺花様。
語感が『ライチ』と『太一』で似てるのか。
つまり嶺花様は、有り得ない事だとは思うが、僕をその『ライチ』という女の子と勘違いしているらしい。
僕、女の子と間違われた事ないよ?
どれだけゴリラみたいな女の子だよ。
きっと女子柔道部にいるんだよな?
この柔道着についてるゼッケンを見て、他の高校の生徒と見間違う訳がない。
ここまで嶺花様が僕に見せてきた、フレンドリーさの正体が見えてきた。
しかし結構面倒くさい事になったな。
嶺花様は僕を女子柔道部の仲間である、『ライチ』さんとかいうゴリラ女と思っている。
僕は一刻でも早く着替えたいのに、嶺花様は僕が男子更衣室に入って行く事を許さない。
それどころか嶺花様は僕を女子更衣室に引っ張って行こうとしている。
ピンチだ。
「実は女です」で押し通すにはいくら何でも無理があるだろう。
「あんまり変な行動取らないでよ!
同じクラスで、幼馴染みの貴女が『正喜くん』を私に紹介してくれるんでしょ?
貴女が『変人』とか『痴女』扱いされると、私の『正喜くん』とのツテがなくなるんだからね!」
始めて嶺花様に接触してうかれていたけど、早くも失恋した。
文武両道、引く手数多な嶺花様が何で柔道部に入ったのか、謎とされてきた。
何の事はない。
『惚れた男が柔道部に入ったから、自分も柔道部に入った』のだ。
その動機を『不純だ!』などと、責める権利が僕にはあるか?
嶺花様が柔道部に入ってなかったら、柔道部に何度も見学に行ったか?
で見学に行った先で正喜に「同じクラスだよな?一緒に柔道やろうぜ!」と強引に誘われなかったら柔道部に入ったか?
待てよ?
ウチのクラスに僕と見間違えるような、ゴリラみたいな女いたか?
嶺花様は同じクラスのゴリラ女を僕と勘違いしてるんだよな?
少し考え込んでいる間に僕は嶺花に手首を引っ張られて、女子更衣室に入ってしまった。
お父さん、お母さんごめんなさい。
太一は犯罪者となりました。




