アフロディーテ
「ねえ、アフロディーテ
貴女、『美の神』『豊穣の神』よね?
何で武道家を眷族にしたの?」
「私も護身術を昔習った事もあるもの。
それにあの子『武道家』ってほど武人じゃないのよ。
こないだ初めて試合で勝ってたし」
「そんな子を闘わせるために他の世界に連れて行ったらダメじゃない!」
「私もまさか連れていけるとは思わなかったのよ。
『この人物は貴女の管轄ではありません』とか言って異世界にあの子連れていけないと思ったら連れていけちゃったのよ!
しかも激弱でスライムにもゴブリンにも何回も負けちゃうし。
『異世界行き取り消し』って上に言われちゃいそうで半分諦めてたわよ。
けど何とかサマになってきたし、何とかなりそうね」
「・・・なんとかしちゃって良いの?」
「どういう意味?」
「何で貴女が戦闘職を眷族にしなきゃいけないのよ?」
それに男性を眷族にしちゃって良いの?」
「あ、それね」
「ここ数千万年という神の歴史で『豊穣の女神』『愛の女神』が男の眷族を持ったという話は聞いた事がないわ。
ましてや戦闘職・・・」
「それが男かどうかも怪しいのよ」
「どう考えても男でしょ?」
「私も男だと思ってたんだけど、男にしてはアレが小さいのよ!」
「『アレ』って『ドレ』よ?」
「『アレ』は『アレ』よ!
想像してるモノで間違いないわ。
もっとも想像の百倍小さいでしょうけど。
でもその心配ももうないわ」
「どういう意味?」
「『出来ない事』は『どう頑張っても出来ない』のよ。
もうあの子は私の眷族なのよ。
もうすでにあの子は『私の眷族になれた』のよ」
「へえ!
男性でも眷族になれるのね!」
「なれないわよ」
「?
どういう事?」
「あの子は既に女性として私の眷族になれたのよ」
「よくわからないけど眷族になった子は、今、女の子なのよね?」
「そうだと思うわ。
ちょうど目を醒ましたところみたいだし、しばらく様子を見ましょう」
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何がどうなったのかわからない。
自分が誰かもよく思い出せない。
『お目覚めかしら?』
女神が少女に問う。
少女は『女神』と聞かなくても、その神々しさで『薄着の女性』が女神だとわかる。
「ここはどこですか?
天界ですか?」
違う。
異世界の多目的トイレだ。
「腹を減らしたアンタが勝手に毒キノコを食ったからここに担ぎ込まれたんだよ」と本当の事は言わない。
忘れてるなら好都合だ。
やっぱり戦闘職の眷族なんて、私には合わなかったのだ。
忘れてるなら『美の女神の眷族』として召喚した事にしよう。
しかしこの子は薄着なんてもんじゃない。
なんせ柔道着をめくったら、下は裸なんだから。
普通、女の子が柔道をする時は柔道着の下にTシャツもスポブラも付ける。
だけど太一はスッポンポンだ。
なんならこの瞬間もはだけている。
女神は太一の胸を凝視している。
そして吐き捨てるように言った。
『この貧乳が!』
太一は女性になったばかりだ。
これから乳は育つかも知れない。
しかし女神はここ数十万年育ってはいない。
つまり女神は『この瞬間、貧乳を見下したくて、太一を眷族にしたかも知れない』のだ。
そもそも太一は自分が女体化した事に気付いていない。




