自覚
もう夕方だ。
なのにまともなモノは、この異世界に来て食べてない。
早くスライム狩りを終えて食材の狩りを始めよう。
湿地の沼にスライムがいる。
夕方になったら集まって来るのか、湿地の沼にはスライムが3匹もいる。
無理だ、倒せる訳がないだろうが!
1匹相手に勝った事がないんだぞ!
撤退だ!・・・と思ったけど、どうもスライム達はどうやら僕に気付いているみたいだ。
朝、昼はスライムは穏やかな性格だけど、夜に近付くにつれ獰猛な性格になるみたいだ。
つまり遅くなればなるほど、スライムはどんどん獰猛な性格になるらしい。
もう今、3匹のスライムを相手にするしかない。
僕は水鉄砲にした竹筒にチューっと水筒の中の塩水をこめる。
スライム達は襲いかかってくる前にピタリと動きを止める。
猫でも攻撃の前にピタリと止まって狙いを攻撃対象に定める事がある。
スライムも同様だろう。
先手必勝!
スライムが攻撃してくる前に塩水をスライムにかける。
スライムの細胞壁に塩水がかかったところが、ドロッと溶ける。
殴ったら鋼鉄のような硬さだったスライムの細胞壁が溶ける。
『浸透圧』
海水魚が淡水では基本的には生きていけないように、塩をかけられたナメクジが溶けるように・・・。
水鉄砲で塩水をかけられたスライムの細胞壁が溶ける。
しかし、塩水がかかって細胞壁に空いたスライムの穴は時間とともに塞がるらしい。
どうすんだよ?
塩水かけるのは良いけど、せっかくスライムの身体に空けた穴も時間とともに塞がっちまう。
穴が塞がるなら出来る事は時間稼ぎだけじゃんか!
しかも敵は3匹もいる。
塩水も有限だ。
さて、どうするか?
スライムを挑発する。
スライムに感情はないようで、挑発された個体は僕を追ってくる。
それは今まで散々、試した事だった。
その挑発を塩水をかけ、身体の細胞壁に穴を空けたスライムにするのだ。
挑発されたスライムは激昂する。
思った通りだ、スライムには感情がある。
身体に筋肉のないスライムは細胞膜内の体液を動かす事で、身体を動かしていた。
塩水をかけ、細胞膜に穴を空けたスライムを挑発して僕の方へ呼ぶ。
挑発されたスライムは細胞膜に空いた穴から体液をドロドロと溢しながら僕の方へ向かって来る。
体液を溢したスライムはその分小さくなる。
小さくなったスライムは小さくなる度に、能力は落ちて行くようで、動きも鈍くなっていく。
しかし、倒せなきゃ意味がない。
この異世界の人間が如何にスライムを近付けないようにしているかは、だいたい予測がついた。
異世界の人間は塩をスライムよけにしている。
それがわかったところでどうしようもない。
倒さなければレベルは上がらない。
スライムの細胞膜はとてつもなく硬くなる。
いくら小さくしても殺せない。
強くならなきゃこの局面は抜け出せないし、生き残れない。
そして何より、塩水がなくなりそうだ。
考えろ、スライムの『倒し方』を!
僕は3匹のスライムと追いかけっこをしながら、塩水をかなりかけた。
最初のうちは危ない事も多かったが、ここまで3匹のスライムを小さくしてしまえば、全く危険はない。
だいたい新生児のハイハイぐらいの速さで3匹のスライムは追いかけてくる。
うーん、どうすればスライムを殺せるだろうか?
油断、というか少し考え込んでいた。
1匹のスライムが僕の右足に絡みついてこようとしている!
慌てる。
小さくなった、と言ってもスライムの酸が弱くなった訳じゃない。
慌てて水筒の塩水を少し溢す。
危ねえ!命綱なのに!
その塩水が右足に絡みつこうとしていたスライムに当たる。
毎度のように細胞膜に穴が空く。
そこまではいままでと同じだ。
スライムはかなり小さくなっている。
細胞膜の穴から細胞の核がコロッと落ちる。
スライムの動きがピタリと止まる。
僕は一瞬何が起きたのかわからなかった、が、次の瞬間細胞核を沼のほとりに映えている大木に向かって思いきり蹴った。
細胞核にはピシリのヒビか入る。
『レベルが15になりました』
と女神の声が聞こえる。
その時、はじめて自覚した。
「僕はスライムを倒したんだな」と。




