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シナリオなんていらない!〜ライバルキャラの狐っ娘〜  作者: 阿井りいあ
ヒロイン力発揮

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場違いな存在


 話を戻そう、とエクトルがパッと表情を引き締め直す。マリノの情報収集力がすごいのはわかったけど、今はその大事な話を聞かないとね。私も真剣に耳を傾けよう。


「それで、教えてくれるんだよな? その場違いな存在について」

「はぁ、いつもはここで情報の値段交渉をするのに。ラナキラのメンバーになっちゃったからお楽しみが減っちゃったわねぇ」


 マリノは残念そうに肩を竦めながら、ウェーブがかった髪をサッと耳にかけた。今日のピアスは大小さまざまな宝石があしらわれたもので、光に反射してキラキラと輝いている。


「……女よ。しかもまだ子どもの。ちょうどあなたたちと同じか少し下くらいの年頃の女が、あの犯罪組織の中で平然と話をしていたそうなの」

「お、女ぁ? しかも若い、か……確かに場違いな存在だな」


 よ、予想外だよ……! まさか女の子だなんて。

 でも、そんな女の子が怖そうな男の人たちの中で平然となんてしていられるのかな? 疑う気はないんだけど、どうしてもすんなりと受け入れられなくて恐る恐る聞いてみる。


「たまたまそこにいた、ってことはないのかな……?」

「もっともな質問ね。でも、目撃者はその場面を三回見ているのですって。それにね? 少女が話をした後は、組織の男たちがみんな酔っぱらいのような動きを見せたっていうのよ。限りなくクロに近いと思わない?」


 酔っ払いのような……? 操られていたってことかな。それならたしかに間違いない気はするけど。

 でも、どうして私と同じ年頃の女の子がそんな犯罪組織と一緒にいるんだろう。何か事情があるのかな? 怖くない、のかな……?


「女でも肝の据わったヤツなんてたくさんいるからな。むしろ、度胸だけなら女の方があるだろ。怖いもの知らずって面でいけばマリノだってそうじゃねぇか」

「あら。アタシはいつも怖いと思っているわよぉ?」

「ハッ、それがなくなりゃおしまいだろーが。怖いと思いながら危険を回避しつつ、任務を遂行するのがお前じゃねぇか」


 マリノはいつも、危険だとわかっていて情報を集めているんだ。怖いと思っていることをどうして出来るんだろう。心配だな。

 そんな私の考えが顔に出ていたのか、マリノがクスッと笑って私の鼻をツンとつつく。わ、わ!


「昔はね、そうすることでしか生きていけなかったからよ。その内うまいこと出来るようになったから、これが本職になっただけ。若い頃と違って引き際は心得ているもの。心配そうな顔をしないでちょうだいな」

「ま、マリノ……」

「うふっ、そんなに可愛い顔をしていたら、お姉さんが襲っちゃうわよぉ」

「ま、マリノ……!? ひゃんっ!!」


 スルッと手が頬を撫で、流れるように肩から腕を回されると耳から首、そして胸元に手を滑らせてくるからくすぐったくて尻尾がボフンッと跳ね上がる。と、鳥肌もたっちゃったよぉ!?


「マーリーノー?」

「うふふ、怖いわねぇ、エクトル。はいはい、もうからかわないわ」


 はー、ドキドキした。マリノがからかうと心臓に悪いよぉ! つい尻尾を抱えて震えていると、ポンポンとウェールズに背中を撫でて慰められた。ありがとう……。

 でも、今のはわざとだ。たぶん私に心配させないように気遣ってくれたんだよね。そのくらいはわかるよ。やっぱりマリノは優しい人。


「さて。こっからが問題だ。俺らにとって最も重要な話になる。ミクゥちゃん、覚悟はいいかい?」

「覚悟……? は、はい!」


 背中を撫でてくれていたウェールズの手が私の頭にポンと乗る。覗き込むように見てきたウェールズの表情はすごく真剣で、その問題の大きさが伝わってくる気がした。


 本当はちょっとだけ、怖い。受け止めきれるかな? 動揺しちゃうかな? それでも、やっぱり聞いておきたいからお腹に力を入れて返事をした。


「目撃者はその女の特徴もしっかり覚えてたんだよ。本人が危険に晒されるから詳しいことはここでも言えねぇが、そいつの仕事柄からいって信憑性は高い」


 ウェールズはそこで言葉を切って、マリノに視線を向けた。私とエクトルもマリノに注目すると、小さく息を吐いたマリノが淡々とその特徴を話し始める。


「肩下あたりまでのサラサラとした黒髪。可愛い系の顔立ち。無邪気で明るい声に、時折見せる妖艶な微笑み。……ねぇ。アタシたち、そんな特徴の少女に心当たりがあるわよねぇ? しかも出会った時期がピッタリ。いえ、被害者だったかしら?」


 まさか、そんな。だけど、マリノの口から挙げられたその特徴を思い浮かべようとすると、どうしてもあの顔が浮かんできてしまう。ちょっと天真爛漫で、優しくて、無邪気だけど時々すごく大人びて見える、新しい友達の顔が。


「ララ、か……!」


 キュッと眉間にシワを寄せて、エクトルが答えた。そう、私も思い浮かべた少女の名前だ。

 で、でも! ララだってあの事件の被害者の一人だよ!? むしろ私より先に捕まっていたし……。


 あ、れ? 自分を捕まえた犯人たちと、平然と話をしていたの? そんな、そんなことってあるのかな。やっぱり何かの間違えじゃ……。


「この辺りでは見かけない顔だった、っていうんで可能性はかなり高い。……だから今度、さりげなくララの姿を遠目からでも見てもらおうと思ってる」


 目撃者にララを見てもらって同一人物かどうかを確認するってこと、だよね?


 どうしよう。違うって思ってる。思いたい。だけど、だけどね? もしもそれで、その……本当にララがその人物だったら。


「確定したら……そん時はどう出るつもりだ? エクトル」


 私は、どうしたらいいんだろう。平気な顔をしていられるかな……?


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