ミクゥの決意
もしも、犯罪組織と話していたその人物がララだった場合。まずは本人に逃げられないよう対策をした上で話を聞いてみるとエクトルは言う。
そ、そうだよね。何か事情があったのかもしれないし。っていうか、そうに違いないもん。あんなに優しいララが、酷いことをするとは思えない……!
ううん、思いたくないだけだ。これじゃあ、公平に物を見られない。判断出来ない。私は、ダメダメだなぁ。
「大丈夫、ミクゥはそのままでいいからさ」
「……え?」
耳も尻尾も垂れ下がって、しょぼくれているところにエクトルが明るい声で話しかけてくれた。そのままで、いい?
「俺たちはさ、慣れてるんだ。いいヤツだと思ってたのに裏では酷いことをしているヤツらとか、たくさん見てきたから。だから疑うのは俺たちの役目。ミクゥは信じたいんだろ? なら、それでいいんだ」
「で、でも!」
そう語りかけてくるエクトルは微笑んでいるのにどこか悲しそうだ。見ればウェールズやマリノも同じような悲しい表情をしている。それなのに私を見る眼差しは優しくて戸惑ってしまう。
「逆に言えば、アタシたちはどうしても疑ってかかっちゃうのよ。だから、味方でいようとする目も必要だと思うの。ラナキラのメンバーでその目を持てるのはきっと、貴女だけ」
「だな。リニやマクロはもちろん、キャンディスやクレアなんかも疑って見そうだ。あー、キーファはあんまり考えてなさそうだけどよ」
不審な点があって、まだ知り合って間もないララのことを、私以外はたぶん疑ってしまうだろうって三人は言う。
そういうもの、なのかな。どちらかというと、きっと悪い人じゃないって信じようとする私が甘ったれで、偽善者のような気がするんだけど……。
でも、確かに私はどうしても疑うことが出来ない。信じたくないんだと思う。これはワガママ。仲良くなったララと仲違いしたくないっていう私のワガママなんだ。
「だからさ、ミクゥ。そういう、別の見方が出来るのってすごく助かるんだ。でも、もしもララが裏切者だった場合、信じていたミクゥが一番傷付くかもしれないんだけど……」
だけど、エクトルも他の二人も私には信じていてほしいって言ってくれる。それでいいのかな……? 私が傷付くことは構わない。そりゃあ、怖いけど。
目を一度閉じて、ララのことを思い浮かべる。無邪気に笑う姿や、びっくりするくらい大人びた姿。自分に正直で、たまにヒヤヒヤする発言があるけど。
それに、マクロの側ではしゃぐ姿……。ズキッと胸が痛んで、ペンダントを握る。うん、それでも。たとえ恋のライバルだったとしても、ララのことを信じたい。
「……ううん、大丈夫。私、ララを最後まで信じてみる。落ち込んだりしない。自分でそうするって決めたことだから」
ハッキリと自分の意思を言葉にした。真っ直ぐエクトルを見つめると、少し驚いたように目を見開いた彼はすぐに肩の力を抜いて笑う。
「ああ、ミクゥらしいな!」
「いいわね。こういう子は貴重よぉ。もしものことがあっても心が折れないようにアタシたちがフォローしなきゃ、ね」
「あー、その辺はお前らに任せるわ。俺ぁ、余計なことばっかり口走るからよ」
軽い調子で私の決意を受け入れてくれた三人。ありがたいな。私も心配させすぎないように心を強く持たなきゃね。
その後は、これからどう動いていくかを話し合った。マリノには引き続き情報を集めてもらい、ウェールズはその補助。
そしてエクトルは残ったメンバーに個別で話をしてくるという。みんなを集めて話し合いしようとすると、ララに勘付かれてしまうからだそう。
「ミクゥは、ララの側にいてくれ。ただ、絶対に二人きりにはならないで。クレアかアンジェラも一緒に。時々、リニも側にいるようにって言っておくから」
「うん、わかった」
それから個別で話せるように、クレアとアンジェラを自分の下に呼び出してほしいと頼まれた。
ララに気付かれないように、だよね。それなら別々の方がいいかな? エクトルが呼んでいたよ、って言うだけならララに聞かれても変に思われないだろうし。なんたって、ラナキラのリーダーなんだもん。呼ばれてもおかしくはないはず。
「じゃあ一度ラナキラに戻ろう。そんで、その場を離れられそうなら俺、キーファんとこ行ってくる」
キーファのところへ行くなら、キャンディスにも一緒に伝えられるってことか。
なんだか、本格的に作戦が始動したみたいでドキドキする。私は嘘が下手だから、態度に出ないように気を付けたいなぁ。
「ほーら。肩の力を抜くのよ。貴女はいつも通り、ララとお喋りしたらいいの」
「もしミスっても気にすんな。ちゃんと報告さえしてくれりゃ、どうにかするって。エクトルが」
「丸投げかよ。もちろん、どうにかするけどな! ミクゥのためだしな!!」
うう、フォローされてばっかりだな。でもすごく頼もしい。
落ち込んだりなんかしないよ! 私はこういった作戦は初めてで、緊張するのは当たり前なんだから。で、でも頼り切りにならないように気を付けよう。
……ララ。貴女は何を考えているの? 私たちの敵なんかじゃ、ないよね?






